ONLY YOU(10)
ONLY YOU

 社長の予感的中。
 俺は慎重に言葉を選ぶことにした。

「…会社に行ってたよ」
「…それはおぼろげながらわかっている。その後だ」

 セフィロスはさらに強く俺の腕を掴む。

「…お仕事してたんじゃないのか?」

 首を振って、俺の言葉が気に入らなかったとの意思表示だ。
 知りたいことは想像がついている。だけど、事細かに説明するわけにはいかない。

「質問を変えようか。どうして、あのホテルに泊ってたんだ?」
「…ああ、それは、セフィロスが限界だったからだよ」
「限界?」
「だったらしいよ。社長が気を遣って一番いい部屋を取ってくれたみたいだな」

 セフィロスは俺を見下ろして、黙ったままだ。
 俺の言葉が嘘か本当かなんて、わかってるはずだから、嘘つきだと言いたいところなんだろう。

「セフィロス、全てを知ってる必要はないよ」
「…どういう意味だ? 俺が知らなくていいことなのか?」
「全てを覚えておかなくてもいいと思うよ、俺はね」

 腕を掴んでいるセフィロスの手を解いてから、俺はセフィロスの頬を両手で包んだ。
 よくわからない、と言ったような表情のまま、セフィロスは俺を見つめる。

「セフィロスは普段からめいっぱい神経すり減らして、何でもやろうとするからさ、毎月倒れちゃうんだよ。もうちょっと、気楽にしたら? 忘れてもいいこともあると思う」
「無理をしているつもりはないし、何もかもを覚えていようとは思っていない…」
「そうかな? あんなにふらふらの状態で、俺へのプレゼントは覚えてただろ? ああいうものこそ真っ先に忘れていいのに」

 セフィロスは俺の手を振り払うと、今度は俺の肩を掴んできた。

「イタ…っ」
「最優先事項だ、と! クラウドのことについては何をおいても…!」

 肩を揺さぶられても、はい、そうですか、と言えないこともある。
 嬉しいけれど、俺のことを優先しすぎだ、セフィロスは。

「俺のことなんかはいいんだ! 自分を優先しろ! それに俺が覚えてれば済む話じゃないか」
「…そんなこと、できるわけないだろう? 俺よりも大事なクラウドのことなんだぞ…」

 セフィロスの真剣な眼差しに、思わず鼓動が跳ねる。
 顔が紅くなってる気がして、隠すようにセフィロスの胸に顔を埋めた。

「あ、ありがとう。嬉しいけど、無理はして欲しくない。セフィロスの記憶の一部を俺がまかなったっていいと思うよ。もちろん、セフィロスほどの記憶力はないけど、セフィロスと一緒にいる時間のことはどちらかが覚えていれば、共有できるじゃないか」
「その気持ちは嬉しい。だけど、クラウドの事はやっぱり、俺がしっかり記憶にとどめておきたい。どんな些細なことでもな。だから、それを無理をしてるとは言わないでもらいたいんだが…」
「…バカだなぁ…、ホントに…」

 嬉しすぎるんだけど、素直に喜べない。どこかで命を削ってる気がするからだ。

「悪かったな。だが、譲れない、クラウドの事はな…」

 セフィロスの手が俺の頭をゆっくりと撫でる。その心地よさに、うっとり蕩けそうになってると、セフィロスの手が止まった。

「…今回はクラウドにはぐらかされておいてやる。もう、あの日の事は聞かずにいる」
「セフィロス?」
「きっと、知らない方がいいのだろう。クラウドが知らないというのなら、知らないということでいい」

 セフィロスは俺から離れて、リビングの方へと向かっていく。その後ろを慌てて追って、呼びかけると、セフィロスはゆっくりと振り返った。別に怒っているようでもなかった。

「俺が覚えてないことはクラウドが覚えている。そのクラウドが知らないのなら、俺も知らなくて当然だろう?」
「セフィロス…」
「何か間違ってるか?」

 セフィロスはふわりと笑う。
 きっと、嫌でしょうがないに違いない。
 だけど、わざと隠そうとしてることも承知した上で、飲み込んでくれたんだ。
 もう、やさしすぎ!

「…大好きだ…」
「ん?」
「行くよ!」

 俺はセフィロスの腕を掴んで、階段へと連行した。寝室へと直行だ。

「クラウド、もしかして!」
「もしかしなくても! 余裕ない!」

 くいっと、腕を後ろに引っ張られて、足を止められる。

「何だよ!」
「好きだ」
「…ば…っ!」

 こんなところで、いきなり真顔で言うなよ。
 うろたえる俺の身体がいきなり宙に浮く。セフィロスの肩に担ぎ上げられていた。

「こら、降ろせって、歩けるから!」
「この方が早い。許可は得たようなものだから、俺の好きにする」
「勝手すぎるだろ! もう!」
「お気に召さないか?」

 顔が見えないのが残念すぎる。
 きっと、悪魔のような笑みを浮かべてる。
 俺が一番好きな顔で、一気にその気にさせられるんだ。

「もう、少し前まで甘えてた人とは思えないなぁ」
「甘えてる方がいいなら、いつでも甘えてみるが?」
「遠慮します。セフィロスはセフィロスらしいのが一番だ」
「では、俺らしく」

 ベッドに降ろされたかと思うと、抵抗する暇もなく組み敷かれ、唇を塞がれる。

「…何があっても…」
「ん…?」

 キスの合間にセフィロスが呟き出す。

「…クラウドに関することは忘れない…」

 まだ、言ってる。
 セフィロスの記憶を俺のことが埋め尽くしているっていうのも嬉しいことだと思うけど、それだけじゃなぁ、って思う。
 俺のことはほんのちょっとでもいい。
 それよりはあんまりがっくりと倒れないで、いつものセフィロスでいてくれた方が嬉しいんだけど。

「…でも、無理はしない。なるべく、酷い状態にはなりたくない…」
「そうしてくれ…、でないと、こうやって抱き合えない日が続いちゃうからな」

 くすっと小さくセフィロスは笑ったかと思うと、荒々しく口づけを深くしていき、俺たちは快楽の海へと沈んでいった。


END
お付き合いありがとうございました!
またしても、時期を外したネタになっちゃいましたが、お許し下さいませ。
ラブラブ大好きなので、いちゃいちゃしてもらいました♪
ラブラブ、いちゃいちゃ大好物なので、今後もそういう話になるかと思います。

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