想いの深さ (8)
想いの深さ

「子供たちは?」
「やっと寝たよ。遊園地、遊園地ってはしゃいでたけど?」

 クラウドはソファーでタバコを吸っているセフィロスの隣に座った。

「ああ、約束したからな」
「何だか、カインも行きたそうだったよ」

 確かに借りの代償としてクレフには遊園地を持ち出したが、カインにはノートパソコンしか言わなかった。

「ならば、みんなで行けばいい」

 カインが一緒に行くということになってもクレフは借りが貸しがとかいうことは気にしないだろうし、むしろ喜ぶだろう。

「俺も?」
「行きたいんだろう?」

 セフィロスはにやりと笑みを浮かべてクラウドを見た。
 思い切り首を横に振りながら、クラウドは断じて、そんなことはない、と繰り返す。

「では、クラウドは留守番決定」
「い、意地悪! やっぱり怒ってるんだろ!」
「怒ってない。もう、忘れろ」

 クラウドの肩を抱き寄せて、優しく言うと、クラウドはう…ん、と歯切れ悪く頷いた。

「どうかしたのか?」
「ごめん……」
「今度は何だ?」

 しがみついてくるクラウドの頭を撫でながらセフィロスが問うと、クラウドは忘れてきた、と言った。

「忘れてきた?」
「準備はしたんだけどな、家に置いてきた……」
「別に構わん。バレンタインのプレゼントのことだろ?」
「構わないことないよ!」

 クラウドがしがみつく手に力を込めるのをセフィロスは背中で感じていた。

「俺が構わないと言っているんだ。それより、さっきザックスが持ってきた紙袋があっただろ? あれはお前宛だ」
「俺?」
「そう、俺が頼んで持ってきてもらった。開けてみてくれ」
「うん……」

 クラウドは自分の話をはぐらかされたのが気にくわなかったのか、ふてくされた表情で、ザックスから受け取った紙袋を開いた。

「ちょ、セフィロス!」
「何だ?」
「こ、これ、あの店のチョコレート!?」

 クラウドが言うあの店とは、セフィロスが嫌いな場所である。
 その店には有名なショコラティエがいるらしく、バレンタイン用のチョコレートはすぐ無くなってしまう。限定物ともなると、予約なしでは手に入らないといわれている。

「限定のものはないって言われたから、残っていたら数個詰めてくれって頼んでおいたんだが……」

 クラウドは紙袋から箱を取り出すと、ラッピングを丁寧に開けた。
 ふたを開けて中を覗いた、クラウドは目を見開いたまま、動かなくなった。

「クラウド?」
「セフィロス……、これ……、限定ものなんだけど……?」
「それはよかったな」
「ちょ、ちょっと! 『よかった』じゃないよ、感動薄いよ!」

 クラウドは箱の中身をじっと眺めたまま、うわー、もったいないなぁーとかぶつぶつ言っているが、セフィロスとしては、感動が薄くても仕方ないだろうと思う。チョコレートが食べられない者に限定であろうが通常であろうが関係はない。

「クラウドが喜んでくれたならいい」
「……もう! どうして、セフィロスは……!」
「クラウド?」

 クラウドはセフィロスの袖をきゅっと掴んでいた。

「セフィロスは俺の喜ぶことばっかりさらりとやってのけちゃえるんだよ! 俺はどうやっても、どう頑張っても俺が喜んでいる以上に、セフィロスを喜ばせることなんて出来ない!」
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