Crazy a go go! [CASE:S] (2)
Crazy a go go! [CASE:S]

 結局、クラウドに来客の相手をさせないよい方法というものが思いつかないまま、当日の朝を迎えた。

「セフィロス様、そろそろお支度を……」

 クラウドがそっと部屋の中に入ってきた。クラウドは俺の身の回りの世話(色々な意味を含めて)と、お客様のおもてなしを担当している。クラウドは表向き女性ということになっているが、実はそうではない。
 別に俺が女装をさせている、というわけでもない。あらゆる諸事情により、女性として振る舞っている。もちろん、ザックスを含め、屋敷にいる使用人全て、クラウドは女性だと認識していて、みんなクラウドには親切にしているようだ。

「…わかった……」

 大概、クラウドが起こしに来ても、起きていないことが多いのだが、よく眠れずに、早く目が覚めてしまっていた。

「…ご気分がすぐれないようですが…?」
「……相手と状況が最悪だな…」
「いつもそうおっしゃいますのね」
「…今回は史上最悪だ…」
「それは大変。セフィロス様でもそれほど困る状況……、セ、セフィロス様?」

 窓のカーテンを開けているクラウドを後ろから抱きしめた。
 俺の腕の中にすっぽり入る華奢な身体は今にも壊れそうだった。そんな身体に反比例してか、強い心を持っている。だが、今回の状況ではその心さえも壊してしまうかもしれない。
 俺のこの手で。

「すまない、クラウド。俺を憎んでもいい……」
「な、何のことですか? セフィロス様を憎むって?」

 クラウドの問いには答えずに、俺はクラウドから離れて客間へと向かった。





 客間にはザックスがいて、使用人に色々指示を出している。テーブルクロスを変えたり、花を飾らせたり、こまごまと作業をしているようだ。
 客間の入り口に俺の姿を見つけたザックスが、近寄ってきた。

「旦那様、ワインはどうしましょう?」
「ワインなんて出す必要ないと思うが…、安物で」
「旦那様ー、さすがに、そういうわけには行きません。相手は公爵様です。失礼なことなどできません」
「味がわかるとは思えないがな。まあ、美味そうなやつならどれでも」
「…了解しました。私の方で見繕っておきます。お食事の方ですが、すでにコックの方には準備をしておくよう伝えてあります。問題は、お客様のお相手なのですが……」
「…クラウドが…やってくれるだろう……」
「旦那様がそれでよいのであれば、私めは何も申し上げません」

 ザックスは軽く首を振った。
 ザックスの言いたかったことはわかっている。クラウドに相手をさせないようにどうにかするべきだろう、ということだ。
 それが簡単にできるなら、俺はとっくにそうしていた。
 取り越し苦労ですめばよいが、ぼっちゃんはどんな手段に打って出てくるかわかったものじゃない。その予防線は早くから張っておくべきだろう。

「ザックス…」
「何でしょうか…?」
「俺はクラウドを手放したくないが故に、クラウドに相手をしてもらうんだ」
「え? それって……」
「ぼっちゃんとの話し合いでわかるだろうさ」
「万が一、その結果、クラウドが旦那様のことを嫌いになったりしたら、どうなさるんですか?」
「その時は、チャンスじゃないか、ザックスの」

 軽く笑って、ザックスの肩を叩いた。ザックスは少し嫌そうな顔をした。感情を表に出しやすい性格なのは直らないようだ。

「あんまり感情を外に出すもんじゃないぞ、ザックス」
「そんなチャンスうれしくありませんから」
「チャンスは物にしておくべきだと思うが…?」
「時と場合によります。では、準備の続きを…」

 ザックスがきびすを返したタイミングで、クラウドが駆け寄ってきた。

「お客様がお見えですが、いかがいたしましょう?」
「客間にお通ししてくれ。とりあえず、紅茶を…」
「かしこまりました」

 クラウドが立ち去ってから、俺とザックスは顔を見合わせて、大きくため息をついた。

「さあ、敵がお見えだな」
「きっと、災厄と書かれた土産を持参してくださってるんじゃないですか?」
「丁重にお断りするか」
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