魅惑のAngel(5)
魅惑のAngel

「…おやつ……」

 おやつって確か甘い物とかお菓子だな。クラウドはいつもケーキやらクッキーを食べていた。

「何か食べる?」
「…んー、いらない……」

 俺はそのまま枕に顔を埋めるようにして、眠りにつこうとした。
 しかし、不意に頭を撫でられて、俺は思わず身体を起こしてしまった。

「どうした? 眠った方がいいよ」
「…ん、わかってる…」

 俺はそのままクラウドをじっと見つめた。クラウドの方は首を傾げて、俺の表情を伺っているようだった。
「ああ、俺がいない方がいいかな…。ごめん、気づかなくて」
「い、いや、そうじゃない!」

 とっさにクラウドの腕を掴んで、その場に引き留めた。

「セフィロス?」
「…眠るまででいいから…」

 何故だかわからないが、一人になることに妙な不安がわいてきたのだ。
 頭を使うことさえ放棄したいぐらいにだるいというのに、そういう感情だけはありありと感じてしまうのが辛い。

「わかった。大丈夫、すぐ眠れるよ」

 クラウドの柔らかな笑顔に落ち着きを取り戻した俺は、もう一度目を閉じて、体力を回復しようと努めた。



 ふっと目を覚ました俺は、今の自分の状況を一瞬把握できなかった。
 身体は拘束されているのか、上手く動かない。
 目の前に広がる景色は、まるで人の肩越しから見ているように狭い。
 耳を澄ましてみると、耳元で寝息が聞こえる。
 この状況から判断すると、俺はクラウドに抱きしめられてるということか。
 眠りについたときは、クラウドはベッドの脇に立っていただけだったはずだ。
 何があって、こういうことになっているんだろう。
 聞きたいところだが、気持ちよさそうに寝ているクラウドを起こすのも忍びない。
 もう一度目を閉じて、眠ろうとしたところで、さらに強く拘束された。

「…クラウド……?」
「おはよう、セフィロス。もう、起きられる?」

 耳元で聞こえる穏やかな柔らかい声に、俺はわざと首を振った。

「そうか。じゃあ、このままもうちょっと寝てようか」

 クラウドは俺の頭をゆっくりと撫でている。

「…いつ起きた?」
「んー、結構前だな。セフィロスが起きるよりも前には起きてた」

 寝てると思ってたんだがな。寝たふりしてたのか。
 でも、なんのために、そんなことを?
 俺はクラウドの腕を振り払うように身体を起こして、クラウドの上に覆い被さった。

「…な、何だよっ、急に」
「どうして、寝たふりなんかしてた?」
「…い、意味なんてないよ」

 ふいっ、と顔を背けて、クラウドは口を一文字に結んでいる。
 少し頬が赤いのは、照れているからなんだろうか。

「…わかった、もう、聞かない」
「やけにあっさり引き下がるな?」
「無理に聞き出しても、おもしろくはないからな。それよりは…」

 クラウドの顎を指先で固定すると、無理矢理、唇を塞いでやった。
 予期せぬこと(ってこともないだろう)だったのか、慌てたように、俺の下でじたばたもがいている。それでも舌は簡単に滑り込ませられたし、クラウドの舌は奥へと誘うように蠢いている。
 違和感を覚えた俺は、舌先を強く吸ってから、唇を解放してやった。

「…もう…、いきなり、何だよ!」
「嫌ならもっと真剣に、抵抗してみたらどうだ?」
「そう、させないのは、どこの誰だよ!」
「確かに今まではそうだったかもしれないな。しかし、昨日、クラウドが言ってたじゃないか」

 クラウドは丸い目をさらに丸くして、瞬きを繰り返している。
 これは、もしかすると、もしかするな…。
BACK