Crazy a go go! [CASE:C] (17)
Crazy a go go! [CASE:C]

 私はセフィロス様の腕を解いて、ザックスさんの様子を伺ってみた。
 ザックスさんは口元に笑みを浮かべたまま何も言わないでいる。セフィロス様も一緒で何も言おうとはしない。
 セフィロス様のその一言がセフィロス様のみならず、ザックスさん、お屋敷で働いているメンバー、領地の農民の方々など、セフィロス様が絡む全てのものに多大なる影響が出るにも関わらず、どうして笑っていられるのだろう。
 何を言っていいのかわからず、二人の顔を交互に眺めていると、ザックスさんがだんな様、と呼びかけた。

「何だ?」
「…アノ人、何か言ってました?」
「了解した、と言ってたが。ただし、物覚えが悪いんだそうだ」
「それなら、もう、忘れてるでしょうねぇ。明日のおもてなしはどうします?」
「何も用意しなくていいだろう。目的は決まってるんだ」
「いっそ、隠しちゃえばどうです?」
「そうしたいけどな。そのほうがうるさいだろ?」
「なかなか厄介な人ですねぇ。」

 セフィロス様は小さく笑うと、やっぱり、ザックスはケーキ担当だな、と指示を出した。ザックスさんの方も、いいですねぇ、そうしましょう、と何故だか乗り気だ。
 ケーキといえば私担当のはずなのに。
 さっきから二人だけでわかるような会話だし、何だかのけ者にされてるような気がして、私はセフィロス様の腕を掴んだ。

「…ん?」
「あ、あの、セフィロス様…」
「では、ケーキの準備でもしてきます。後片付けもついでに済ませておきますので」

 ザックスさんは席から立ち上がるなり、こう言って、テーブルのグラスやお皿をワゴンに片付け始めた。
 お仕事まで取られてしまったら、私には何も残らない。

「ザ、ザックスさんっ!」
「いいから、いいから。ゆっくりしてるといいよ。色々あって疲れてるだろ?」
「で、でも……」
「いい。じっとしてろ」

 セフィロス様が両腕で私の身体を拘束してしまったので、そのまま黙ってセフィロス様の顔を眺めた。

「今回はクラウドが作ったんでは話にならないのでな。我慢してくれ」
「そうやって、楽しそうに二人で何か企んでるなんて」
「企んでなどいない。今思いついたことを言ったら、ザックスが反応しただけだ」
「それだけ、通じ合ってらっしゃるってことですね!」

 セフィロス様の腕を解いて逃げようとしたのに、強く抱きしめられて、頬にキスされる。

「セ、セフィロス様…っ!」
「ザックスに妬いてるのか? 口調が怒ってる」
「や、妬いてなどいません!」

 妬いているわけではない、と思う。うらやましいとは思ったけれど。
 セフィロス様の考えに反応して、的確な行動が取れるか、と言ったら、きっと無理だと思う。セフィロス様の下に何年も仕えてきたザックスさんだから出来ることなのだ。

「何だ。少しぐらい妬いてくれてもいいと思うが……」
「ザックスさんとは格が違うので、妬いても仕方ないじゃないですか。ザックスさんはセフィロス様にとって、なくてはならない存在で……」

 そんな存在を失いかねない状態にまで追い込んでしまった、私は本当にここにいていいんだろうか。本当にザックスさんを失ってしまったとき、セフィロス様はどうするのだろう…。

「悪かったな」

 セフィロス様の言葉の意味がわからなくて、え?と聞き返すと、傷つけた、とセフィロス様は私の手首にそっと触れてきた。

「セ、セフィロス様が悪いわけではないです!」
「傷つけたくなかったんだがな。守ると意気込んでいる割にこのざまだ」
「こ、これは私の不注意が招いたことです。私のせいなんです。その上、私がこうやって傷を負ってしまったせいで、セフィロス様は何もかもを捨てることになるかもしれない!」
「だが、クラウドは残るだろ?」

 セフィロス様は私を抱きしめていた腕を緩めると、私の頬に触れて、笑みを浮かべた。

「クラウドが残ればいい。それの代償だというなら、渡すべきだな」
「ま、待ってください! 私なんかにはそのような価値などありません!」
「それはクラウドの価値観であって、俺の価値観ではない。クラウドがどう考えていて、どう思っていようが、俺に何を言おうが、俺は俺の価値観で判断する。その判断の上で、俺はクラウドを残すと決めた。それだけのことだ」
「それだけのこと…って……」

 私一人と引き換えにするには、大きすぎる代償だ。ザックスさんをはじめ、メンバーの皆様、お屋敷、領地、そして、領地にすむ全ての農民。それらを手離しても私を残すなんて、考えられない。

「とは言っても、俺は欲張りだからな。今の状態が維持できるようにちゃんと手は打つ。だから心配することはない」
「…どうして、私なんかのために……」
「どうして? 好きだからに決まってる。あの日、クラウドに会ったときからずっとだ。間で色々ありはしたが、一生守ると決めた。だから、俺の側にいろ」
「私は…、ここにいてもいいんでしょうか?」

 セフィロス様の側にいれば、いずれ、セフィロス様が傷つくことになるだろう。セフィロス様が傷つかなくても、私が傷つけば、何か策を講じようとなさるだろうし、そうすれば、セフィロス様が傷つくことになるかもしれない。
 そんなことを続けることになってもいいのだろうか。

「クラウド、俺は手離さないと決めてる」

 セフィロス様の瞳が私の瞳と心を射抜く。そらせない視界が歪んでいき、呼吸がままならなくなる。

「…この腕に……、その思いに縋ってしまっていいのでしょうか……?」

 セフィロス様の腕にしがみついて、落ち着きを取り戻そうと深く息をしてみようとするが、上手くできずに、結局呼吸が速くなってしまう。

「いくらでも。俺はクラウドを守るためにここにいる」
「…セフィロス様…、あ、あり……」

 唇にセフィロス様の指先が触れて、言葉を封じられる。

「礼を言われることじゃない。礼を言うぐらいなら、キスの一つでもしてくれ」
「…え…っ!」
「冗談だ。まだ、時間もあることだし、飲みなおすとしよう……」

 セフィロス様は私の身体を膝の上から下ろそうと、身体を抱えなおそうとしたので、慌ててその腕を止めた。

「…どうした?」
「やっぱり、お礼はしないと……」

 私はセフィロス様の首に腕を絡めて、自分から口付けた。どちらからともなく舌を絡め、お互いの口中を嬲りあう。
 唇が離れるたびに、私はありったけの思いをこめて繰り返し呟く。


 「大好き」と「ありがとう」を。


END
長い間お付き合いありがとうございました!
間でちょっとした設定の話を混ぜたりとか、ごちゃごちゃやってたらこの長さになってしまいました。
長く書きすぎたせいで着地点が曖昧になってしまい、上手く収束できているのかどうか…。
何はともあれ、一旦終わりです。
隠してることがまだありますので、それはいずれ明らかにできればなぁ、と思っています。
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