トレモロ (7)
トレモロ

 再びシャワーの音。
 誰かが水を使ってる。
 眠い…俺は寝返りを打って近くにあった布団を引き寄せる。

「え…」

 身体には真新しいバスローブが着せられている。

「夢…」

 きゅっと蛇口を閉める音がして、バスルームの扉が開く。
 しっとりと濡れた髪のセフィロスがでてくる。
 起き上がろうとしても起き上がれない。
 外は真っ暗だ。
 俺、どれくらい寝てたんだろう。

「おはよう、クラウド」
「…お…はよぉござい…ましゅ」

 失礼だと思いながらも、身体を横たえたままの挨拶。

「良く眠れたか?」
「はぁ…」

 やっぱり夢だったのかなぁ。

「あ…あのぉ…」

 冷蔵庫を覗き込むセフィロスを眺めながら

「俺…」
(とあなたの間には何が)
「まさかはじめてじゃないよな。あれだけよがっといて」

 むか!
 はじめてだよ! セックスも男も!

「初めてです!」

 セフィロスは不思議そうな顔をして、ストレートと思われるウィスキーを一口飲んだ。

「そうか」

 何事もなかったかのような仕草でまたベットの傍らに腰をかける。
 俺はズキズキする身体を無理矢理半身だけおこした。

「せ…責任取って下さい」

 ああ、俺めっちゃ馬鹿なこといってる。
 これじゃ馬鹿な処女じゃん。処女だったけど(過去形)。
 女じゃないんだから…。
 ああ、でも、どおしたらいいんだ。俺立派なホモになっちゃったよ母さん、ティファ、ごめん。

「いいぞ」

 は?
 なんていいました? 今。
 いいって、いいって…、何が? どのように?

「専属にしてやるよ」

 ええ! それってもしかして恋人同士!?
 なんだってぇ!?
 いいのか? いいんですか俺なんかでっ!
 っていうかどういう意味なんだそれは。
 愛人なのか? セックスフレンドなのか? はたまた…。

「お…俺…」

 ちょっと感激。

「そのうち辞令が行くだろう」

 は?
 辞令?
 ソルジャーは恋人になるのも仕事なのか?
 どういう意味だ?
 え?
 恋人にしてくれるんじゃないの!?
 俺の頭の中には無数の?マークが飛んでる。

「さぁ、どうする?」
「な…、なにが…ですか?」

 時計を見る。九時すぎだ…。
「俺はもう少し飲んでから寝ようと思うが、今日帰らなければ無断外泊二日になるぞ」

 無断外泊二日!?
 それは=除隊。
 うわぁっ!

「か、帰ります、帰ります!」
「俺は有給中だからな。明日の朝も遊んでやってもいいが。なんなら今でもいいぞ」

 いやぁぁ、無理無理無理!
 俺を殺す気ですかぁ!

「か…帰りましゅ」

 のろのろと服を着替えて靴を履く。
 その様子をグラス片手にセフィロスは楽しそうに見ている。
 一応玄関で一礼して俺はエレベーターに乗り込もうとした。

「あ、ちょっと待て」

 え? 何? 引き止めてくれるんですか?
 っと、思っていたら。コートのポケットから何かをごそごそだしてきた。
 俺の前に差し出されたソレは…。

「カードキーだ。これがないと俺の部屋には入れんからな」

 うっそー、やっぱ、おれって!
 セフィロスさんのこ・い・び・と?
 もしくは愛人? みたいなぁ…。

「じゃぁな、明日からよろしく」

 ほくほくとエレベーターに乗り込む。
 1Fのボタンを押して、それからどうやって自分の部屋に帰ったか解らない。
 なんだかひどく浮かれてた、とはその後教官から聞いた。
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