魅惑のAngel(2)
魅惑のAngel

「まあな。残すともったいないから食べるが…」
「無理しなくていいよ…」
「もし、太ったとしても怒るなよ?」
「…それ、難しい注文だな…」

 クラウドは自分の料理を腕を組んで眺めている。予定より多くできてしまったのか、何かが気に入らないのか。
 俺にはわからないから、とりあえず、いただいてしまうことにした。

「では、いただきます」

 前菜からスタートして、順番に平らげていく。ワインを飲みながらだから、クラウドよりは食べるスピードは遅い。
 それに、クラウドの料理はがっついてはもったいないほどの旨さだ。そこらへんのレストランにもひけは取らないだろう。

「口に合わない?」
「いや。ゆっくり食べてるだけだから、気にしなくていい。それより、配達はどうだったんだ?」
「ん? ああ、滞りなく終わったよ。あ、あと一カ所だけ残ってるけどね」
「…残ってる? だったら、行く必要があるんじゃないのか?」
「行くよ、後で」

 後で? この時間からか?
 俺たちは今、夕食を取っているが、時計の針は22時を回っている。

「…気をつけて行けよ」
「気をつける必要はないよ。すぐだから」

 クラウドはそう言うと、食事に集中したいのか、黙々と魚を食べ始めた。
 それ以上、追求することもできず、惚れ惚れするような食べっぷりのクラウドを眺めつつ、食事を続けた。
 ふと視線を感じて、顔を上げると、クラウドが俺をじっと見つめていた。自分の分は食べ終わってしまったらしい。

「どうした?」
「い、いや、何でもない…」

 ぷいっとよそを向いて、頬杖をついたかと思うと、大きく息を吐き出している。
 俺に何か言いたいようだが、はっきりとは言ってこない。俺が尋ねたら、きっと何も言わないだろうから、言葉をかけずに、様子を伺うことにした。
 俺が全て食べ終わるまでの間、クラウドは俺の顔を見ては、はぁ、と溜め息をつくので、なんだか、俺が悪いことをした気分になってしまった。

「ごちそうさまでした」

 空っぽになった皿を重ねて運ぼうとすると、クラウドに待った、と制止された。

「後片付けは俺がするから。セフィロスはお風呂入ってきていいよ」
「…いや、これぐらいは…」
「いいって。そろそろ辛いんだろ? 俺に付き合ってたら倒れちゃうよ?」

 15日が近いから、心配してくれているのだろう。本当に辛い場合はもう倒れている。今月はいつもよりは楽に過ごせているから心配などは無用だ。お正月休みをぶんどったかいがあったな。

「心配しなくていい。今日は調子がいいんだ。だが、お言葉に甘えておくとしよう」

 ここでクラウドの好意を無にすると、後でまた大変なことになる。

「うん、そうして。あ、でも、お風呂から出たら、リビングでいてくれよ」
「リビング?」
「すぐ終わるから」
「…よくわからないが、そうしよう」

 クラウドの申し出を承諾すると、俺はそのままバスルームへと向かった。
 ゆったり湯船につかってると寝てしまいそうだったので、なるべく手早く済ませ、風呂から出て、リビングへと向かった。
 リビングのソファーにはクラウドがすでに座っていた。

「俺の方が早かったみたい」
「後片付け、お疲れ様」

 クラウドの隣、つまり、俺の定位置に腰を下ろしてから、灰皿に手を伸ばすと、その手をクラウドに掴まれた。

「何だ?」
「渡したい物がある」
「渡したい物?」
「そう。でも、多分、いらないって言うと思う…」
「クラウドがくれるものか?」
「そうだけど?」

 クラウドは俺の言葉に首を傾げて、不思議そうな顔をしている。
 渡したいというだけでは、クラウド本人からのものなのか、誰かからの預かり物なのか、わからないから聞いただけなんだが、クラウドはなんでそんなこと聞くんだ、と思ったのだろう。

「だったら、何をもらっても嬉しい。だから、気にせずに見せてくれ」
「ん、でも、いらないと思うよ」
「では聞くが、クラウドは俺がいらないって言うものをわざわざ買ってきたのか?」
「そういうことじゃないよ!」
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