Crazy a go go! [CASE:A] (21)
Crazy a go go! [CASE:A](後編)

「…クラウド…なのか…?」

 セフィロスはやっとの思いで声を絞り出した。
 少年はエリザベスの頭を撫でている手を止めて、ゆっくりと立ち上がった。セフィロスの方に体を向けて、はい、と頷いた。
 白いシャツとブルーのズボンはメイドの格好をしていた時とは違って、少年っぽい雰囲気だった。少年というよりは、むしろ青年と言ってもよかった。

「…もう、お忘れになっているかと思っておりました…」
「…本当に…?」
「…ええ。傷の方はいかがですか?」
「…あ、ああ、後も残っていない」
「それはよかった。それだけが気がかりだったんです」

 クラウドは少し笑みを見せると、急に深く頭を下げた。

「クラウド?」
「セフィロス様にお礼を言うこともせずに去ってしまって、すみませんでした。お礼とお詫びが言いたくて、また、お屋敷を訪ねさせていただきました。急なご訪問で失礼いたしました。では、これで」
「おい、ちょっと待て」

 セフィロスはとっさにクラウドの腕を掴んだ。

「…セフィロス様…」
「もう、離さない。離したくないんだ」

 セフィロスはクラウドの腕を引き寄せ、抱きしめた。

「俺は何があっても離さないと、絶対お前を守ると、そう言っていたのに、結局、俺は何もできなかった。それはいくら謝っても詫びても足りないと思ってる。許してくれなどとは言わない。だけど、俺はクラウドと一緒にいたい」

 セフィロス様、と呟いたクラウドは、顔を埋めるようにして、セフィロスにしっかりと抱きついてきた。

「詫びなんてとんでもありません。私は幸せだったのです。最後の最後まで。セフィロス様をこうやってお助けすることもできたんですから」
「クラウド…」
「…今日、本当は来ないつもりでした。二年も経ってしまっているし、もう、私のことは忘れておられるかもしれない。もしかしたら、新しい生活を始めているかもしれない。色んな不安がよぎりましたけど、どうしてもお会いしたかった…」

 クラウドがさらにしがみついてくるのを感じて、セフィロスの鼓動が早くなる。

「クラウド、俺は覚えてるぞ」
「…何を、でしょうか?」
「お前が最後に言った言葉。あの時、そっくりそのまま返すつもりだった。だから、今言うことにする」

 引っ付いているクラウドの身体を引き離して、セフィロスはクラウドの目を見つめた。

「好きだ、クラウド…。今までも、これからもずっと…」
「…セフィロス様…、本当に……?」
「嘘で言えるはずがないだろう? 本当にそう思ってる」

 クラウドは言葉が出ないようで、涙をこぼしながら、息を吸ったり吐いたりしている。セフィロスはクラウドの頬に伝う涙を指先で拭ってやってから、クラウドの顎を指先で掴んだ。

「クラウド、これからはずっと一緒だ」
「…はい…、セフィロス様…」

 クラウドはそう言ってから、瞳を閉じた。セフィロスは嬉しさでにやけた顔になるのを抑えながら、クラウドの艶やかな唇に自分の唇を重ねた。





「あ、あの、セフィロス様、どこへ?」
「俺の部屋」

 セフィロスはクラウドの腕を掴んで、屋敷の中を歩いていた。食堂に入ったところで、ザックスとエアリスがわぁ、と声を上げた。

「クラウド! おかえりなさーい」

 エアリスはクラウドにがばっと抱きついて、なかなか離れようとしない。

「は、はい。また、お世話になります…」
「挨拶は後だ。先にこっち」

 セフィロスは強引にクラウドの腕を引っ張って、歩みを進めた。
 ザックスとエアリスが、「子供ですか!」とか「慌てなくてもいいのに」とか声を飛ばしてくるのを無視して、部屋へと歩いた。
 部屋の扉を勢いよく開けたセフィロスはクラウドを中に入らせると、音を立てて扉を閉め、鍵をかけた。

「あ、あの、セフィロス様…」
「やっとだ」
「はい?」
「また、この手にお前を抱ける日が来た」
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