トレモロ (4)
トレモロ

 バスルームから聞こえていた水の音が止んだ。
 きゅっと蛇口の締まる音。
 そのあとに少しの衣擦れの音、
 ドアが開いて白い湯気と一緒に出てきたのは、もうドコモかしこもかっこいい俺の大好きなセフィロスさん。
 濡れた銀髪がつやつやと輝いている。
 バスローブのあわせから除く胸元は以外にも白い、男らしいからだ。
 何、ドキドキしてるんだよ、俺は。もう! 寝たふり寝たふり。自分を無理矢理落ち着かせる。
 深呼吸をしてせいいっぱい寝てる人の振りをしてみる。
 薄目をそーっと開けるとセフィロスさんが冷凍庫から氷をグラスにいれてる。
 カラン、カランと無機質な音がする。
 冷蔵庫の側の棚の中には様々な形の洋酒が並べられている。
 お酒…飲むのかな?
 そのうちの一本を片手で空け、グラスに注ぐ。丁度トリプルくらいの量だ。
 お酒も強いんだセフィロスさん。
 甘い、独特の匂いが漂ってくる。どうやらグラスを片手にベットに近づいてくるらしい。
 うわー、どうしよう…。
 寝返りを打つ振りで壁の方を向いてみた。
 背中側のスプリングが大きく沈んだ。
 腰掛けたままセフィロスさんは動こうとしない。
 そのうちベットサイドのランプ以外は全部消えてしまった。
 どれくらいの間、そうしてただろう。
 俺は寝なくちゃ、と思いながらも冴えてしまった意識を持て余していた。
 カラン、と音がしてグラスを床においた音がした。どうやら飲み干したらしい。
 グラスの酒の香りとセフィロスさんの吐息、どちらも甘い匂いがする。
 不意に、肩に手がかけられころりと上を向かされる。
 必死に目を閉じてる俺は内心たぬき寝入りがばれそうでひやひやしていた。
 その一瞬後、口の中に、冷たい液体が入ってきた。
 唇が重ねられ、口移しにさっきまでセフィロスさんの飲んでいたウィスキーが流れ込む。

「ゲホッゲホ、セ… セフィロスさん?」
「寝酒だ。良く眠れるようにと思ったんだが?」

 眠れるわけないだろぉ! 今!
 今、俺、セフィロスさんとキスした!?

「キ…キキ…キスしましたね」

 何間抜けな事聞いてるんだ! 光栄じゃないか。涙が出るほど複雑な気持ち。

「ああ」

 ああって! あなた!
 さらりと言ってのけたセフィロスさんは、布団を捲り俺の横に入ってきた。
 はだけた胸元からは凄くいい匂いがする。
 ボディーソープかな? あ、でも何か香水っぽいかも?
 この状況ってもしかして…大人の時間ってかんじ? ええっ!? 真剣!?

「ううぅ」

 うなる事しか出来ない。こんなときなに言えばいいんだろう。冗談でザックスにチューされそうになったときは思いっきり殴ったけど、さすがに殴るわけにはいかないよな。っていうか別に嫌じゃないし。
 嫌じゃないって…、俺、危ない人だったのかなぁ。

「何故拒まない?」
「え…、それは」

 嬉しかったからとは言えない。いや言っていいのか?
 もじもじしてると、

「ああ、悪かったな。理由はいい」

 すっと右手が延ばされ、俺の頭をくしゃりと撫でた。
 そのまま、抱えられるように俺の腰を抱いてあろうことかセフィロスさんはもう一度俺にキスした。

「今日はもう寝ろ」

 はぁい…。

「それから。呼び捨てで良い」

 複雑だ。複雑すぎるぞ! 全く何考えてるのか読めない!
 英雄とはそういう物なのか?
 21歳は大人だ…っていうか超密着だよぉ。
 セフィロスの胸に顔を埋めて俺は悶々としてなかなか寝つけなかった。
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