想いの深さ (6)
想いの深さ

 クラウドは不快な表情を作ると、食べたのか、と尋ねてきた。

「食えないのは知ってるだろうが」
「俺も食べない。セフィロスの浮気相手が送ってきたものなんか、食べられません。浮気するのは勝手だけど、浮気相手にこんなチョコレート送られてるようじゃ駄目だな」

 クラウドはやれやれ、といった感じで肩をすくめている。
 セフィロスはグラスの中身を一気に飲み干すと、大きく息を吐き出した。

「聞き捨てならんことがあったが、それはまた後にしようか。確かにメッセージの内容を読んだクラウドとしては穏やかじゃないだろうな」
「べ、別に! 熱い抱擁が忘れられないらしいね!」
「まあ、あれを抱擁というかどうかはわからん」
「は?」
「熱い口づけについても、あれを口づけというのかどうか……。その後ベロベロ舐められたし」
「舐められた!?」

 クラウドが声を荒げて、クッションをセフィロスに投げつける。

「最悪だな!」

 顔に当たるのを寸前で受け止めて、セフィロスは苦笑した。

「勘違いだ。仕方ないな、謎解きするとしよう」
「謎解き?」
「差出人の住所は覚えてるか?」

 クラウドは確か、と視線を天井に移して、記憶から引っ張り出したらしい住所を諳じた。

「そうだ。その住所に聞き覚えは?」

 セフィロスが尋ねるとクラウドは首を横に振った。

「……そうか。心当たりがないのならしょうがないな。その住所はうちの隣の隣だ」
「え?」
「途中までは一緒だろう。デリバリーサービスやってて、それに気付かんようじゃ、仕事に差し障るんじゃないか?」
「う、うるさいな! 隣の隣ってことはわかったよ。確かにあの住所はそうだ。だけど!」
「『キャロル』なんて名前の奴はいない?」

 セフィロスは空になったグラスに洋酒を注いだ。
 部屋にふわりと漂った甘い香りに、クラウドはこほっ、と一つ咳をした。
 酒に弱いから少しの香りでも、きつく感じるのだろう。

「そうだよ、そんな名前の人はいないはずだ!」
「クラウドの言う通りだ」
「だったらおかしいじゃないか」
「そういう名前の人はいないんだ」

 セフィロスは人を強調して言った。
 人……、とクラウドは呟いて押し黙ったが、何かに弾かれたように急に声を上げた。

「だから、セフィロスは奴って言ってたのか!?」

 セフィロスがまぁなと答えるとクラウドは、うわーっと叫んで近くにあった扉を開いて、中に閉じ籠った。

「クラウド?」
「最低ー! 今から穴掘ります!」

 ドアノブを回してみたが、中から鍵をかけているらしく、扉は開かなかった。

「とりあえず開けろ」
「まさか、人じゃないとは思わなかった!」
「だから、抱擁とも言えないし、口づけとも言えない。顔は舐められるしな……。とにかく出てこい」
「無理! 無理です!」

 絶対出ないから、とクラウドは言い切り、セフィロスが呼び掛けても何も答えなかった。
 セフィロスは好きにしろ、と扉に投げつけて、ソファーに深く座った。
 携帯電話の時計を確認する。ザックスとの約束の時間まではあと5分ほどだった。
BACK