父の日
父の日

「でも、わかってて、止めなかったのは、クラウドだろう?」
「…怒ってる?」
「怒ってるわけじゃない。止めなかった理由が知りたい」
「…だって、俺の肩たたき券なんかいる?」

 そう言われると、確かに必要ではない。今回のようなパターンになるなら、むしろ、腰砕き券の方が大歓迎だ。
 ただ、字面を見ただけでは、普通は物理攻撃を思い浮かべるだろう。

「誤解させたのは悪かった。でも、直接的に書くのもなんか嫌だったし…」

 父の日のお祝いと、言い間違いと、クラウドの思惑とが色々混ざり合った結果、ということで俺は納得した。
 さらに強くクラウドを抱きしめて、ありがとう、と耳を嬲るように伝える。

「…セフィ…っ」

 ぴくっと揺れたクラウドの身体を解放して、俺は一旦、起き上がった。
 煙草を吸いたくなったからだが、そうだ、クラウドがベッドの下に落としたんだった。
 ベッドから降りて取りに行くしかないか。
 そう考えているのに気づいたのかどうかはわからないが、クラウドは俺の手を掴んで、引き留める。

「取るよ」

 身体を起こしたクラウドは正座をすると、ベッドの下を覗き込むようにして腕を伸ばした。よし、と言って起き上がってきたクラウドの手には煙草があった。
 ありがとう、と伸ばした俺の手の平をぺしっと叩いて、クラウドはダメ、と言う。
 そして、投げ出していた俺の両足に馬乗りになると、俺の頬に触れてきた。

「煙草味のキスも悪くはないけど…」
「…クラウドが味わえるなら煙草なんて我慢するさ」
「…我慢できる…?」
「もちろん」
「じゃ、我慢して」

 そう言うなり、クラウドは俺の唇を塞いできた。するりと滑りこんできた舌を絡め取り、お互いに舌を絡ませ合う。徐々に口付けは深くなり、唇を重ねる角度を変えては、また舌先を味わう。そんなキスをしながら、クラウドの身体を抱き寄せ、背中に指を滑らせた。

「…んん…っ」

 もう、身体のどこを触っても、多分、反応するだろう。元々、感じやすい身体ではあったけれど、このところは、さらに感じやすくなっているようだ。
 唇を離し、クラウドの胸に吸い付いたところで、おかーさーん!と高い声が聞こえてきた。

「…呼ばれたな…」
「…ここでおあずけか…」
「子供達のところに行ってやれ、これで最後ではないし」
「…ん、そうだけどな」

 クラウドは少し沈黙した後、朝ご飯作るか、とわざと自分を奮い立たせるように力強く言って、ベッドから飛び降りた。

「クラウド」
「何?」
「父の日、嬉しかった」

 軽く笑ってそう言うと、クラウドは一気に顔を赤くした。

「バ、バカ、俺の腰が砕ける!」
「夜には本当に砕いてやる」
「もう! 年々オヤジ臭くなってるぞ! 自覚しとけよ!」
「ご忠告ありがとう。お前よりは年上だからな、気をつける」
「…でも、そんなところも、好きなんだよなぁ…」

 そう聞き取れた、というぐらい小さな声でクラウドは呟いた。
 聞き直そうかと思ったところで、おかーさーん、おかーさーん、と子供達の声が聞こえた。

「はいはい、今、行くー!」

 脱ぎ捨てていたバスローブを拾い上げて、素早く羽織ると、クラウドは部屋を飛び出していった。
 お預けにされていた煙草に火を付けて、ゆっくりと吸い込む。
 何度肌を重ねても、飽きることもないし、それどころか愛しさが増していく。
 独占欲が強いのも、支配欲が強いのも、わかっている。
 その欲をさらけ出していても、クラウドは嫌がることもしないし、むしろ受け止めようとしてくれている。
 それが俺には嬉しかった。
 クラウドでなければならない理由でもある。
 でも、クラウドは子供達の母親である以上、子供達のものであらなければならないだろうし、それでいて、俺が子供のように俺だけのものにしようとしているから、辛い思いをしているかも知れない。

「…早かった…か…」

 あのとき、あのマテリアに触れさせなければよかったか。
 いや、遅かれ早かれ、俺は実行していただろうし、別に後悔をしているわけではない。
 よかったんだ、これで。

「おとーさーん、朝ごはんだってー」

 子供達に呼ばれる朝も、悪くはないし、むしろ楽しいぐらいだ。

「わかった、すぐ行く」

 大きめの声で返事をして、煙草をもみ消す。
 子供達がいなければ、素敵な父の日もありえなかったわけだし、考えてみれば、いいことづくめな生活を送らせて貰っている。
 子供達と、クラウドに深い感謝を心の中で述べて、こんな生活が続くように願いながら、階段を降りていった。


END
父の日にちなみまして。
いいお父さんぶりを発揮しているセフィロスを書いてみたくなったのと、
それでも、クラウドが一番なんだぞーっていうことをアピールさせてみたかったんです、はい。
簡単に言えば、幸せラブラブな二人を書きたかったということです。通常運転♪
最後までお付き合い、ありがとうございましたー!
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