Crazy a go go! [CASE:A] (14)
Crazy a go go! [CASE:A](前編)

 セフィロスの顔にめったに見せることのない、苦しい表情が浮かんでいる。クラウドは胸が痛んだが、セフィロスの苦しみを和らげるべく、微笑んだ。

「ご冗談を。できることならずっと一緒にいたいぐらいです。それに、もし、嫌になっていたとしたら、とっくにここにはおりません」
「だったら」

 クラウドはセフィロスの唇に指先で触れた。

「ここにいるために、お仕事させて下さいませ。お仕事しないのにここにいるわけにはいかないのです」
「…俺は別にお前に仕事をさせるつもりなどはなかったと前から言ってるだろう? 俺はお前が傍にいればいい」
「いいえ。それでは私が納得できません。それに、今日はエアリスさんにお買い物にお誘いいただいてるのです」
「買い物? お前、外に出て行くつもりなのか?」

 セフィロスが手に力を入れたせいか、肩がきしみ、痛みが走る。

「エアリスさんが誘ってくださってるのだから、大丈夫だと思うのです。全てをわかってのお話なのだと思います」
「…そうか。そうだな。では、行ってくるといい。ただし、絶対に帰ってこい」

 セフィロスの真剣なまなざしに、クラウドは笑顔で答えた。

「わかっております。きっと、戻ってまいります」
「約束しろ」
「…では、これで…」

 クラウドはセフィロスの頬を両手で包むように触れると、セフィロスに口づけた。



 ◇◆◇

「では、お兄様、クラウドを借りていくわね」

 エアリスはクラウドと腕を組んでいて、めいっぱいの笑顔を見せている。

「ああ、わかった。楽しんでくるといい」
「セフィロス様…、あの…」

 セフィロスは微笑んで、浮かない顔をしているクラウドの頬に手を伸ばした。

「セフィロス様…」
「エアリスも一緒だし、何も気にしなくていい。俺と一緒にいるよりは安全だろう」

 クラウドは何かにはじかれたように、いきなり抱きついてきた。人がいないときでも抱きついてくるようなことをしなかったのに、クラウドにどんな思いが込み上げているというのか。

「…どうした? 言いたいことでもあるのか?」
「…セフィロス様…」

 今にも泣きだしそうな震える声で呟くクラウドの声に、セフィロスは胸が捻り潰されるような痛みを感じて、クラウドを強く抱きしめた。
 クラウドが抱いているであろう不安とか悲しみを全部拭いさってやることが出来ないでいるのが、歯痒かった。

「…大丈夫だ。俺のことは忘れて、エアリスと楽しんで来い。街は楽しいぞ」

 あやすように背中を叩いてやると、クラウドは腕の中でこくんと頷いた。

「セフィロス様…、では、行ってきます」
「ああ、ゆっくりしてくるといい」

 クラウドは笑みを見せて、手を振った。手を振りかえしてやると、今までにみたことのないような笑顔を作ってから、軽く頭を下げた。
 セフィロスはクラウドの動作に違和感を覚えたが、引き止めることはせず、クラウドの後姿を見送った。
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