Crazy a go go! [CASE:S] (9)
Crazy a go go! [CASE:S]

 今すぐ駆け寄って抱きしめたい気分だった。
 金髪が太陽の光を吸い込んで、きらきら乱反射している。普段とは違いメイド服ではなく、白のシャツにズボンという服装だった。

「クラウド…」

 声をかけるとクラウドは肩を大きく揺らしてから、ゆっくりと振り返った。

「…セ、セフィロス様……、どうして……?」

 クラウドは俺と目が合ったとたん、目を大きく見開いた。

「何かを探し出すのが得意なことはクラウドも知ってるだろう?」

 そう言って、軽く笑うと、クラウドは首を振って、小さく息を吐いた。

「クラウドに話がある」
「…私にはかまわないでください、と申し上げたはずです…」
「そういうわけには行かないんでな」
「どうしてです? セフィロス様はご結婚なさるわけですし、私なんかにかまっているお時間などございませんでしょ?」
「その件なら、断ることにした」
「え?」

 クラウドは驚きを隠しきれない様子で、俺の目を見つめている。

「…悪かった」

 俺は深く頭を下げた。頭を下げた程度で許してもらおうとは思っていなかったが、今できることはこれしかなかった。

「セ、セフィロス様…?」
「俺が屋敷の主であるということで、みんなを守らなければという気になっていたが、それは俺のエゴでしかなかった。それだけのために、俺はクラウドを深く傷つけてしまった。俺の一番正直な気持ちを殺すことで、逆にいろんな人を傷つけたり怒らせたりしてしまった。本当にすまなかった」
「頭を上げてください。セフィロス様が悪いわけではありません。私が勝手にお屋敷から姿を消しただけのこと…」
「その原因を作ったのは俺だろう?」
「…いえ。セフィロス様はあの時、正しい選択をしたのです。私はあの選択は当然だと思っておりましたから。ただ…」

 クラウドは空を仰いでいた。言葉を選んでいるのか、黙って空に溶け込もうとしているのか。

「…私の心はそれでは押さえつけられなかった…」
「クラウド?」
「…セフィロス様が好きなのに…、一緒にいたいのに…っていう思いばかりが胸の奥からずっと溢れてくるんです。セフィロス様の選択は間違ってないって自分に言い聞かせてみても、納得しきれなかった。私のわがままだって十分わかっていましたけど、私を選んで欲しかった! セフィロス様のお顔を見ると、口走ってしまいそうだったから…」
「だから、屋敷から…?」

 クラウドは空から視線を海に戻すと、黙ってうなずいた。今度は海をじっと眺めている。たたずんでいるクラウドは風にさらわれていきそうなぐらい、軽そうで今にも壊れそうだった。

「…屋敷から出て、セフィロス様の評判も何も届かないこの場所で、ずっと暮らそうと思っていました。時間が経てば、セフィロス様のことも忘れてしまえる、と、そう思っていたのに……」

 クラウドはゆっくりと振り返って、ようやく俺と目を合わせた。瞳には涙が浮かんでいる。

「…セフィロス様、ここまで来ちゃうんですもの。せっかく、忘れようと思ってたのに……」

 クラウドは膝から地面に崩れた。クラウドは声を上げて泣いていた。今までに見たことのないクラウドの姿だったが、すごく愛おしかった。この俺の思いだけでここまでぐしゃぐしゃに泣いてくれるクラウドがいるんだったら、俺はもうそれで十分だった。そんな人がたった一人いるだけで、俺の存在価値があると思える。
 俺はクラウドの横に膝をついてクラウドを抱きしめた。

「辛い思いをさせて悪かった。もう、何があってもクラウドを手放さない」
「…セフィロス…さま……」
「俺はクラウドが好きだ。どうしようもないぐらいに」

 抱きしめる腕を緩めて、クラウドの目を見つめる。クラウドは瞳に涙を溜めたまま、俺を見ていたが、セフィロス様、と呟いて、ゆっくりと瞳を閉じた。
 クラウドのつややかな赤い唇に吸い寄せられるように、俺は唇を重ねた。
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