Crazy a go go! [CASE:S]
屋敷を出てから、丸2日が経ち、もう3日目になる。
クラウドの行き先については、手がかりがないままだった。
今朝も早くから色々心当たりを回ったり、知人などに聞いて回ったりしたものの、全く足取りはつかめずにいた。
できれば明日には見つけだしたい。
焦りだけが後から後から募ってくるが、その焦りは解消されずにいた。
空がオレンジ色に染まり、街灯がぽつぽつとともり始めたころ、俺は酒場でワインを飲んでいた。
頭の中はクラウドのことでいっぱいだったので、酒を飲んでいても、酒の味はしていなかった。気分次第でこんなに酒がまずくなるとはな。
明日の動き方次第でクラウドに会えるかどうかが決まるだろう。
このまま会えなかったとしたら俺は……。
不意に目の前の窓ガラスが音を立てた。
顔を上げると、見知った男が手を振っていた。中に入る、と指先で合図して、足早に店の中に入ってきた。
その男は俺の隣に座ってビールを注文すると、お久しぶりですなぁ、と笑顔を見せた。
「リーブさん! お久しぶりです。このようなところでお会いするとは…」
「また、堅苦しい挨拶してる。挨拶はええですわ。それより、どうしたんです? もう、明日は来ないような顔をしてはりましたけど」
「…私には来ないかも…しれません…」
「カワイコちゃんが隣にいないとダメなんですかね?」
「カワイコちゃん…?」
「ほら、セフィロスさんとこにめちゃくちゃ可愛いメイドさん、いらしてたでしょ? あの子のことですわ」
「…ああ…。今日は…一人…です…」
俺がうつむいたタイミングで、ちょうどビールが運ばれてきた。
「ま、話はゆっくり聞くとしまして、まずは再会を祝う乾杯ですわ!」
いつもなら、グラスを重ねる音にうきうきしたりするものだが、そんな気分になるわけもなかった。
「乾杯っていう気分でもなさそうですな。セフィロスさんと遭遇するときは、大概セフィロスさんに何かあるんですなぁ。何にもない時にお会いしたいもんやけど…。今回の問題は何です?」
俺はリーブさんにいきさつを説明した。俺の見合いのこと、見合いの条件、そして、クラウドがいなくなったこと。
「また、あのぼっちゃんもおかしなことを…」
すでにリーブさんのジョッキは空っぽになっている。すぐ側にいたボーイを捕まえて、もう一杯ビールと、ワインを一本持ってこさせた。
「どうしても、クラウドを手に入れたいのでしょう…」
「ぼっちゃんは素直ですな。セフィロスさんに比べて」
「素直…。ああ、そうかもしれません」
「ぼっちゃんはクラウドが欲しいっていうのをアピールしてあらゆる手段を講じている。それに対して、セフィロスさんは自らクラウドを差し出すようなことをしてしまったわけですな」
「…私は屋敷の主としての道を選択していたのです…。ただ、私の屋敷ではそれは通用しなかった」
「はあはあ。ザックスさんですな。そして、気づきはった、と」
「ええ。私は間違っていたのです。屋敷を出る時にザックスが言ってくれました。私の好きにしていいのだ、と」
そう、ザックスは屋敷を出る前に色々と言葉をかけてくれたのだった。
俺がクラウドを選ぶことは、決して俺のわがままではない、ということ。むしろ、クラウド一人守れないような主が、屋敷全体を守れるとは思えない、ということ。
「ザックスさんは、できたお人ですな。さすが、セフィロスさんとこにいらっしゃる方や」
「…私にはもったいないですよ…」
「で、セフィロスさんは、そのカワイコちゃん、つまりクラウドさんを探してどうするんです?」
「どうするって……」
俺は探し出してどうしようとしているのだろう。連れて帰る? それは何のために?
