Crazy a go go! [CASE:A] (20)
Crazy a go go! [CASE:A](後編)

◇◆◇

「…クラウド!」

 セフィロスは自分の叫び声で目が覚めて、飛び起きた。

「だんな様、お昼寝はご自由ですが、まだ、その名前を呼ぶのですね?」

 ちょうど横を通りかかったのか、ザックスが傍に立っていて、大きくため息をついた。

「…悪かったな…」
「もう、2年ですよ、あれから」
「…2年……」

 セフィロスは頭を振った。
 あの日のことは何もかも鮮明に覚えている。クラウドの涙にぬれた顔も、口づけを交わしたあの柔らかな唇も。

「…手がかりは一切なし、です。ご存知の通り」
「わかってるさ、そんなことは」

 セフィロスが傷を負って、次に目を覚ました時には、クラウドの姿はどこにもなかった。ザックスにもエアリスにも何も告げず、姿を消してしまったのだ。
 探すあてを持たなかったセフィロスは、ただ、帰ってくるのを待つしかなかった。そうやって過ごして、2年が経ってしまっている。

「人探しやら、失せ物探しやら、探し物が得意だと名の知れていた俺でも、見つけられなかったんだからな」
「…でしたら、もう…」
「俺のことは心配しなくてもいい。それより、お前たちの方が俺は心配だが?」
「お前たち?」
「そう、ザックスとエアリスのことだ」
「そのことですか。それでしたら、全然問題ありません。エアリスもここで住むことになってから2年が経ってるわけですしね。そう言えば、エアリスが、だんな様に言いたいことがあると言ってました」
「俺に?」

 セフィロスは大きく伸びをしてから、テーブルに置かれていた飲み残しのワインを一気に飲み干した。

「もうすぐ、この食堂に来ると思いますが…」
「あ、セフィロス!」

 開け放たれた扉の向こうから、エアリスが手を振りながら近寄ってきた。

「…どうした、一体?」
「もうすぐ、お客様が来るから、身だしなみはきちんとね」
「今日は来客の予定はなかっただろう?」
「急な来客があるの」
「…それはまた、面倒なことだな」

 セフィロスはわざとらしく息を吐き出してから、頬杖をついた。
 ここ2年ぐらい、来た客と言えば数えるほどだし、領地に住む人々がワインを届けてくれたりするのに、応対に出たぐらいだ。
 そんな客を相手に身だしなみなど気にしなくても済んでいたので、いざ、綺麗にしようと思うと、億劫でしょうがなかった。

「髭ぐらいは剃っておきなさいよ! セフィロスが困るんだから!」
「…俺が困る…? よくわからんが、それは従っておくとしよう」

 セフィロスは仕方なく洗面所へと移動して、髭を剃り、髪の毛を梳いたりして、一応の見た目を整えた。

「セフィロス! お客さんですって。庭を見たいってことで、ザックスが庭に案内してる」
「…庭…?」
「いいから、早く。あの黒豹のエリザベスが興奮して駆け出していっちゃったから、大変よ」
「エリザベスが?」

 エリザベスがなついている人間など限られている。
 セフィロスが知る限りでは、自分とザックス、2年前から一緒に暮らすようになったエアリス、そして、あと一人。
 セフィロスは洗面所から食堂を通過し、椅子に掛けてあった上着を羽織ると、庭に飛び出した。
 エリザベスが金髪の少年に頭を撫でてもらっている光景が目に入ってくる。

「…こら、大人しくしなさい。ご主人様に怒られるぞ」

 白いカッターシャツを着た少年は構ってほしそうなエリザベスを座らせて、その横にしゃがんで、まだ、頭を撫でてやっている。

「元気そうでよかった。お前のご主人様は元気かな?」

 この声は間違いない。
 髪の毛の感じは初めて会った時と変わっていない。
 セフィロスの中で湧き上がっていた思いが、確信に変わった。
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