ONLY YOU(5)
ONLY YOU

「クラウド?」
「ごめん、ごめん」

 俺は部屋の中に駆け込むと、扉を閉めた。
 部屋の中は思ってた以上に広かった。歩き回って確認したところ、リビングが2つ、ベッドルームも2つある。バルコニーも広いし、浴室とシャワールームが存在している。二人で使うには広すぎるだろう。

「なー、セフィロスー」

 入り口に近いリビングに戻ってきて、問いかけても返事がない。ベッドルームの方に移動すると、セフィロスがベッドの上でうつぶせになっていた。
 ベッドの端にゆっくり腰を下ろして、セフィロスの頭を撫でる。

「セフィロスー」
「…ん…」
「寝るんだったら、着替えてから寝た方がいいぞ」

 セフィロスは無言で起き上がると、ベッドから降りた。様子を伺っていると、そのまま服を脱ぎ始めた。
 俺は慌てて、セフィロスの腕を掴んだ。

「わー、着替え持ってくるから、ちょっと待って」
「…いらない…」
「いらないって、裸で寝るつもりか?」
「…パンツ、履いてる…」

 それはそうですが。パンツだけだったら、それはもう裸でもいいと思うんだよ、俺はね。そこまで厳密に言う必要はないと思うんだ。

「…パンツだけで寒くないの…?」
「…クラウドがいる」
「え? 俺? どういうこと…」

 セフィロスは本当にパンツだけになると、今度は仰向けに横になった。その後俺に向かって手招きをしている。
 一緒に寝ろってことだとは思う。間違いないだろう。まあ、セフィロスが寝るまで横にいて、眠ってしまったら、他のことすればいいか。
 セフィロスの隣に寝転ぶと、すぐに抱きついてこられた。抱きしめられたという感じではない。甘えてきてるんだろう。

「…クラウドは…、あったかいな…」
「そうかな。じゃあ、ぎゅっとしておいてやるから、このまま寝るといいよ」
「んー……」

 セフィロスはそのまま何も言わなくなった。セフィロスの静かな寝息が耳元で聞こえる。
 さらさらの銀髪に指を滑らせるように頭を撫でながら、セフィロスの鼓動を密着した胸で感じ取る。
 みんなの憧れの存在で、かつては英雄と呼ばれたこの人に俺だけがこうやって触れていられるなんて、なんて贅沢なんだろう。
 こんな思いができるのは、セフィロスに俺の想いが伝わったからだと思いたい。

「セフィロス、俺が凄い好きなの、分かってる?」

 セフィロスの身体を強く抱いて、言葉がセフィロスの全身に染み渡るようにゆっくりと呟いた。



 次の日の朝、つまり15日。俺たちの間ではグダグダデーと呼ぶセフィロスのスイッチが切れる日だ。
 昨夜、セフィロスが眠ってから、俺はシャワーを浴びたり、色々済ませてから、またセフィロスの隣に並んで眠った。俺が目を覚ましても、セフィロスは身動き一つしなかった。これは、今日は起きないかもしれないな。14日までの疲れ具合で15日の様子が決まるのだけれど、昨日は結構無理してたから、余計に今日に負担がかかった可能性はある。
 俺はセフィロスをそっとしておいたまま、一人でリビングの方に移動した。
 時間は朝の10時を回っていたので、俺もかなり眠ってしまっていたらしい。

「朝ご飯…、昼ご飯と兼用で、ルームサービスにしよう。セフィロス放って、出て行けないし」

 それからは一人でテレビ見たり、お昼ご飯食べたりとボンヤリ過ごした。
 セフィロスが一日中傍にいるなんて機会はそうそうないのに、何もできないなんてって残念に思ったりするけど、こんな時でないとセフィロスがゆっくり休めないのも事実だから、そっとしておいてあげた方がいいだろう。
 夕食の時間になってもセフィロスは起きては来なかった。予想通りではあるけど、少し心配になった俺は、セフィロスの様子を見に行った。
 ベッドの上でセフィロスは仰向きに寝ていた。
 揺らさないようにそっとベッドに腰を下ろして、セフィロスの額にかかる前髪を払ってあげる。
 まじまじと寝顔を見ることが出来るのも、こんな時だけだから、貴重な時間だ。驚くほど長い睫毛、誰よりも綺麗な鼻梁、少しアヒルっぽい口元とか全てのパーツがこの美形な顔を作り出しているんだ。うらやましい、ホントに。

「…クラウドー…」

 急に呼ばれたので、俺は慌てて手をひっこめた。

「何…?」

 セフィロスの様子はさっきと変わりない。目を覚ました様子も全くない。確かに呼ばれた気がするのに…。

「…クラウドー、ごはんー……」

 今度は口はそう動いた。でも、目を開けたりはしていない。
 そうか、寝言か。セフィロスが寝言か。何か可愛いぞ。もう一回言わないかな。
 俺はふと思いついて、携帯を取りに行こうとベッドから立ち上がった。一歩踏み出したと同時に腕を掴まれて、その場から動けなくなった。

「…クラウド…?」

 セフィロスは目を覚ましてしまったらしい。寝言を言うところをムービーに押さえておこうと思った俺のたくらみはあっさりダメになってしまった。

「…起きたのか?」
「今はいつで、何時なんだ?」
「…15日。夜の7時は過ぎてる」

 セフィロスは体を起こしてから、大きく息を吐き出した。肩を落として、頭を軽く振っている。

「起き上がって大丈夫か?」
「…悪かったな」
「何が? 俺は大丈夫だよ。お腹空いてないか? あ、水を持ってくるよ」
「いや、自分で行くからいい」

 セフィロスは下着だけでリビングの方へと向かった。その後を追うと、自分でパジャマのズボンを探して、履いてくれた。そのままセフィロスは冷蔵庫を開けて、缶ビールを取り出すと、一気に飲み干した。すぐさまもう一本取り出して、喉に流し込んでいる。相変わらずの飲みっぷりだ。まあ、ビールなんて水みたいなものだろう。

「…クラウド、飯はどうした?」
「まだ、食べてない。ルームサービス頼む?」
「そうか、じゃあ、後だな」
「後?」

 後って何の後なんだろう。シャワーでも浴びたいのかな。

「そう、色々の後」
「色々って何だよ」
「色々」

 セフィロスは片方の口元を持ち上げると、軽々と俺の身体を肩に抱え上げた。

「ちょ、バカ、何すんだよ!」
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