2005ハロウィン (4)
2005ハロウィン

 セフィロスの目が一瞬見開かれるのを、俺は見逃さなかった。

「楽しみってそういうこと…」

 セフィロスは頭を抱えるようにうつむいた。

「ご不満?」
「…いや…。不満じゃないが…」
「…じゃあ…、何?」
「…あのなぁ…、狼男っていっても、他にやりようがあるだろ?」

 セフィロスは何だか困ったような顔をしている。セフィロスが困るようなことはどこにもないはずだ。俺としてはセフィロスが喜んでくれると思ったんだけど。

「これはお気に召さない?」

 へそが見えるか見えないかぐらいの丈のノースリーブと、下はホットパンツ。ひざまでの靴下と、アームカバー、これら全部に銀色の毛皮をつけて狼っぽく。尻尾も毛皮でつくってお尻につけて、耳はヘアバンドに耳をつけてみた。

「…昨日、その格好じゃなくてよかった……」

 セフィロスは何だかすごく安心しているようだった。安心している理由が俺にはよくわからない。

「俺がこの格好してるのがダメなの?」
「違う、違う。そうじゃない」
「じゃ、どういうことだよ」

 俺はセフィロスの隣にもう一度座って、セフィロスに詰め寄った。セフィロスは俺の腕を掴むと、自分の方に引き寄せた。俺の身体がセフィロスの腕の中に納められる。

「セフィロス…?」
「こんな格好してたら、お前、絶対さらわれてるぞ」
「ああ、それはないよ、大丈夫」
「大丈夫っていうけどな、お前は自覚がなさすぎる」

 そう言って、セフィロスは俺を抱きしめている腕に力を入れた。セフィロスからかすかに煙草の香りとお酒の香りがする。
 セフィロスは基本的に俺が外で可愛らしい格好(女っぽいという意味ではなく)をするのをあまり好まない。どうやら、俺がそういう格好をすると、俺の意思に関わらず、がたいのいい人が寄ってくる。それが心配らしい。確かに一度危ない目にあったことはあるけどさ。

「大丈夫だって。外ではこんな格好、絶対しないから。これはセフィロス用なの」
「俺用?」
「そうそう。セフィロスに見せるためだけ。だから、ちゃんと見て」

 俺はセフィロスから離れて、セフィロスの前に立ってみた。その場でくるりと一回転し、最後はモデルっぽくポーズを決める。

「どう?」
「…今すぐ襲いたい…」

 俺はほっとして笑うと、セフィロスの膝の上に、横すわりした。そのままセフィロスの首に腕を絡める。

「よかった、そう言ってもらえて…」
「こんな格好見せつけられて、その気にならない方がおかしい」

 セフィロスがするりと、俺のわき腹をなぞってくる。身体を揺らす俺を見て、セフィロスが口元で笑う。

「…ほんとに…?」
「ああ。証明しようか?」

 さらににやりと笑うセフィロスは悪魔のようだった。ああ、仮装は悪魔でもかっこよかったかも。自分で考えて背筋がぞくりとする。こんな悪魔が俺の目の前に現れたら、俺は逆らう事はできないだろう。俺はきっとこの悪魔の側に置いてくれるなら何でもするに違いない。

「…証明…って…?」
「こういうこと」

 セフィロスは言うなり、俺の唇を塞いできた。そのまま舌が滑りこんできて、俺の舌を絡め取る。しばらく俺の舌をもてあそんでいたかと思えば、さらに口の中を犯し始める。

 重ねあう唇の角度が変わるたびに、ぴちゃぴちゃと卑猥な音がしている。その音が耳に入ってくるたびに、俺の思考回路が鈍くなっていく。

「…あ…っ」

 セフィロスの唇が離れて、思わず息を漏らす。繋がっていたい思いが声になってしまったのかもしれない。

「…名残惜しそうな声が、色っぽいな…」

 セフィロスはうれしそうな顔をしながら、狼の耳を外して、俺のノースリーブを脱がせた。見られたくなくて、セフィロスに抱きつく。

「クラウド…?」
「…なんか…、恥ずかしい…」

 俺の上半身なんか、セフィロスには何度となく見られていて、今更恥ずかしがるようなことではないはずなのに、今日の俺は、恥ずかしくてたまらなかった。

「恥ずかしいのは俺が見ているということがわかるからだろう? じゃあ、それをわからないようにすればいいわけだ」

 セフィロスは俺をひざの上から下ろして、ソファーに座らせると、さっきの俺のお化けの衣装を拾い上げた。何をするのかと思ったら、その端を突然破りはじめた。

「な、何してるんだよ」

 セフィロスの手にははちまきぐらいの太さの布が2本できていた。

「…許せよ…」
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