Crazy a go go! [CASE:C] (4)
Crazy a go go! [CASE:C]

  ◇午後2時半◇

「じゃあ、公爵様のところに行ってくるので、後はよろしく頼む」
「わかりました。でも、ザックスさん……」

 私はセフィロス様の方をチラッと見た。
 私の視線を追うように、ザックスさんもセフィロス様の方を向いてから、はぁ、と息を吐き出した。

「だんな様、いつまで、ふてくされてるんですか! 子供じゃないんですから」
「考えてもみろ。絶対、楽しいことなんかないぞ。あの坊ちゃまの退屈な話を聞くぐらいなら、クラウドと楽しいことをしたいじゃないか。そうは思わないか?」

 真剣な顔で、私に同意を求めないでいただきたい。どう返答していいのかわからず、私はセフィロス様とザックスさんの顔を交互に見るしかできなかった。

「いいですよ、別に」
「ザックス!」

 ザックスさんの言葉が意外だったのか、セフィロス様は少し声を高くする。

「お止めいたしませんのでどうぞ。但し、これが最後になるという覚悟は出来ておられるんですよね?」

 セフィロス様は天井を仰いだまま、うーん、と何かを考えているようだった。少しして、まずいか、と呟いて、ザックスさんが抱えていた上着をひったくった。

「わかった。行くとしよう」
「賢明な決断です。夕方には帰ってくる予定だから、それまで申し訳ないが…」
「わかりました。いってらっしゃいませ」



 セフィロス様とザックスさんを見送ってから、洗濯物を取り込んで、セフィロス様のお部屋とメンバーの皆様のお部屋に洗濯物を配って回る。
 その後は、夕食の準備に取り掛かった。コックさんもお昼から外のお仕事に出かけてしまったので、私がすることになったのだ。
 今日、メンバーさんで一緒に夕食をとることができる人はいないので、セフィロス様、ザックスさん、私の3人だけの食事となる。
 セフィロス様はお酒ばかり飲んで、きっちりとした食事を召し上がらないので、2人分もあれば十分だ。だから、仕込みの時間もそれほどかからなかった。



  ◇午後3時半◇

 全ての作業が一通り済んだので、庭に出て、エリザベスと一緒にティータイムを楽しんだ。
 たっぷりのミルクティーとお昼のパーティーで残ったスコーンを食べながら和んでいると、来客を知らせるベルの音が鳴り響いた。
 セフィロス様は公爵様のところにお出かけされているので、お客様はお見えにならないはず。ザックスさんがスケジュール調整をミスすることはありえない。とすると、急な来客であるか、セフィロス様ではなくザックスさんとかメンバーさんに用がある人ということになる。

「エリザベス、一緒に来て」

 エリザベスはすくっと身体を起こして、表情を変えた。

「ありがとう」

 軽く頭を撫でてやってから、一緒に廊下を歩く。ドアに近づくたびにじわじわと嫌な予感がにじんでくるようだった。
 ドアの前で深呼吸してから、どちらさまですか、と声をかけてみた。

『セフィロス様から言付かってまいりました』
「セフィロス様から? どのような言付けを?」
『こちらで働いていらっしゃるクラウド様を連れてきて欲しいとのことです』

 セフィロス様は今、公爵様のお屋敷にいらっしゃるはずだ。そこから、私を連れてくるように言付けたということになる、私を公爵様の前に出したくないということは前にチラッと伺っているので、そんな言付けをするとは思えない。

「準備もございますので、場所さえ教えていただければ、後で向かいます」
『いえ。私どもが連れてくるよう、言われておりますので』
「それが本当なのか嘘なのか、どうやって判断すればよろしいのです?」
『セフィロス様から書面を預かっております。ご覧いただければおわかりいただけるかと』

 これも嘘かも知れない。だけど、本当だとしたら、出て行かないわけにはいかない。
 悩んだ末に、私はドアを少しだけ開けた。
 その瞬間だった。私は自分の判断の甘さを呪った。
 開いたドアの隙間に、手がかけられて、大きく開け放たれる。
 ドアの向こうには二人の男が立っていて、片方の男に右の手首を掴まれた。すぐ、もう片方の男が逆の腕の手首を掴み、両脇から挟まれる形になり、身動きが取れなくなる。

「やっぱり、嘘だったんですね!」
「悪いがおとなしく来てもらおうか」

 さらに手首を力いっぱい握られて、激痛が走る。

「一体、何が目的なんですか!」
「来ればわかるさ」
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