Crazy a go go! [CASE:S] (3)
Crazy a go go! [CASE:S]

「久しぶりだな、セフィロス!」
「ルーファウス公爵様も、お元気そうで何よりです」

 客間のソファーに座っている公爵に、俺は恭しく、頭を下げた。

「堅苦しい挨拶は抜きだ。それより、クラウドはどこだ?」

 俺の見合いの相手の紹介はせずに、まず、クラウドか。一体何をしにきたんだか、わからない。

「ただいま、おもてなしの準備をさせていただいております。まもなく、参ると思いますが…」
「そうか。じゃあ、それを待つとしよう、セフィロス、お前も座れ」
「失礼いたします」

 俺はザックスと共に公爵の向かいに座った。
 公爵の隣には見合いの相手と思われる女性が座っている。ストレートの長い髪が印象的だ。可愛いというわけではなく美人な感じである。ただ、他人を寄せ付けないとげとげしさが感じられる。

「ルーファウス様、私はご紹介してただけないのかしら?」
「おお、そうだな。セフィロス、こちらジャンヌお嬢様だ。大体のことは先に送っておいた資料に書いてあったとおりだ」

 書いてあったとおりとは言っても、名前、出身と、家系ぐらいしか書いていなかったため、俺はよくわかっていない。

「お初にお目にかかります。私、セフィロスと申します。こちら執事のザックスです」
「初めまして、ザックスと申します」

 ザックスは深々と頭を下げた。

「どうぞよろしく」

 そんな気持ちなどこれっぽっちも入っていないような挨拶ぶりに、ザックスが肩を揺らしている。挨拶が何においても基本だと俺もザックスも考えているため、ちゃんと挨拶ができないやつに対しては、その時点で、境界線を引く。

「お待たせいたしました」

 張り詰めていた空気が、一瞬にして和む。
 クラウドはワゴンを押しながら、客間に入ってきた。

「おお、クラウド! 久しぶりだな、会いたかったぞ!」

 クラウドを見るなり、このはしゃぎよう。まるで子供のようだ。
 当のクラウドは「お久しぶりです、ルーファウス様」とにっこり笑った。紅茶をルーファウスに差し出しながら、さらに笑顔を見せる。

「会いたいと思っていただけるなんて、光栄ですわ」
「俺はいつでもクラウドに会いたいんだがな、忙しくてな。今日、クラウドに会えなかったら、クラウドを含めてこの屋敷ごと、買い取るつもりだったぞ」
「お会いできてよかったですわ」

 クラウドに相手をしてもらって正解のようだ。この屋敷ごと買い取られて、公爵の下で暮らすなんてできるはずがない。しかも、クラウドをルーファウスの側に置いておいたらどういうことになるか。
 ザックスも安堵の表情を浮かべている。

「クラウド、こちらが呼ぶまで、下がってていいぞ」
「かしこまりました」
「別にクラウドを下げる必要はないだろう? 別にクラウドに聞かれてまずい内容でもあるまい」

 公爵の口元が軽く上がる。
 何となく想像ついていたこととはいえ、現実にそうなると嫌な気分になる。そろそろ災厄とかかれたおいしくもない土産を出されそうだな。

「いいえ。公爵様のおもてなしの準備をさせていただく必要がありますので」
「今回は俺のもてなしなど、気にしなくともよい。何せ、セフィロスとの縁談がこれで決まるかもしれないのだぞ」
「勝手に話を進めないでいただけますか?」

 大きくため息をついてから、言い放った直後だった。

「あっつー!」

 ザックスが大きな声を上げた。

「きゃぁ、すみません、ザックスさん! 早く冷やさないと! 火傷になってたら大変です!」
「ルーファウス様、大変申し訳ありませんが、中座させていただきます。クラウド、悪いけど、薬箱の場所を…」
「ご一緒いたします」

 ザックスはルーファウスに一礼した後、俺にちらっとウインクして見せた。
 俺は軽くうなずくと、ルーファウスに向き直って、口を開いた。

「さて、今回のお見合いの件について、詳細をお伺いしましょう」
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