魅惑のAngel(6)
魅惑のAngel

「…何の話…?」

 やっぱり、覚えてないか。

「俺に説教してた。いつでもその気があるわけじゃないぞ、ってな」
「……俺が…?」
「そう、クラウドが」

 怪訝な顔をして、クラウドは俺を見つめている。
 俺が嘘をついてるとでも思っているのだろうか。

「…俺がセフィロスにねぇ…、説教したいようなことなんて、あったかなぁ…」

 俺の方が怪訝な顔をしたいところだ。
 あの、酔っ払った勢いでの発言は何だったんだ。
 クラウドは知らず知らずのうちに俺に言いたいことを全部ためていたということなのか。
 それが、酔っ払って爆発したとでも?

「クラウドは酒を飲まない方がいいということがよくわかった」
「ん?」
「覚えてないだろ? 夕べのことを」

 クラウドは記憶を辿っているのか、俺から視線をそらして、天井を見つめている。
 だんだん首が傾いていくのは、覚えていない証拠だろう。

「……えーっと、チョコレート食べた…」
「その後は?」

 クラウドはいきなり両手を合わせて、ぎゅっと目をつぶった。

「セフィロス、ごめん!」
「謝って欲しいわけではない。別に酔っ払っていたこととか、覚えていないことは気にしてない。家だったから問題ないしな」
「…外では飲まないようにする…」
「そうだな、そうしてくれてると、俺も安心だ」

 俺は軽くクラウドの頭を撫でてやった。クラウドは少し肩をすくめてから、ほっとしたように顔を緩ませる。

「…変なこと言ってた?」
「いや…、まあ、たいしたことじゃないからな。俺が仕掛けにくくなったぐらいで…」
「…ああ、それで嫌なら抵抗しろって話になったのか…」

 クラウドの腕が伸びてきて、俺の首に絡みついてきた。クラウドの表情は一変して、目を見張るほど、色っぽい。

「…酔っ払ってたから、ちゃんと言えてないな。その気がないわけじゃない。セフィロスがいきなりすぎるから、心の準備ができないだけだよ…」
「じゃあ、心の準備が出来るように誘えってことか?」
「…できれば」
「俺はそういうまどろっこしいことが苦手なんだがな」

 身体をかがめて、クラウドの首筋に舌を這わせる。
 あ、っと小さく息を漏らしてから、クラウドは、もう、と俺の身体を抱きしめる。

「…たまには言ってくれてもいいだろ?」

 クラウドの声が寂しいと言っているようだったので、俺はゆっくりと身体を起こしてから、クラウドの顎を掴んだ。
 視線をしっかりと合わせて、しばらく見つめる。

「…な、何だよ」
「言えって言うから、言ってやろうかと思ってな」
「ん?」
「クラウドが欲しい」
「………な…っ!」

 クラウドは何度も瞬きを繰り返したかと思うと、顔を背けようとした。俺が顎を掴んでいるせいで、それは叶わなかったが、目線は俺から外してしまった。

「クラウド…」
「そ、そんな顔で言われたら、恥ずかしいだろっ!」
「言えって言ったのはクラウドのほうだろう? それに俺の本心だ。気に入らないなら、言葉を変えようか?」
「も、もういいよ! 息が止まっちゃう!」

 俺の腕を掴んで、クラウドは首を横に振る。さっき、ちらりと見せた色っぽさはなくなってしまっていて、顔を真っ赤にして、目を潤ませている可愛らしいクラウドが現れた。
 めまぐるしく変わる表情に、困惑することもあるけれど、それがクラウドの良さだし、飽きない。
 可愛いクラウドも見ていたいところだが、今は可愛いクラウドよりも見たいクラウドがある。

「そうか。じゃあ、もう、言葉はいらないな?」

 貪りつくように唇を塞ぎ、歯列を割って、舌を差し入れる。
 すぐにクラウドの舌が俺の舌を絡め取る。お互いに舌を味わうように何度も舌を絡めながら、口づけを深くしていく。

「…ん…っ」

 俺の腕を掴むクラウドの指先に力がこもる。唇をそっと離すと、俺たちの間を白い糸が繋いでいた。
 その糸を切るように口元を手の甲で拭う。
 クラウドはとろんとした顔で俺を見上げていた。
 この顔も写真に納めておきたいところだが、今、見たい顔ではない。
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