Crazy a go go! [CASE:A] (7)
Crazy a go go! [CASE:A](前編)

 エアリスの話をすべて聞き終えてから、クラウドは立ち上がった。

「クラウド?」
「お茶をお持ちしますね。長くお話されていたから、喉が渇いていらっしゃるでしょう?」
「あ、待って!」
「何でしょう?」
「話に間違いはない?」
「そうお聞きになるということは、セフィロス様が嘘とついていらっしゃるとお思いですか?」

 エアリスは深く息を吐き出すと、頭を軽く振った。

「察しがいいね。そう、大事なことを隠している気がするの」

 クラウドは軽く笑うと、

「話に間違いはありませんでしたよ、勘違いでしょう」

 そう言って、部屋を出て行った。



 キッチンでお湯が沸くのを待っている間、クラウドはエアリスが話した内容を思い出していた。
 話に間違いはなかった。
 自分がここに来るに至った理由、ここで過ごしてきた期間のこと、すべて正確にエアリスに伝わっていた。
 ただ一つ違うとするならば…。

「クラウド!」
「あつ…!」

 急に名前を呼ばれたクラウドは大きく肩を揺らしてしまい、ティーポットに注いでいたお湯を指先にかけてしまった。

「クラウド、悪かった! 早く冷やそう」

 手を掴まれたクラウドは首を大きく振って、大丈夫だと何度も言ったが、離してはくれなかった。

「セフィロス様!」
「手が腫れては困るだろう?」
「い、いえ、そんなにたくさんかかったわけではないですし…」
「いいから。少し黙ってろ」

 セフィロスは水汲み場までクラウドを連れて行くと、桶いっぱいに水を汲み、その中に掴んでいたクラウドの手を突っ込んだ。
 クラウドはただ桶の中の自分の手を見つめて、押し黙っていた。呼吸がうまくできないでいるのが理由だ。
 お湯がかかってしまった指先よりも、セフィロスに掴まれている手首の方が熱を帯びている気がする。その熱さがセフィロスに伝わってしまっているように思えて、感づかれるのではないかとどきどきしているせいで、呼吸がままならないのだった。

「…クラウド…」

 耳元で聞こえる声にクラウドはびくんと肩を揺らした。
 セフィロス自身がその声の威力を意識しているのかしていないのかわからないが、セフィロスはよく耳元で名前を呼ぶのだ。
 クラウドの胸に熱いものがこみ上げてくることなど知らずに。

「…セ、セフィロス様、もう、大丈夫です。エアリスさんもお待ちですから…」

 そう言ってクラウドはセフィロスに手を離してもらおうとしたが、セフィロスの方はまるで聞こえなかったように手を掴んだままだ。

「…あの、セフィロス様……」
「エアリスは今頃ザックスと話をしているだろう。クラウドが気にすることはない」
「…そう…ですか。ザックスさんがお茶を出してくださってるといいんですけど…」
「出してるだろう。ザックスはエアリスに気があるんだ。それぐらいのことして当然だ」

 何とかこの場から逃げようと口にした口実が打ち消されて、クラウドはまた黙るしかなかった。
 二人の間を流れる沈黙が続き、セフィロスも動こうとはしなかったので、まるで時間が止まっているような錯覚に陥った。
 時間が止まってしまえば、二人きりでずっといられるのに。
 そう思ったけれど、クラウドは口にはしなかった。
 そんな薄い希望をもったところで変わるはずもなかったからだ。

「クラウド、言っても仕方のないことだとわかっているが、俺に時間を止める力があればよかったと思う。そうすれば、俺はクラウドを失うことはない」
「セフィロス様!」

 まさか同じようなことを考えているとはクラウドは思いもしなかった。クラウドはセフィロスの傍にずっといたいと思っているからこそ、時間が止まればと思っていた。同じようにセフィロスも自分の傍にいたいと思ってくれているのだとは考えていなかったのだ。
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