想いの深さ (14)
想いの深さ

「クラウド!」
「セフィロスからもらったものを誰かに上げるなんて出来ない!」

 子供たちだぞ、という言葉をセフィロスは飲み込んだ。自分だってクラウドからもらったものを譲ることなどできないとわかったからだ。

「じゃあ、頼むから食べてくれ。そのまま置いておいて食べられなくなったら、俺の思いも無駄になるだろう?」

 だから、お願いだ、と言うと、クラウドはうん……、と頷いて箱をテーブルに戻した。
 その中の一つを掴もうと指先を伸ばしているが、その指は震えている。

「や、やっぱり、ダメだよ!」

 もったいない、もったいない、と頭を大きく振っている。
 このまま飾っておけないことぐらい、クラウドもわかっているだろう。お菓子については誰より詳しいし、うるさいはずのクラウドである。
 セフィロスは大きく息を吐き出すと、箱の中から一番小さいチョコレートを掴んだ。

「セフィロス!」
「仕方ないだろ?」

 そう言って、セフィロスはチョコレートを口の中に放り込んだ。その行為にクラウドが目が飛び出そうなほど、目を丸くする。

「セフィロス! 食べられないのに……って、ちょ……っ」

 クラウドの顎を掴んで上を向かせると、唇を塞いだ。クラウドの口にチョコレートを移すと、セフィロスは唇を離した。

「……バカ……っ! そこまでセフィロスがすることないだろ! 苦手なくせに!」
「……こうでもしないと、食わないだろ?」
「……ごめん……」
「後は全部ちゃんと食えよ。でないと、子供たちにやるからな」

 口の中に残る甘い香りと味を必死に我慢して、クラウドに脅しをかけておく。二度と同じことはできない。
 自分でもこんなことができるなんて、奇跡だと思っている。

「……セフィロス、ちょっと」

 クラウドはセフィロスの肩を掴んだかと思うと、唇を重ねてきた。驚いているセフィロスの唇をあっさり割って、舌を差し入れてくる。
 クラウドの舌はセフィロスの口の中を舐めつくすように、ゆっくりと蠢く。

「ましになった?」

 唇を離したクラウドの問いに、セフィロスはクラウドのしようとしていたことに思い至った。

「おかげさまで。チョコレートの味はほとんど消えた」
「それはよかった」

 にっこり笑ってから、クラウドはセフィロスの膝の上にごろんと横になった。

「こら、クラウド」
「……眠い……」
「なら、ちゃんとベッドで寝ろ。連れて行ってやろうか?」
「いい。ここで」

 セフィロスの手をぎゅっと握ってきたクラウドの手を握り返すと、クラウドは、好き、と呟いた。

「…ク、クラウド?」

 好きの一言で、セフィロスは胸が大きく跳ねるのを感じて、うろたえてしまう。

「深く深く好きだっていうのを上手く伝えられないから、いっぱい言うことにした」
「十分、伝わってるんだが?」
「それなら、もっと伝わるように、言うだけ……」

 すぅっと寝息の音が続いて、クラウドが眠りについてしまったことを伝えてきた。
 クラウドの額に軽くキスを落として、セフィロスは息を吐く。
 好きだと、言われ続けていたい。
 セフィロスはそう思う。
 クラウドの言葉がこの胸を深く深くえぐり、その痛みで身動きがとれなくなってもいい。
 しかし、逆にこの自分の思いをどう伝えればいいのだろう、とセフィロスはこういう時に考えてしまう。
 クラウドの言葉のように自分の言葉にも威力が欲しい。
 好きだという言葉にも、封印したあの言葉にも。
 この想いの深さを伝えてくれるほどの威力を持つことができたら、そのときには、きっと素直に言えるかもしれない。


 セフィロスは自分の今の想いを注ぎ込むように、クラウドに口付けた。


END
バレンタインネタを今までひっぱりまくりましたが、ようやく終わりです。
今までお付き合いありがとうございました!
今回のお話は書いている中で自分自身、色々勉強できたのでよかったな、と思っております。
皆様にお楽しみいただけていれば幸いです。
次回ネタを今考えているところですが。時期的に梅雨とかのあたりになるので、そういうじめっとした話になったらごめんなさい。(先に謝っておこう)
「こんな話読みたい!」ってのがあれば何なりとお寄せくださいませ。
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