Crazy a go go! [CASE:C] (6)
Crazy a go go! [CASE:C]


  ◇午後7時◇

 ガタンという音で、私は反射的に顔を上げた。セフィロス様が椅子から立ち上がって、どこかへ向かおうとしていた。

「セフィロス様!」
「ああ、何度か呼んだんだが、反応がなかったからな」
「申し訳ありません!」
「気にしなくていい。ワインを取りに行くだけだ」
「それなら私が参ります。どうぞ、お座りになっていて下さい」

 私は慌てて立ち上がると、ワイン貯蔵庫へと向かった。
 貯蔵庫の中に入って、軽く息を吐き出す。
 昼間のことを考えすぎていたみたいだ。あの人たちの目的が一体何だったのかはわからない。私が目的だとすれば、またやってくる可能性は高いだろうし、本当の目的が私以外であるならば、話は変わってくる。
 話しておくべき内容かもしれないけれど、どうしても話す気にはならなかった。隠せるなら隠し通しておきたい。そう思う反面、隠し通すことなどできない気もしている。
 もう一度息を吐き出して、棚からワインを一本つかむ。その瞬間、右手に走る痛みにボトルを落としそうになったが、何とか割らずに済んだので、抱えるようにして、セフィロス様の元へと戻った。

「お待たせいたしました」
「…クラウド…」
「何か?」
「何かあったのか?」

 セフィロス様は鋭い目で私を見据えている。そんな視線から逃げるように目を伏せた。この時点で、何かあったのだと物語っているようなものだけど、それでも、セフィロス様のお顔をみていることはできなかった。

「…気のせいですわ…」

 ワインの栓をあけ、別のワイングラスにワインを注ぎ、セフィロス様の前に差し出す。
 セフィロス様は無言でその様子を見守っていた。
 私はその場から早く立ち去りたくて、食べ終えられた皿をトレーに下げ始めた。

「クラウド!」

 急に手首を捕まれて、痛みが腕を駆け抜ける。我慢しそこねて、トレーごとひっくり返してしまった。
 ガシャーンと大きな音を立てて、皿が砕け散る。

「申し訳ありません! すぐに片づけますので」
「ああ、いい。俺がやるよ。怪我をしたら大変だし」

 ザックスさんが立ち上がって、私の側まで来てくれ、皿の破片を拾ってくれる。

「い、いえ。私の不注意ですから、私がやります。セフィロス様、お怪我など、なさっておられませんか?」
「……俺は大丈夫だ」

 セフィロス様はことさら「俺は」を強調して言った。

「…それはよかったです…」

 感づいている。
 セフィロス様もザックスさんも。
 隠し通そうとするのが間違いだったということ?



  ◇午後9時◇

 夕食の後片付けも終わり、庭にある噴水の側で、ぼんやりと月を眺めていた。
 横にはエリザベスが眠そうに座っていて、時折、うーん、と大きく伸びをしている。
 セフィロス様は夕食の後、すぐに自室に戻られ、ザックスさんは夕食の後片付けを手伝ってくれながら、今日の公爵様との話を細かにしてくれた。
 公爵様の話はやっぱり他愛もないことで、どうしてセフィロス様とザックスさんが呼ばれたのかはわからないらしい。
 セフィロス様とザックスさんが屋敷にいない状況でも作りたかったのだろうか。
 …そうとするならば、もしかして…。
 急にエリザベスが低いうなり声を上げる。
 振り返ってみると、セフィロス様が立っていた。

「…セフィロス様…?」
「エリザベスが俺に怒っているみたいだが?」
「…私にはわかりかねます…」

 エリザベスはセフィロス様に対してうなり声を上げたこともないし、吠えてかかったこともない。

「いい加減、隠すのはやめたらどうだ? 俺のいない間に何かあったから、エリザベスが俺に怒っているのだろう? クラウドを危険な目に遭わせた、とな」
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