想いの深さ (4)
想いの深さ

「では、どういうわけだ?」
「『社長』と呼ばれ慣れてはいるがな、どうも社長ごっごしているような気になってな」
「社長なのだから、問題はないと思うが」
「子供に呼ばれると少し違うんだ、これが。社長でもないのに、子供に無理やり社長と呼ばせてるような気になってしまう。仕方ないといえば仕方ないがな。他に呼びようがないだろう」

 ルーファウスは紹興酒を一気に煽った。
 『社長』と呼ばれるのは殺伐とした社内だけにしておきたいのかもしれない。

「じゃ、『社長』は止めるね」

 クレフはそう言うと、うーん、と金魚とにらめっこを始めた。

「お兄ちゃんはお兄ちゃんがいるし、大きいお兄ちゃんもいるし……」
「大きいお兄ちゃんって誰だ?」

 ルーファウスが小声で聞いてきたので、セフィロスはザックスだ、と答えた。

「あいつ、お兄ちゃんと呼ばせてるのか」
「初めはおじさんだったんだがな。抗議された」
「おじさんのままでよかったのに。そうすれば、俺が大きいお兄ちゃんでよかったのだ」

 憮然とした表情でルーファウスは言い放ったが、セフィロスにしてみれば、どちらもおじさんだろう、と思う。
 クレフやカインから見れば、間違いなくおじさんでもおかしくはないのだ。

「白いお洋服だから、『白いお兄ちゃん』!」

 目をきらきらさせてクレフは言ったが、すぐに、でもなぁ、と首をひねっている。

「……社長のお兄ちゃん?」
「それじゃ、別人になる。お兄ちゃんはいないと伺ってる」

 カインがすぐに突っ込んだ。回鍋肉やらエビチリを黙々と食べていたので、会話は聞いていないように思えたが、ちゃんと聞いていたらしい。

「じゃあ、次までに考えておきます……」

 クレフは呟いて、またも金魚とにらめっこを始めた。

「今日のところは『社長』で我慢していただきましょう。そうそう、社長」

 カインはふと思い出したように、箸をおいた。

「何だ?」
「先日、新製品のプリンを頂きました。それについて、意見を述べさせていただいても?」
「おお、そうか。プリンを食べたか! 貴重な意見を拝聴しよう」

 ルーファウスは席を立ち上がると、カインの隣に座りなおし、二人でプリンについて喧々諤々と語り始めた。
 クレフは金魚を眺めてはむむ、と唸っている。

「どうした?」

 セフィロスが尋ねるとクレフはすごいね、と言った。

「金魚さんぽいもんね」
「そうだな、よく出来てるな。でも、冷めてしまうぞ。うさぎも食べるんだろう?」
「うん、食べるよ! 頑張って食べる!」

 そう言うと、クレフは色々料理を食べ始めた。
 カインとルーファウスはセフィロスとクレフにはお構いなしで、話し込んでいる。プリンにどれほどの思い入れがあるというのだろうか。
 セフィロスは苦笑しつつ、大皿料理に箸をつけた。
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