想いの深さ (7)
想いの深さ

「仕方ない」

 一人呟くとセフィロスはソファーから立ち上がって、クラウドが閉じ籠った部屋の扉の前に移動した。

「クラウド」

 呼んでみたが返事はなかった。

「悪いが、ザックスとの約束の時間だ。子供達を連れてきてもらうことになっているから、連絡するぞ。子供たちが来るまでには出てこいよ」

 その瞬間、扉が開いて、クラウドが飛び出してきた。

「……クラウド?」
「ごめんなさい!」
「何が?」

 深く頭を下げていたクラウドが、頭を上げる。目を丸くして、思いもよらなかった言葉を理解しきれずにいるようだった。

「何がって、そりゃ、俺が勝手に誤解して……」
「ああ。別に俺は怒ってない。元はと言えば、あの奥さんがいたずらしたのが悪い。犬を人の振りさせたんだからな」
「でも、俺はセフィロスのこと疑ったし……」
「誤解が溶けたならいい。子供たちを呼ぶぞ?」
「ちょ、ちょっと待って」

 クラウドは慌てたようにセフィロスの腕を掴んだ。

「怒っていいよ。俺、ヒドいことしたし、ヒドい言葉ぶつけたし……、怒ってくれないと、どうしたらいいかわからない」
「俺もどうしたらいいのかわからない。怒ってないのに怒れないだろ?」

 セフィロスが軽く笑いかけると、クラウドは視線をそらした。下を向いたまま、あのさ……、と呟く。

「何だ?」
「怒ってないならいいんだ。だけど、怒ってないのは呆れてるとかじゃないよな? 怒るを通り越して呆れてて……」

 クラウドはそこで言葉を切った。

「呆れる?」
「そう。俺のこと嫌いになった?」

 ふと顔を上げたクラウドと視線がぶつかる。今にも泣き出しそうな表情のクラウドにセフィロスは胸が痛んだ。
 自分宛に届いていたチョコレート類を全部開けて確認するという作業を、チョコレート嫌いだからと言ってクラウドに任せてしまっていたのが間違いだった。
 今まではこんないたずらもなかったし、自分宛のチョコレートにメッセージがついてくることなどは皆無だったのだ。

「クラウド」

 セフィロスはクラウドの身体を引き寄せると、唇を塞いだ。
 すぐさま舌を差し入れて、クラウドの舌を絡め取る。クラウドのほうもゆっくりと舌を絡めてきて、お互いの口付けは深くなる。それと同時にセフィロスの腕を掴むクラウドの力がだんだん緩んでいく。
 口の中を嬲り、舌を強く吸い上げてやると、クラウドはセフィロスを掴んでいた手を離した。
 膝から崩れ落ちそうになったクラウドを抱えなおす。
 クラウドはセフィロスの肩に頭を埋めたまま、乱れた呼吸を整えようとしていた。

「俺は怒ってもいないし、呆れてもいない。もちろん、クラウドを嫌いになどなるわけもない」

 ぎゅーっとセフィロスの身体に抱きついて、クラウドはようやく聞こえるほどの小さい声で、ありがと、と言った。

「子供たちを呼んでいいな?」

 頭をこくん、と縦に振るクラウドを強く抱きしめると、セフィロスは携帯電話を開いた。
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