チョコと天秤 (9)
チョコと天秤

「…んんーっ!」

 クラウドは自分の爪を噛んで、やはり、声を出そうとはしない。こうだと決めたら、なかなか譲らない。尊敬に値するほどの意思の強さだが、ここでその意思を見せつけられても、俺は少々つまらない。
 中をかき混ぜるように指を動かしても、クラウドは声は漏らさない。その代わりか、身体は大きくくねらせている。余計に指の当たる角度が変わって、苦しいだろう。
 初めに入れた指が動きやすくなったところで、指を増やし、さらに奥を責め立てる。

「ん…っ、ん、……んんーっ!」

 クラウドの弱いところに当たってるはずなのに、それでも堪えてる。仕方のない奴だな。

「クラウド、どうする? このままイクか?」
「…や…、やだ……っ!」

 ようやく口を開いたクラウドはすがるような瞳で俺を射抜く。蒼い瞳に吸い込まれるように、俺の理性がなくなっていくようだった。
 中を責め立てていた指を引き抜き、自分のズボンのフロントをくつろげて、昂ぶったものを代わりにあてがった。
 クラウドが息を呑む音が聞こえる。

「…力抜いておけよ…」

 俺はクラウドの腰を抱えて、勢いよく貫いた。

「ああっ!」
「ようやく、声を出したな…」
「だ…っ、だってぇ……!」

 声を漏らし始めたのはいいが、笑いがこみあげてしょうがなくなるほど、甘ったるい。こんな声を聞くことができるのは俺だけだとわかっている話だが、いつもいつも、優越感がこみあげてくる。
 腰を前後に動かし、クラウドの中をゆっくりと責めてやる。クラウドはもう声を抑えることをあきらめたようで、短い声を部屋に響かせるようになった。
 俺がどう動けば、クラウドがさらに激しく乱れるかはもう承知のことだから、クラウドの腰を抱え直して、さらに奥に当るように、自らの腰の動きを大きくする。

「あ…っ、ああん…、そこ……っ、……イイ…っ!」

 俺の背中に腕を回して、快感に流されないようにしているようだった。耳元では俺の名前ばかりが響く。

「…クラウド、俺はここにいるぞ」
「…あ…っ、セフィ…っ、も…っ、だ、だめぇ……っ!」

 クラウドの限界が近いのは薄々感じ取っていたが、いつもより早い。焦らすのも楽しいが、わかった、とクラウドに囁いてやった。
 それから、俺は大きく腰を引き、一気に最奥まで深く埋めた。

「ああーーっ!」

と、クラウドは一際高い声を上げて、白い液体を自分の身体に降らせた。俺の昂ぶりも強く締め付けられ、堪えられず、熱をクラウドの中に注ぎ込む。
 ふと目があったクラウドは、何だか満足そうな顔をしていた。




 クラウドの口からはずっと俺の名前が零れている。
 ソファーで抱き合った後、クラウドのお願いで、俺たちは寝室に移動し、また、深くつながっている。
 もうクラウドは何度か熱を吐き出しているが、それでもまだ離れようとしないし、煽ってくるので、奥を責め立ててやってる。

「…なぁ…、セフィ…ロス…」
「どうした?」

 俺は動きを止めて、汗で張り付いているクラウドの前髪をそっと払ってやった。

「…俺、あのワインしかあげられなかっただろ…?」
「バレンタインのことか? それなら一切気にすることはない」
「でも、やっぱり、足りてないって思う…。こうやって抱かれてると余計に…」
「俺が十分だと言ってもか?」

 クラウドは手を伸ばして、俺の頬を包んできた。

「…俺、独り占めしたいんだ…、セフィロスを。だから、セフィロスの想いよりももっと思いを返さないと、と思う…。でも、もう、渡せるものは、ないんだ…」
「クラウド、俺はもう…」
「セフィロス!」

 クラウドがいつになく強い口調で俺の言葉を遮る。今にも泣きだしそうな瞳で見つめられては、俺の方も言葉を続けられない。

「…セフィロス…、俺の全てを渡すよ。セフィロスの好きにしていい…。それなら、セフィロスは俺だけを見てくれる? 俺だけのものだと、言ってくれる?」
「何を言ってる? 俺はずっとクラウドのものじゃないか。クラウドが俺を求める限り、この先もずーっと俺はクラウドのもので、他の誰のものでもない。それに、俺はクラウドしか見てない。クラウドだけを見てるし、見続けるさ。俺が一番惚れてるのは他の誰でもない、クラウドなんだからな」
「…セフィ…ロス……」

 クラウドの目から涙が零れてる。いつもは強がってるくせに、何かの拍子にその強気の鎧が壊れてしまうらしい。そんなクラウドが俺にはとても愛おしい。
「安心しろ。バレンタインのプレゼントだけで測りはしないさ。俺はちゃんとクラウドの想いをわかってる。だから、もう、泣かなくていい」

 流れる涙を拭うようにクラウドの頬に口づけてから、艶やかに光る唇を塞ぐ。

「…んーっ!」

 クラウドの中で俺の昂ぶりの当たる角度が変わったのだろう。体をのけぞらせて、逃げようとしている。逃がすつもりのない俺はクラウドの身体をしっかり抱いて、舌を滑り込ませた。クラウドからも舌を絡めてきて、お互いに舌を味わうように深い口づけを交わす。

「…セフィ…、もっと、して…」
「大丈夫か…?」
「…大丈夫だよ。もっと、セフィロスを感じたい…」

 クラウドは力を入れて、俺の昂ぶりを締め付けてくる。まとわりつくような柔らかなクラウドの中にいて、そろそろ限界の近かった俺は、思わず呻いてしまった。

「…セフィも…気持ち…いい…?」
「当たり前だ。クラウドの中にいるんだからな。蕩けそうだ」
「…俺も…だよ…」

 今にも蕩けてしまいそうなクラウドの声に、理性のタガが外れたように、俺は大きく深く奥を何度も突いた。
 クラウドは短い声を上げっぱなしになり、ただ頭を振り続けている。俺がたまに呼びかけても、返事はない。
 締め付けがきつくなり、俺自身、動くのも辛くなってきた。そろそろ限界か。
 俺はクラウドの腰を抱え直して、先端まで昂ぶりを引き抜くと、一思いに奥まで貫いた。
 二人とも熱を爆ぜさせた後、クラウドはにっこりとほほ笑んだ。伸ばされた腕に答えるように俺はクラウドを抱きかかえる。お互いの身体は汗などで濡れそぼっていたが、気に留めることなく、余韻に浸るように抱きしめあっていた。
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