Crazy a go go! [CASE:A] (27)
Crazy a go go! [CASE:A](後編)

 頭を撫でてくれている手が止まったので、クラウドはセフィロスの表情を伺おうとした。しかし、セフィロスが両腕で強く抱きしめてきたので、クラウドは顔を上げることもままならず、胸に顔を埋めることになった。

「…クラウドがいいんだ。クラウドだからこうやって式を挙げようと思った。準備も進めた。俺のものだと一刻も早く宣告しておきたい。この時間さえも惜しい」
「セフィロス様…」
「だから、もう、そんな不安にならなくてもいい」

 耳元でセフィロスの声が聞こえて、クラウドは肩を竦めて息を漏らしてしまう。
 声を殺した笑い声にクラウドは恥ずかしくなって、セフィロスの胸を押し、距離を開けた。見上げたセフィロスはとてもうれしそうで、その顔を見たクラウドは一瞬で目に涙が浮かんでしまった。
 今までにどうしようもないほどの迷惑をかけてきたというのに、セフィロスは一切そんなこと気にした様子はなく、それどころか、クラウドを娶って、傍に置いておくと言ってくれている。クラウドにとってこれほど嬉しいことはなかった。
 目に映るセフィロスの姿がぼんやりと滲んでいく。

「…クラウド…」

 セフィロスの手が伸びてきて、頬に添えられる。

「…はい…」
「もう、お前を泣かせたくない。泣くのはこれで終わりにしてくれ…」
「…嬉し泣きも…ダメですか…?」
「俺はクラウドの笑顔が見たいんだ」

 クラウドは一度目を閉じて、目に溜まる涙を全部零してから、めいっぱいの笑顔を作った。

「…セフィロス様、ありがとうございます。すごくうれしいです」
「その顔が見たかった…」

 セフィロスの指先が頬を滑り、涙を拭きとってくれる。こうやって傍にいて、セフィロスに触れていたい。触れていてほしい。

「…セフィロス様、お傍にいさせてください」
「当然だ。誰が何と言ってもお前は俺の傍に置いておく」
「…よかった…」

 もう一度笑顔を見せたクラウドはセフィロスに腰を抱き寄せられ、お互いの鼻先が当たるぐらいに二人の距離は縮まった。

「…あ、あの…?」
「綺麗だ、今までで一番」
「え? あの…っ!」

 セフィロスに唇を塞がれ、クラウドは徐々に深くなる蕩けるような口づけを気の遠くなるまで受け止めた。



 式は屋敷の庭で執り行われた。
 庭の端には小屋があって、その小屋が簡易の教会となっていた。
 列席しているのはセフィロスに本当に近しい人たちと、屋敷で働いてくれている人々ぐらいだ。
 だから、厳かな雰囲気は一切なく、列席者もかしこまった装いではない。
 神父が聖書を読みあげている間、クラウドは涙を零さないようにと目を見開いて堪えていたが、セフィロスの誓いの言葉を聞いた瞬間、クラウドは涙をボロボロと零した。

「クラウド、泣きすぎだ」

 セフィロスに左手を取られ、薬指に銀色に輝く指輪が嵌められる。

「…ご、ごめんなさい…」

 逆にクラウドがセフィロスの指に指輪を嵌める番になったけれど、指先が震えてうまく嵌めることはできず、ずいぶんと時間がかかってしまった。

「では、誓いのキスを…」

 神父の言葉を受けて、セフィロスがクラウドのベールを捲り上げる。セフィロスをベール越しに見ていたからこの状況でも緊張せずに済んでいたのに、いきなりはっきりとセフィロスを見つめることになって、クラウドは呼吸がままならなくなった。
 セフィロスの碧色に光る瞳を見つめていると吸い込まれそうになり、クラウドは吸い込まれていくのを防ぐように、ゆっくりと瞳を閉じた。
 優しいキスを送られて、クラウドは溢れてくる涙を止められなかった。泣き顔は見たくないと言われていたけれど、どうにもできない。
 ただ、これで泣くのは最後、と心の中で誓った。

「これでクラウドは未来永劫、俺のものだ」

 セフィロスのはっきりとした言葉に、クラウドはどう返していいかわからず、小さく頷いた。
 嬉しすぎるこの気持ちを言葉で伝えるなど到底無理な話だった。

「さあ、クラウド、行くぞ」

 セフィロスの腕がくの字に曲げられる。その腕に絡まるように掴まって、クラウドは祝福とライスシャワーを浴びながら、パーティーの用意がされている庭の真ん中へと移動した。
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