魅惑のAngel(4)
魅惑のAngel

 腹立つぐらい?
 そう言われても、俺は謝りようがない。

「…まつげは多くて長すぎるし…、鼻は高いしぃ…、アヒル口は可愛すぎるっ! 人類の敵らっ!」

 人類の敵ですか。それはそれは。
 俺が自らの手でこの顔を作り出したのだとしたら、いくらでも謝るが、元々この顔でどこも弄ってはいない。
 俺からしてみれば、クラウドの可愛すぎる顔こそ、説教の対象だ。

「それにだっ!」

 クラウドは手を伸ばしてきて、俺の頬を挟むように両側から叩いてきた。そのまま固定されて、俺の視線はクラウド以外に向けられなくなる。
 半分座った目で俺を見据えてくる。当人はそのつもりだろうが、俺は睨まれてる気分にはならない。むしろ、トロンと蕩けたような顔が、抑えていた俺の劣情を呼び覚まそうとしている。

「…な、何だ…?」

 気持ちを落ち着かせるように、静かに声を吐き出した。

「…あんたの顔、エロ…過ぎる……」

 な、なんだとっ!
 今の言葉、そっくりそのまま返してやりたい!

「クラウドっ! お前なぁ」
「…んー」

 俺の頬から手が離れたかと思うと、クラウドはそのまま俺の方に倒れかかってきた。
 どうやら限界らしい。
 俺の身体にひっついてきて、まるで、ネコがすり寄ってきているようだ。

「…クラウド、おい…」
「…んー…」

 返事なのか、唸っているのか、もうわからない。
 クラウドの身体を抱えて、背中をゆっくりと叩いていると、寝息が聞こえてきた。

「…やれやれ、俺も寝るとするか…」

 クラウドを一度ソファーに寝かせてから、お姫様だっこをするように抱え上げて、寝室へと移動する。
 ベッドに降ろしてやって、幸せそうに眠るクラウドの顔を少しばかり恨めしく思いながら、眺める。
 俺よりもずっとずっとクラウドの方が美形だと思う。抱き合ってる時の顔なんて、息を呑むほどに艶っぽい。
 一度、見せてやりたいぐらいなんだが。
 目に掛かっている前髪を払ってやり、額に軽くキスを落してから、クラウドの隣に横になる。
 その瞬間、天井が回った気がした。
 俺も限界、ということか。
 目を閉じて、俺の全機能を回復させるべく、深い眠りにつくことにした。



 ふと、目を覚まして右側を見ると、クラウドの姿はなかった。
 いつもは俺の方が先に目を覚ますのに、珍しいこともあるもんだ。
 時間を確認しようと、ベッドサイドのテーブルに手を伸ばしてみると、時計があるはずの場所に時計がない。

「…夢…なのか…?」

 そういえば、枕元にいつも置いてある俺の携帯電話まで行方不明だ。

「夢かもしれないな…、うん、そうに違いない…」

 起き上がることもせずにぼんやりしていると、部屋の扉を開く音が聞こえた。
 クラウドだろうか…。夢だとしたら、ここは寝室ではないかもしれない。
 ゆっくりと身体を起こしてみると、クラウドが何か言いながら駆け寄ってきた。

「んー?」
「セフィロスは寝てていいから! 今日は絶対ゆっくり寝てなくちゃダメなんだからな!」
「…そうなのか…?」
「そうだよ! 自分でわかってないのか?」

 俺が寝ておかないといけない理由…。そんなものあったか…?

「15日はお休みだろ? 毎月のことじゃないか」
「…そうだったか…」

 とりあえず、今日は俺は休んでもいい日になっているらしい。では、もう一度寝てしまっても、問題ない、ということだな。
 もう一度寝ようと思ったが、クラウドに声をかけた。

「何?」
「今、何時だ?」
「えーっと、3時」
「3時…? 3時って…?」
「ん? 3時は3時だよ。おやつの時間」
BACK