2005ハロウィン (7)
2005ハロウィン

「死神?」
「起きて…たの…?」
「いや…、唇に触られて目が覚めた」

 失敗したな…。そっとしておけばよかった。

「ごめんね、せっかく熟睡してたのに。疲れてたんだろ?」
「…んー、クラウドが心配でな」

 セフィロスが大きく伸びをする。

「俺が心配? 俺、何かした?」
「違う違う。あの後、うなされてた」

 …あの後…。ああ、目隠しされて責められてた後のことか。そう言えば、俺、途中からどうなったのか全然覚えてない。どんな姿、見られてたんだ、俺……。
 恥ずかしさが全身を駆け巡っている。きっと耳まで真っ赤だ。だけど、その件でセフィロスを責めようという気は全然起こってこない。

「うなされるぐらい辛い思いさせたかと思って、クラウドが落ち着くまで眠れなかった」
「…辛かったとは思ってないよ…。そんなこと思うはずない…」

 俺は現に最終的には逃げ出すことよりも、セフィロスの声を聞いて、セフィロスを自分の中で感じて、壊されてしまうことを望んでいたのだから。
 心配そうなセフィロスの瞳と薄く開かれた唇が何かを言いたげだった。きっと謝罪の言葉が出てくるのだろう。

「クラウド…、俺は…」
「謝罪ならいらない。セフィロスは謝らなくていいから」
「しかし…」

 セフィロスを押さえつけて、自分からセフィロスの上に馬乗りになる。昨日の感じが頭の奥のほうでよみがえってくる。

「いいんだ。あの時俺はいっそのこと、壊してくれって思ってた…」
「お前…」
「俺が俺でなくなってもいいと思えたんだ、あの時は。もっとも、途中からは覚えてないから、俺じゃなくなってたのかも知れないけどね」

 セフィロスはまだ俺を見つめている。その瞳には少しの動揺が伺える。

「まだ、悪い事をしたと思ってんの?」
「…そう…だな…、俺がこの手でやったことは、な…」
「もう!」

 俺はそのまま前に倒れこんで、セフィロスの鼻と俺の鼻がぶつかるぐらいに顔を近づけた。セフィロスの瞳には何かが宿っているに違いない。俺を魔法にかける。心の奥のほうにふと沸きあがった思いを吐き出させようとする。

「セフィロスを試して、誘ったのは俺だったの。その結果がああいうこと。だから謝らなくていいの。でも、まあ、悪いと思ってるんだったら…」

 体が反応しはじめる。体の芯からこみあげてくる思い。

「そんなに色っぽい眼で見られると、俺が困るんだが…」

 今の俺はそういう目をしているらしい。確かにもうぼんやりとしている。

「俺、昨日、セフィロスをちゃんと見てないんだよ…」
「…あの最中はいつも見てないくせに…」

 ああ、悪魔だ。瞳に宿ってるのは悪魔だったんだ。死神やドラキュラなんかではなくて。

「…見れないようにしてるんだろ」
「じゃあ、見たいだけ見ればいいさ」
「…どうせ、そうはさせてくれないくせに」
「こっちも楽しみたいだろ?」

 やばい、その言葉に反論したいのに、楽しんでほしいと思ってる自分がいる。身体をくねらせて、声を上げている恥ずかしい自分の姿を見ることで、セフィロスが満足なら、と思っている。
 自分でも怖くなるぐらいの奉仕精神だ。その見返りを俺はとてつもなく欲しているのだろう。

「…目隠ししている俺で…楽しめた…?」
「…クラウドがそういう聞き方をしてくるとはな」

 意外だ、というのを隠さず、セフィロスは口の端を持ち上げた。

「…キスのときぐらいは、見ててもいいよねぇ?」
「キスのときだけとは言わんさ」

 セフィロスが俺の頭を抱え込んで、唇を重ねてくる。
 薄く目を開けて、至近距離に悪魔の顔を隠し持つセフィロスの端正な顔を認識する。
 俺はこの悪魔から一生逃れられないのだろう。いや、逃れたくないのだろう。





「子供達に何をあげたの?」

 次の日の夜。思い出して聞いてみた。
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