想いの深さ (9)
想いの深さ

 セフィロスはクラウドの頬に軽く触れた。

「どうした? そんな簡単なこと、わからなくなったのか?」
「簡単……?」
「そうだ。今までにもやってきただろ?」

 わからないといった風に目を細めるクラウドの顎を掴んで上を向かせると、セフィロスは鼻先が触れるほどに、顔を近づけた。

「俺の目を見て、『好きだ』と言えばいい」

 クラウドは顔を真っ赤にして、目を丸くしている。

「だから、簡単だと言ってるじゃないか。照れるようなことか?」
「て、照れてるとかじゃなくて、そ、そんなことで……?」
「そうだな。強いて言うなら、クラウドからねだってくれれば、完璧だな」

 口元だけで笑うと、クラウドは顎を拘束していたセフィロスの手を払い除けた。
 うつむいたクラウドの耳や首は真っ赤に染まっている。

「クラウド?」

 呼びかけたセフィロスの声にクラウドはうーと小さく唸ってから、顔を上げた。
 目が合ったクラウドの瞳は心なしか潤んでいて、セフィロスは思わず息を呑んだ。

「……好き……だ……」

 心と身体がはじける感覚をセフィロスは押さえ込んで、クラウドの後頭部に手を回した。息がかかるほどに接近して、視線を絡める。

「それから?」
「……キス……して……」

 ようやく聞き取れるほどの小さな声に答えるようにセフィロスはクラウドの唇に自身の唇を重ねた。
 触れるだけの軽い口付けにクラウドは悲しそうな表情を浮かべた。

「ご不満か?」
「……やっぱり意地悪じゃないか」
「とうに知ってると思ってたが?」
「知ってるよ。だから、それに屈することしか出来ないから悔しい……」
「いいぞ、頑張ってもらっても」

 セフィロスが笑った瞬間、クラウドはセフィロスの頬を両手で挟むようにすると唇を塞いできた。
 すぐに舌を差し入れてきて、セフィロスの口腔をゆっくりと嬲ってきた。
 そんなクラウドの口付けをしばらく受けていたが、セフィロスは自分から唇を離した。

「セフィ……っ!」
「ん?」
「止め…るの……?」
「クラウド次第だ」

 セフィロスはクラウドの唇に指先で触れた。セフィ……、と呟く唇に触れたい欲求を出さずに、言ってくれ、と囁く。

「何を…?」
「どうして欲しいか」
「……それで……セフィロスは……」

 クラウドは急にセフィロスの手を払い除けて、睨みつけてきた。セフィロスが口を開くより先に、クラウドは立ち上がり、セフィロスを見下ろす。

「満足? 俺が欲しいと言ったら、それでいい? それぐらい言えないわけじゃない。欲しいのは本当だから。でも、俺がどんなに好きで、どんなに深く思ってるか伝わる?」

 クラウドの急な取り乱し方に、セフィロスは何が起きたのか理解が出来ずにいた。
 引き金になったのは、自分の言葉だろうということはわかるが、どうして取り乱すことになったのか、まではわからずにいた。

「俺、セフィロスみたいに流暢に言葉は出てこないし、文才もないから、あのメッセージカードみたいに、想いの深さを文章になんて出来ない! だから、俺のこの想いなんて伝わらないんだ!」
「お前、まだ、あのカードにこだわってるのか?」
「イタズラのふりした、本当の気持ちかも知れないじゃないか! この人、本当にセフィロスのこと好きなんだな、って思った……」

 クラウドは軽く頭を振ると、ごめん、と頭を下げた。

「何か、俺、おかしいな。頭、冷やしてくる……」
「待て、クラウド!」
「嫌だ!」

 大きく振り払おうとしたクラウドの腕を掴みなおして、セフィロスは自分の腕の中にクラウドを抱き寄せた。

「お前は全くわかってないな」
「……ちゃんとわかってるよ。セフィロスの胸には俺の言葉なんて届いてないんだろ!」
「だから、わかってないんだ、お前は」

 セフィロスはクラウドの手を握ると、自分の胸に押し当てた。
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