Crazy a go go! [CASE:C] (3)
Crazy a go go! [CASE:C]

  ◇午前9時◇

 みんな揃っての朝食の時間。
 セフィロス様、ザックスさん、このお屋敷で働いている方々(セフィロス様はメンバーと呼んでいる)、そして私を含めて総勢15人。
 メンバーは、庭師、鍛冶師、コックを始め、仕事はまちまちだが、素晴らしい腕前の持ち主ばかりで、お屋敷の仕事以外にも、別の方からお仕事を依頼されていたりして、毎日忙しそうにしている。
 だから、朝食だけは皆で一緒に食べようというのがセフィロス様の考えで、毎日この時間には、皆が顔を合わせることになっている。
 食事が始まると、まず、ザックスさんがセフィロス様の今日一日のスケジュールを読み上げる。諳んじているから、全て頭に入っているのだろう。

「ああ、ワインが出来たか。今日のお昼は楽しみだな」
「初物を持ってきてくれるそうです。でも、飲みすぎないで下さい。公爵様に呼ばれておりますので」

 ザックスさんによると、午前11時に近くのぶどう農家の方がワインを持ってきてくださるそうで、お食事会を開かれるとのこと。公爵様に呼ばれた理由はわからないそうで、ただ、午後3時には公爵様のお屋敷に着いていないといけないらしい。

「坊ちゃまが一体何の用なのだ? 俺は話すことなど何もない」
「多分、坊ちゃまの暇つぶしでしょう。でも、だんな様が行かないと後々うるさいですし。出来たてのワインを数本持参すれば問題ないかと」
「…上手いこと縁を切る方法があれば、即、実践するんだがな」
「残念ながら、今のところそういう方法がないようですので、あきらめてください。じゃあ、次は皆の今日の作業を教えてもらおうか」

 ザックスさんの言葉に、メンバーはそれぞれに頷いて、仕事の予定を一人一人伝えていった。
 どうやら引っ張りだこらしく、帰りは遅くなるという方もいれば、今日から当分帰れません、という方もいた。

「みんな、朝食後すぐに出て行くわけだな。仕事の方、よろしく頼む。何かあればすぐにだんな様へ報告してくれ。それから、クラウドは午後からお屋敷に一人になるけれど、大丈夫か?」
「え? あ、はい。今までにこういうことはありましたし、大丈夫ですわ」
「くれぐれも気をつけるように。エリザベスが近くにいる状態にしておくといいかもしれないな」
「そうですね。エリザベスと一緒にいるようにしますわ」

 エリザベス、と呼ぶと、私の側まで寄ってきて、ぺたり、と床に伏せた。
 エリザベスはセフィロス様が昔から飼っている黒豹。元々は名前がなかったのだけれど、可愛い顔をしていたので、私がエリザベスと名づけてから、エリザベスと呼ばれるようになった。但し、雄だから、名前はそぐわない。
 セフィロス様には絶対吠えたり、飛び掛ったりしないエリザベスだけど、ザックスさんには飛び掛っていくから、ザックスさんを友達か何かだと勘違いしているに違いない。じゃれつかれているザックスさんは、毎日生傷が耐えないでいる。

「では、みんな、今日も一日よろしく頼む」

 セフィロス様の言葉が朝食の終わりを告げ、メンバーはみんなセフィロス様に一礼してから、食堂を後にした。



  ◇午前10時~午後1時◇

 ぶどう農家の人達がお屋敷に来る前に、お洗濯とお掃除をすませて、昼食の準備に取り掛かる。
 農家の人達がワインの瓶をたくさん抱えて、お屋敷に来たのが午前11時。
 先にオードブルを数品お出ししてから、メインのお料理を並べる。メンバーのうち、コックである一人はこの昼食会のために、お屋敷に残ってくれていた。私一人では到底間に合わなかっただろう。
 午後1時には、農家の方々もお家に引き上げて、セフィロス様も自室に戻られた。
 ザックスさんは公爵様の元を訪れる前の準備があるとかで、忙しそうに屋敷の中をうろうろしておられた。

「悪いけど、だんな様の相手をしていてくれ」

 すれ違いざまにザックスさんに言われて、私はセフィロス様の部屋を訪れた。
 ドアをノックすると、入っていいぞ、という返答があって、私はそっと扉を開いた。
 セフィロス様はソファーに腰かけて、ワインのグラスを傾けている。さっき、農家の人と浴びるように飲んでいたのに、まだ飲んでいられるなんて、どういう身体のつくりをしているんだろう。

「どうした? 何か用か?」
「いえ…、あの……」

 ザックスさんに相手をしていてくれと言われて来た、とは言いにくいし、考えてみれば別に用があるわけでもない。
 用がないのにセフィロス様のお部屋にくるのはまずかったかな。セフィロス様の側にいたい、っていうのは用に入らないだろうし。
 俯いたまま黙っていると、クラウド、と優しい声がした。はい、と条件反射で顔を上げると、セフィロス様は軽く笑って、手招きをした。

「こっちへ来い、クラウド」
「はい…」

 頷いて、セフィロス様の側まで近寄ると、腕を掴まれて、無理やりソファーに座らされた。

「あ、あの…?」

 セフィロス様は私の顎を掴んだまま、じっと見つめてくる。視線を合わせているのが恥ずかしくなって、目を伏せた瞬間、唇が塞がれた。
 するりと差し込まれた舌が、私の舌を絡めとり、それだけで私の意識が蕩け始める。セフィロス様の腕を掴んで、崩れてしまいそうな身体を支えた。そんな私の様子にセフィロス様はくすっと笑ったものの、唇を解放してはくれない。
 息苦しくなってきて、呼吸を確保しようとすれば、さらに口の奥深くまで責められる。
 飲み込みきれなくなった唾液が口の端から零れ始めても、セフィロス様のキスは続いた。
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