Crazy a go go! [CASE:A] (34)
Crazy a go go! [CASE:A](後編)

 すぐにクラウドはセフィロスとの距離をあけて、柔らかく微笑んだ。

「これでもおわかりになりませんか?」

 セフィロスは何も言えなかった。
 自分の中に浮かんだ思いがクラウドの考えと一致している自信がなかったからだ。

「言わないとわかりませんか?」
「…いや…、勘付いていないわけじゃない…。ただ…」
「ただ?」

 セフィロスはクラウドの肩を掴んで、クラウドの後ろにある木に勢いよく押さえつけた。

「もう一度言うが、俺には何もない…」

 掴んでいたクラウドの肩から手を離して、セフィロスは踵を返した。そして、そのまま歩みを進めようとした。

「やっぱり、わかってないじゃないですか!」

 クラウドに腕を掴まれて、セフィロスは足を止めるしかなかった。

「あなたがここにいるじゃないですか! あなたが、いや、あなただけが私を幸せにできるんです。あなたが持つ地位や、財産、そんなものは付属品でしかない。そんなものはあってもなくても構いません。あなたがいることが大事なんです!」
「…こんな俺で…?」

 恐る恐るクラウドの方に向き直って聞いてみると、クラウドはしっかり頷いた。

「私にとっては素敵な素晴らしい方ですから。他の誰にも変えられません」

 セフィロスは大きくクラウドの方に踏み出して、クラウドとの距離を縮める。クラウドはその気に圧倒されたのか、後ずさりして、木に背中をぶつけた。
 何も言わずにクラウドの顔を見つめていると、先ほどまでの強気の表情が不安に支配されていくのがわかった。

「…あ、あの…?」

 クラウドの声が怯えている。その声にセフィロスは口元をゆがませた。

「どうした? 何を怖がっている?」
「こ、怖がってなどいません!」
「そうやって強がるところが可愛い。その顔をしっかり見せてくれ」

 セフィロスはクラウドの顎を掴むと、上を向かせた。

「…セ、セフィロス様…」
「そう、不安そうな顔をするな。クラウド、この俺をお前にやる」

 一気に目を見開いて、クラウドはセフィロスの腕にすがってきた。

「今、何と…?」
「お前にやる、と言ったんだ」
「と、とんでもありませんっ! セフィロス様が私のものだなんて…」

 セフィロスの腕を掴んだまま、クラウドは頭を大きく振っている。そんなクラウドの頭をぽんぽんと軽く叩いて、セフィロスは落ち着け、と軽く笑った。

「もう、クラウドのいない生活なんて考えられないんだ。だから、俺はクラウドのものになってしまおうと思った。クラウドが俺を必要としなくなったときは、お前の手でとどめを刺してくれればいい…」
「そんなのはいやです! 必要としなくなることなんて、絶対ありえません! だから、ずっと一緒に居ます。いつまでも!」
「その思いで俺を拘束していて欲しい…」

 クラウドの身体をそっと引き寄せて、セフィロスはしっかりと抱きしめた。セフィロスの胸に身体を預けるように、クラウドは寄り添ってきた。
 しばらく二人だけの静かな世界が続いていたが、クラウドがそうだ、と声を上げた。

「何だ?」
「私のものっていう考え方はいただけませんが、私のお願いをたまには聞いてもらえますか?」
「たまにどころか、いつでも。俺はお前に従う」
「だから、従うのは私の方なんですってば。でも、たまには甘えたり、わがまま言わせてもらってもいいですよね?」
「…もちろん。俺にできることなら、いくらでも」

 クラウドはふふ、と嬉しそうに笑うと、セフィロスの首に腕を絡めてきた。

「セフィロス様、約束しましたよ。指切りの代わりに、キスしてください」
「…ここで?」

 屋敷から離れているとはいえ、庭であるし、誰かに見られないとも限らない。

「…そういうことを気になさいます?」
「俺じゃなくて、クラウドに気を遣ったんだが?」
「私が気になってるなら、キスのおねだりなんかしませんよ」
「それもそうだな」

 セフィロスはクラウドの頬に手を添えて、ゆっくりと艶やかな唇を塞いだ。

「それから?」
「…して…」
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