魅惑のAngel(9)
魅惑のAngel

「当たり前だろ。クラウド前にしてしたくないわけがない」
「…それだけじゃない。16日だから、フル充電出来てるんだろ?」
「では、付き合ってもらおうか」
「付き合うんじゃない。したいんだ、俺も」
「クラウドのお望みのままに…」

 俺たちはどちらからともなく唇を重ねて、そのまま夜が更け、窓から光が差し込んできても、ただ貪り合い続けた。



 目覚まし時計が容赦なく朝を告げる前に、スイッチを切って、横でぐっすり眠っているクラウドを起こさないようにして、ベッドから降りた。
 つい先ほどまで抱き合っていたのだから、目覚ましが鳴ったところでそう簡単には起き上がれないだろう。
 付き合わせた俺が悪いと言われれば、素直に謝るつもりではいる。
 簡単に身支度を整えて、玄関を出ようとしたところで、バタバタバタっと足音が近づいてきた。

「クラウド…?」
「起こしてくれてもいいだろ!」
「わざと起こさなかったんだ。もう一回寝てこい」

 クラウドはどうにも機嫌が悪いらしい。
 俺のことを睨みつけたままだ。にらめっこをし続けるわけにもいかない。

「俺のことは気にしなくていいから、ちゃんと寝てろ」
「わかった…」

 そう言った途端、クラウドは俺の腕を掴んで、一歩踏み出そうとした俺の動きを封じた。

「…どうした?」
「…いってらっしゃい、ぐらいは言わせろ…」

 それだけのためにわざわざ起き上がって、見送りに来たとか?
 思わぬ言葉をもらって、嬉しさに顔が緩む。

「何がおかしいんだよ?」
「…いや…。おかしくはないさ」

 掴まれている腕を勢いよく引き、バランスを崩して倒れてきたクラウドを抱き止める。
 頭をあやすようにぽんぽんと叩いて、行ってきます、と告げると、クラウドは俺の背中に手を回して、ぎゅっとコートを掴んできた。

「今日は会議だけだろうから、早く帰ってくる」
「…ん…」

 小さく頷いて俺から離れたクラウドは、いってらっしゃい、とまばゆい笑顔を見せてくれた。

「行ってくる」

 軽く手を上げてから、俺は玄関のドアを開いた。



 その日は一日会議に付き合わされ、別に見なくて済むものなら、見ないでいたい社長の顔を長い間見ることになってしまった。
 ぐったりして帰った俺を待っていたのは、ソファーでごろんと横になっていたクラウドだった。
 テーブルの上にはバレンタインに俺がもらって、クラウドにやったチョコレートの箱が置かれていた。
 ここで横になっているクラウドは酔っ払った結果だということだろう。
 生唾を飲んで、クラウドに声をかけてみる。
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