想いの深さ (5)
想いの深さ

「さて、お母さんを迎えに行きたいのだがな……」

 ルーファウスと長い夕食を終えたセフィロスは、神羅ビルに隣接して立っている複合商業ビルの入り口にいた。
 空から小さい六花が舞い落ちてくる。

「お母さん、ここにいるの?」

 クレフがセフィロスの上着のすそを引っ張る。

「間違いないな。お母さんの好きなお店が、2階にあっただろ?」
「あのカフェ? バレンタインだからなぁ。チョコレートの匂いがすごそうだよ」

 カインは上を見上げて、大きくため息をついた。

「だから、間違いないんだ。俺の嫌いな場所だろ? それで、二人にお願いがあるんだ」

 セフィロスは上着の内ポケットから二つの封筒を取り出した。

「これはお母さんに、こっちは大きいお兄ちゃんに渡してくれ」
「渡したらわかるんだよね?」

 封筒を右手と左手に一つずつ受け取ったカインが確認する。

「そうだ。渡して、中を見てもらえ。それでわかってもらえる」
「わかった。お父さんはどうするの?」
「ん? 俺は別の場所にいるから。カインとクレフは後で大きいお兄ちゃんが連れてきてくれるはずだ」
「わかった。じゃ、渡してくる。クレフ行くぞ」
「よろしくな」

 カインとクレフの背中を見ていると、カインが振り返った。

「お父さん」
「ん?」
「貸しだからね!」

 カインのこのしっかりしたところはセフィロスでさえもかなわない。

「そうだな……。最新モデルのノートパソコン1台」
「手を打つよ。クレフは?」
「お父さんと遊園地でどうだ? それだけだとカインと差がでるから、欲しいフィギュアをいくつかってとこだな」

 クレフは満面の笑みを浮かべる。

「いいよ! 遊園地!」

 カインとクレフはパタパタとビルの中へと入っていった。





 ピンポンとチャイムが鳴って、部屋に待ち人が来たことを告げる。
 セフィロスがドアを開けると、来訪者はドカドカと部屋の中に入って来た。
 セフィロスが口を開くより先に怒鳴るような声が響く。

「ザックスに何て書いて渡したんだよ!」
「怒鳴るなとは言わんが、せめてドアを閉めてからにしてくれ」
「悪かったな!」

 そう言って、部屋を見回した来客はしばし固まっていた。

「クラウド?」

 名前を呼ばれた来訪者はすぐにセフィロスに向き直り、夜景に見とれてた訳じゃないからな、と吐き捨てた。

「まあ、落ち着け。ザックスには子供たちを頼む、ということと、30分後に連絡いれるということしか書いていない」
「ザックスが子供たちに、お母さんたちはデートだそうだ、とか言ってたぞ!」
「それはザックスに文句を言ってくれ、俺は知らん」

 セフィロスは、部屋の真ん中に置かれていた革張りのソファーに座った。
 飲みかけだった洋酒のグラスに口をつける。

「で、何で呼び出した?」
「あのチョコレートとメッセージの件だ」
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