想いの深さ (13)
想いの深さ

 いつもの目覚めの感覚と違って、セフィロスは飛び起きた。
 自分が目覚めたときには腕の中にクラウドがいるのが普通で、昨晩も抱き合って眠ったはずなのに、クラウドの姿はどこにもなかった。
 クラウドが起きたり動いたりした時点で、間違いなく目が覚めるのに、今日に限って、セフィロスはその気配に気づかなかったのだ。
 ベッドから降りて、リビングへ向かう。
 ソファーに座っていたクラウドの姿を見つけて、セフィロスは安堵の息を漏らした。

「こんなに朝早くにどうした?」

 セフィロスが先ほど時計を確認したときは、朝の6時過ぎだった。
 そんなに大きい声を上げたわけでもないのに、クラウドは大きく肩を揺らして、お、お、お、おはよう、と挨拶さえままならない。
 セフィロスは不思議に思いながら、クラウドの横に腰を下ろした。
 テーブルには昨日渡したチョコレートの箱が置かれていた。蓋は開けられていて、一つ一つ飾られたチョコレートが並んでいる。

「ご、ごめん、一回目が覚めたら眠れなくなって……」
「それを謝る必要はない。もっと寝かせてやりたかったぐらいだが?」

 朝まで寝かせてやらないつもりでいたが、クラウドは途中で意識を手放したため、セフィロスはそのまま寝かせてやったが、その時点から考えても3時間は経っていないはずだ。

「……だって……」
「だって?」

 いや、うん、平気、とクラウドは言葉を濁して、一人で頷いている。

「だって、の後は聞かせてくれないのか?」

 クラウドの肩を抱き寄せて囁くと、クラウドはうわ、だめ、だめ、とセフィロスの身体を押し返した。

「……クラウド?」
「ご、ごめん、ドキドキするから!」
「はぁ?」

 セフィロスは思わず気の抜けたような声を出してしまった。

「……さっき、セフィロスの寝顔を見てから、ドキドキしっぱなしだから……」

 顔を真っ赤にして、そっぽを向いているクラウドが可愛くて、セフィロスはくしゃっと頭を撫でた。
 自分自身の寝顔がどのようなものかはわからないが、クラウドをドキドキさせることができるというのは嬉しいことだった。

「で、このチョコレートは?」
「ちょっと、落ち着こうと思って、食べようかと……」
「一つも減ってないようだが……?」

 箱の中は10個ほどに仕切られていたのだが、どのエリアにもチョコレートは収まっている。

「もったいなくなってきて…」
「限定物らしいからな」
「違うよ」

 クラウドはセフィロスの腕を掴んできた。顔をさらに赤くしている。

「違う?」
「……セフィロスからもらったものだから……」
「クラウド、間違ってる」

 確かにセフィロスが渡したものではあるが、それはクラウドのために買ってきたものであり、買ってきたのは食べてほしかったからだ。

「お前が食べてくれないと意味がない」
「で、でも、せっかくセフィロスが買ってきてくれたものだから」
「お前が食べられないなら、子供たちにやるぞ」
「だめ!」

 クラウドはテーブルの箱をすばやく抱え込んだ。まるでおもちゃを取り上げられそうになっている子供のようだ。
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