Crazy a go go! [CASE:A] (25)
Crazy a go go! [CASE:A](後編)

 セフィロスは目を開けて、右腕の方に視線を落とした。腕枕で眠っているクラウドの姿を見て、息を吐き出し、そっと手を伸ばして、クラウドの前髪を払ってやる。
 こうやって触れることができるというのに、クラウドが傍にいるという実感がセフィロスには沸いてこなかった。
 今、まさにこの瞬間も夢ではないだろうか。
 そう思えて仕方がない。
 今までの二年間が長すぎたせいかもしれない。

「…クラウド…」

 クラウドの頭を撫でるようにセフィロスが指を滑らせた途端、返事が聞こえた。

「起こしてしまったか?」
「どうかなさいましたか?」
「…いや、何でもない。もっと寝ていて構わない」
「そんな悲しそうなお顔をされると、気になります」

 クラウドの手がセフィロスの頬に触れる。セフィロスはその手を掴んで笑ってみせた。

「大丈夫だ。クラウドが傍にいるんだ。もう、悲しいことはない」
「…二年間、そのようなお顔をさせていたのでしょうか?」
「俺の顔は俺ではわからない。それに、この二年、辛かったのはクラウドの方だろう?」
「…私は…」

 クラウドはセフィロスの手をほどくと、仰向けになった。白い天井を見ながら、何かを考えているようだった。白い天井に記憶を描こうとしているのか、それとも記憶を白く塗ってしまおうとしているのか。

「クラウド、二年、どこにいた?」
「…どこに…?」
「この俺がどんなに手を尽くしても、居場所を見つけられなかった」
「…私にも場所はわかりません。海を眺めることのできる広い部屋にずっといました…」
「では、何をしていた? 何をされた?」
「…何も……、何もしておりませんでした。ただ、外を眺めて……」

 クラウドはそのまま黙ってしまった。セフィロスは声をかけることもできず、ただ、クラウドの横顔を見つめた。

「セフィロス様…」
「ん?」
「…セフィロス様のことばかり考えておりました…」
「…俺のこと…?」

 セフィロスは心臓が大きく跳ねるのを感じた。

「そうです。セフィロス様のことばかり。傷は大丈夫なのか、とか、もう、新しいメイドさんが来ているのだろうか…」
「…俺はずっと……」
「もう、私のことはお忘れだろうな、と、最近は思っておりました」
「クラウド! 俺はお前のことだけを!」

 セフィロスは隣にいるクラウドの上に覆いかぶさるようにした。両手首を掴んで、ベッドに押さえつける。
 クラウドは目を潤ませてセフィロスを見上げるだけだった。

「俺は今までお前の居場所を見つけることはできなかった。それでもあきらめてたわけじゃない。お前を見つけるまで、ずっとずっと探し続けるつもりだった。俺にはお前しかいないんだ。クラウドがいなければ、俺は…」
「セフィロス様…」
「…半身そがれた痛みを抱えたままだ…」
「…セ、セフィロス様…、私は…、私なんかは…」

 クラウドの頬を伝う涙を拭うようにセフィロスは唇をクラウドの頬に這わせた。クラウドは涙を止められないようで、息を吸うようにしている。

「クラウド、俺はお前を泣かせたくて言ってるわけじゃない。俺には本当にお前が必要なんだ。お前の声を聞いていないと、お前に触れていないと…。そう、繋がっていないと俺は生きてる心地がしない…」
「わ、私はセフィロス様の半身、…いえ、爪の先ほどにもなりません…。なることなどできないのです…」
「お前がどう思っていようと、俺にとってはそれだけの価値がある。いや、価値などという言い方は不適切だな。価値などつけられないのだから」

 セフィロスは泣きじゃくったままのクラウドの身体を抱きしめた。クラウドが背中に腕を回してきて、ぎゅっとしがみついてくるのを感じて、セフィロスは湧き上がる感情を抑えきれなかった。今すぐクラウドと一つになりたい。

「クラウド、今でも、俺を欲してくれるか?」
「…わ、私は…」
「俺はお前を守ってやることはできなかった。それでも、お前がこうしてここに来てくれて、ほっとしているし、本当に喜んでる。ただ、お前がここに来たのは、これで最後にしようとしてるんじゃないか、って、そう思えないこともない…」
「セフィロス様!」

 クラウドがさらに抱きついてきて、クラウドの鼓動がセフィロスの鼓動と重なり、身体に響いてくる。

「最後、だなんてとんでもない。セフィロス様が私でいいというのなら、私を傍に置いてくださるというのなら、これ以上幸せなことはないのです! 私はあの日から、ずっと今まで、いえ、今でも、セフィロス様のことを求め続けてるんです…」
「…クラウド…」
「セフィロス様、焦らすのはなしですよ?」

 クラウドは抱きついていた腕をほどくと、セフィロスに口づけた。

「焦らす余裕などあるわけがない。今すぐ貪りつくしたい…」

 セフィロスはクラウドの身体を固定するように組み敷いてから、クラウドの白い肌に一際目立ってピンク色に染まっている胸の先に吸い付いた。そして、クラウドの甘い声を聞きながら、自分の欲望をひたすらクラウドに受け止めさせた。
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