Crazy a go go! [CASE:A] (17)
Crazy a go go! [CASE:A](前編)

 少年は何も言わなかった。
 ただ黙ってセフィロスの顔を見つめている。
 潤んだ瞳、少し火照ったような桃色の頬、全体的に白い肌のため、唇が血のように紅く見える。薄く開かれたその唇から、甘い声を聞きたい。
 セフィロスはそんな衝動に駆られてしまった。
 少年の身体を自分の方に抱き寄せると、顎をしっかりと固定した。

「…な、何を……」

 逃れようと抵抗する少年をさらに力を込めて拘束し、噛み付くように唇を塞いだ。

「…ん…、んー…っ!」

 セフィロスは舌を滑り込ませて、少年の舌を絡めとった。とっさに奥歯を噛みしめられなかったらしい。少年は必死にセフィロスの身体を叩いて、離れようとしているが、セフィロスの方が明らかに力は強い。
 そのうち、少年はセフィロスの腕を掴むようになり、崩れ落ちてしまいそうな体を支えることも難しいようだった。

「…ん……っ、んんーっ!」

 セフィロスは舌先を思い切り吸い上げてやった。
 少年の身体から一気に力が抜けて、膝から落ちていくのをセフィロスはしっかりと支えて、抱きしめた。

「…はぁ…っ…、はぁ…っ」

と、耳元で甘い吐息が聞こえて、セフィロスは征服欲とか優越感とか色々混ざった複雑な気持ちで満たされていた。悪い気分ではなかった。
 そして、今度は独占欲が心を支配する。

「…どうして…、こんなこと……を……」
「俺のものになれ…」
「…は?」
「俺のところに来い。全部用意する。不自由な暮らしはさせない」
「な、何をおっしゃているのかわかりません!」

 少年はじたばたもがいて、セフィロスの腕の中から逃れようとする。セフィロスはそれを許さないように、さらに強く抱きしめる。

「お前が欲しい…」
「そ、そんなこと言われても…!」
「何があっても俺が守る」
「…おやめください! 俺に関わらないでください!」

 激しく抵抗して、自分の拘束から逃げた少年の腕をセフィロスはつかまえた。睨みつけてくる少年の瞳に、セフィロスは怒りを感じるどころか、劣情を刺激される。

「残念だが、関わってしまった。知ってしまったのだからな」
「…今、この瞬間から、何も知らないことにしてください。この先、何もなかったことにして過ごしていただければ済む話です」
「嫌だ」
「…どうして、そんなに…」

 少年の不安そうな表情を取り除いてやりたい、とセフィロスは思った。
 自分の傍で笑顔を見たい、そのためなら、何でもしてやろう。
 セフィロスは自分の中に今までにない強い想いがこみあげてくるのを抑えられなかった。

「簡単に言えば、惚れたんだろうな」

 少年は目を見開いて、言葉を失ったように、セフィロスの顔を見つめている。しかし、すぐに頭を振って、ご冗談を、と呟いた。

「……俺は…、貴方と同じ性別です…」
「それが何か問題になるとでも?」
「も、問題でしょう! 貴方ほどの人がこんな得体の知れない、しかも、男に惚れただなんて!」
「…俺ほどの人…?」
「位の高い方だとお見受けいたしました」

 セフィロスはほぉ、と目を細めた。
 まだ、幼さが残る割には観察眼に優れていると見える。きっと、表面だけではわからない、冷静な判断力も備えているのだろう。

「そんな偉いお方が簡単に人に惚れたとか、そういうことを仰っていいのですか?」
「俺の言葉が信用できない、と?」
「…俺は…信用することもされることもかなわない人間です」
「ならば、俺がお前を信用する初めての人間ってことだな。なかなか光栄な話じゃないか」
「…あなたはどうして、そこまでして、俺のことを!」
「お前を守りたいんだ」
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