「あーあー、そこが悪いところですな、セフィロスさんの」
リーブさんは、頭を軽く振った。
「何でも明確な理由を欲しがるのはよくないですよ。セフィロスさんは、クラウドさんが好きや、と。じゃあ、それだけでいいじゃないですか。好きだから一緒にいたい、だから連れて帰る。それ以外の理由が要りますか?」
そうだ。俺はクラウドをずっと側に置いておきたかったのではないか。手放すつもりはさらさらなかったし、この腕に抱いていたかったのではなかったのか。
「そういや、セフィロスさん。思い出したことがあるんですけど…」
「何か?」
リーブさんと目を合わせると、リーブさんはにっこりと笑顔を見せた。
「カワイコちゃんといえば、今朝、そっくりさんを見たんですわ。男の子だったから、違うと思うんやけど、めっちゃ似てました。双子かと思いましたわ」
クラウドの行き先については、手がかりがないままだった。
今朝も早くから色々心当たりを回ったり、知人などに聞いて回ったりしたものの、全く足取りはつかめずにいた。
できれば明日には見つけだしたい。
焦りだけが後から後から募ってくるが、その焦りは解消されずにいた。
空がオレンジ色に染まり、街灯がぽつぽつとともり始めたころ、俺は酒場でワインを飲んでいた。
頭の中はクラウドのことでいっぱいだったので、酒を飲んでいても、酒の味はしていなかった。気分次第でこんなに酒がまずくなるとはな。
明日の動き方次第でクラウドに会えるかどうかが決まるだろう。
このまま会えなかったとしたら俺は……。
不意に目の前の窓ガラスが音を立てた。
顔を上げると、見知った男が手を振っていた。中に入る、と指先で合図して、足早に店の中に入ってきた。
その男は俺の隣に座ってビールを注文すると、お久しぶりですなぁ、と笑顔を見せた。
「リーブさん! お久しぶりです。このようなところでお会いするとは…」
「また、堅苦しい挨拶してる。挨拶はええですわ。それより、どうしたんです? もう、明日は来ないような顔をしてはりましたけど」
「…私には来ないかも…しれません…」
「カワイコちゃんが隣にいないとダメなんですかね?」
「カワイコちゃん…?」
「ほら、セフィロスさんとこにめちゃくちゃ可愛いメイドさん、いらしてたでしょ? あの子のことですわ」
「…ああ…。今日は…一人…です…」
俺がうつむいたタイミングで、ちょうどビールが運ばれてきた。
「ま、話はゆっくり聞くとしまして、まずは再会を祝う乾杯ですわ!」
いつもなら、グラスを重ねる音にうきうきしたりするものだが、そんな気分になるわけもなかった。
「乾杯っていう気分でもなさそうですな。セフィロスさんと遭遇するときは、大概セフィロスさんに何かあるんですなぁ。何にもない時にお会いしたいもんやけど…。今回の問題は何です?」
俺はリーブさんにいきさつを説明した。俺の見合いのこと、見合いの条件、そして、クラウドがいなくなったこと。
「また、あのぼっちゃんもおかしなことを…」
すでにリーブさんのジョッキは空っぽになっている。すぐ側にいたボーイを捕まえて、もう一杯ビールと、ワインを一本持ってこさせた。
「どうしても、クラウドを手に入れたいのでしょう…」
「ぼっちゃんは素直ですな。セフィロスさんに比べて」
「素直…。ああ、そうかもしれません」
「ぼっちゃんはクラウドが欲しいっていうのをアピールしてあらゆる手段を講じている。それに対して、セフィロスさんは自らクラウドを差し出すようなことをしてしまったわけですな」
「…私は屋敷の主としての道を選択していたのです…。ただ、私の屋敷ではそれは通用しなかった」
「はあはあ。ザックスさんですな。そして、気づきはった、と」
「ええ。私は間違っていたのです。屋敷を出る時にザックスが言ってくれました。私の好きにしていいのだ、と」
そう、ザックスは屋敷を出る前に色々と言葉をかけてくれたのだった。
俺がクラウドを選ぶことは、決して俺のわがままではない、ということ。むしろ、クラウド一人守れないような主が、屋敷全体を守れるとは思えない、ということ。
「ザックスさんは、できたお人ですな。さすが、セフィロスさんとこにいらっしゃる方や」
「…私にはもったいないですよ…」
「で、セフィロスさんは、そのカワイコちゃん、つまりクラウドさんを探してどうするんです?」
「どうするって……」
俺は探し出してどうしようとしているのだろう。連れて帰る? それは何のために?
「あーあー、そこが悪いところですな、セフィロスさんの」
リーブさんは、頭を軽く振った。
「何でも明確な理由を欲しがるのはよくないですよ。セフィロスさんは、クラウドさんが好きや、と。じゃあ、それだけでいいじゃないですか。好きだから一緒にいたい、だから連れて帰る。それ以外の理由が要りますか?」
そうだ。俺はクラウドをずっと側に置いておきたかったのではないか。手放すつもりはさらさらなかったし、この腕に抱いていたかったのではなかったのか。
「そういや、セフィロスさん。思い出したことがあるんですけど…」
「何か?」
リーブさんと目を合わせると、リーブさんはにっこりと笑顔を見せた。
「カワイコちゃんといえば、今朝、そっくりさんを見たんですわ。男の子だったから、違うと思うんやけど、めっちゃ似てました。双子かと思いましたわ」