想いの深さ (10)
想いの深さ

「セフィロス……?」
「お前の言葉しか、この胸をえぐることはできないんだぞ。クラウドの言葉だけがすさまじい威力を持って、ここに突き刺さってくるんだ」

 他の誰かではだめなのだ。
 クラウドが発する言葉だけが、自分を喜ばせることも、どん底に突き落とすことも、狂わせることも、出来てしまうのだ。
 そんな力を持っているはずのクラウドは、思い切り首を横に振る。

「嘘だ。俺は綺麗な文章で自分の気持ちを述べることはできないから、『好きだ』とか、『欲しい』とか、短い言葉でしか言えないのに。そんなたった一言が、セフィロスに届いてるなんて思えないよ」
「もちろん、それを図解することも出来ないし、証明する術など持たない。だが、真実だ。その証拠にさっきの『好きだ』の一言で、本当は参ってるんだが?」

 セフィロスが目を合わせて軽く笑うと、クラウドはふいっと顔を背けた。

「だ、だったら、なんで、焦らしたりするんだよ! そんなことするから、俺、伝わってるのか不安になって……」
「聞きたかったから」
「は?」
「でないと、俺ばっかり欲しがって、がっついてるようだろ……って、こら、クラウド」

 クラウドはセフィロスの頬を指先で摘むと、引っ張ってきた。
 照れ隠しなのか、怒ってるのかこの動作の意図はわからなかった。

「あ、あのさー、欲しくなかったら、俺からキスするわけないじゃないか!」
「それでも、聞きたいときもあるさ。俺が不安になる」

 自分だけがとめどなく、底なし沼に落ちていくように求め続けているのではないか、そんな自分をクラウドはどう思っているのか。
 セフィロスの心の底には消せない不安が溜まっていた。

「……その不安は俺の言葉だったら、今一瞬だけでも消すことはできるってことだよな?」
「クラウド?」
「この俺の言葉が誰にも負けないほどの威力を発揮できるなら、俺だけが消せるんだろ? とは言ってもその不安を作ってるのはこの俺なんだけどさ」

 クラウドは腕を伸ばして、セフィロスの首に絡み付いてきた。その腰を引き寄せて、耳元で囁く。

「そうだな、だから、聞かせてくれ」

 ふぅ…っ、と甘い吐息を漏らした後、クラウドはセフィロス…、とねだるように名前を呟く。
 その声だけでセフィロスは身体の奥が熱くなるのを感じた。

「……俺をぐちゃぐちゃにして……、セフィロスを感じられるなら、どうなってもいい……」
「クラウド!」
「え?」

 いきなり名前を呼ばれたことに驚いたのかクラウドは大きく肩を揺らした。その肩を掴んで、セフィロスは貪りつくようにクラウドの唇を塞いだ。
 クラウドの唇を割って、舌を滑り込ませる。誘うようなクラウドの舌の動きを追ってセフィロスはクラウドの口の中を探る。

「…やぁ…っ、もう……、息が……」

 一度離した唇から漏れてきた掠れたような小さな声を吸い取るように、再度唇を重ねる。さらに口付けを深くしていけば、あふれる唾液がくちゅくちゅと音を立てる。

「……んん……っ」

 セフィロスの袖を掴んでいたクラウドの指先から力が抜けたと同時に、セフィロスは唇を解放した。

「お前、全部わかってるじゃないか」
「…な…何が……?」

 半ば蕩けたような表情で見上げるクラウドをぎゅうっと抱きしめる。

「俺が喜ぶことも、何を言えば、この俺の胸をえぐることができるのか、も」
「え、でも、単に俺の本心…なだけ……で……、あれ?」
「ありがとう、クラウド。最高に嬉しい」
「え? あの、お礼、言われても……」

 クラウド自身は自分の威力を全然理解していないらしい。セフィロスとしては自分の不安を一瞬で消し去ってくれたことにお礼を言ったわけだが、クラウドの方はその自覚はないようだ。
 戸惑い気味のクラウドの頭を撫でると、セフィロスはクラウドの膝をすくって横抱きした。

「うわぁ! 何するんだよ」
「場所移動しなくていいのか? ここでやっても一向に俺は構わんが?」

 セフィロスがにやりと口元で笑うと、クラウドは一瞬で頬を真っ赤に染めた。あれだけ艶っぽく誘っておいて、こんなことで照れてしまうなんて、可愛い、としか表現しようがないな、とセフィロスは思わず苦笑してしまう。

「何がおかしいんだよ!」
「いや。では、どこがお望みだ?」

 クラウドは少しの間天井を見つめていたが、セフィロスの肩に顔を埋めた。

「黙っていたらわからないんだが?」
「……ホントはここで今すぐ、でもいい……」
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