トレモロ (3)
トレモロ

「鏡のとなりにランドリーシュートがある。脱いだ服はその中に入れろ」

 ああ、そういえば引き戸になってる。中は暗くて見えないけど下の方まで続いてるらしい。

「明日の朝には洗濯されて戻ってくるから安心しろ」
「えっ、でも、いいですよっ。俺、自分で洗います」
「…」

 ああ、怒らせたかも。せっかくセフィロスさんが気を利かせてくれたのに。俺の馬鹿馬鹿!

「じゃ…じゃあ遠慮無く…」

 消え入りそうな声で言ってみた。
 聞いてるのか聞いてないのかわからないが、ドアごしに人の気配は無かった。
 とりあえず脱ぎ捨てた服を全てランドリーシュートにほうりこむ。
 俺等の寮では洗濯は当番制になってるけど、こっちでは違うらしい。
 そうだよな、ソルジャー足るもの洗濯してる時間があれば己の腕を磨かなくては!
 鏡に映った華奢な体を見て、ため息を吐く。
 もっと筋肉付けなきゃ。体も鍛えなきゃな。
 同い年の兵士に比べても俺ってちっこいもんな。
 身長も低いし、せめて160cmは欲しい。
 まぁ、背なんか伸びるから良いけどね。
 女のように細い手首、ウエストなんかはSSサイズでないとぶかぶかだ。
 ちょっと憂鬱になりながら、バスのドアを開ける。
 そこに広がってたのは一般兵用の共同浴場と同じくらいの風呂場。

「うっひゃー」

 また話の種が一つ増えたな、と思いながら、俺はまずシャワーで全身洗う事にした。
 おおっ、金縁だよ! メッキかな? 本物かな? なんかスイートルームみたい。入った事無いけど。
 それよりどうしよう、この状況。風呂入ったまでは良いけど、俺、これからどうなるんだ?
 明日確実に罰当番だよ。門限破りまくりだし。だいたい今何時なんだろう。
 考え事をしていたら頭を三回、身体を五回も洗ってしまった。
 ふー。
 湯船に浸かる。
 一体どういう状況なんだ今。
 えーっと、森の中の洞窟に凄い大きなマテリアがあるらしいってザックスが言い出して、嫌々探しに行ったんだよな。点呼までに戻れば大丈夫だからって。
 それから、マテリアだと思って触ったのがモンスターで、逃げる途中でザックスとはぐれて、セフィロスさんに助けられて…、かっこよかったなぁ、セフィロスさん。一撃で倒しちゃうんだもんな。
 正宗も初めて見たよ。仕事中以外にもずっと持ってるのかなぁ。俺もあんなふうに強くなりたいな。
 やっぱ今度の試験受けてみようかなぁ。
 あ、でもあれ15以上だったよな、確か。ちぇー。俺も後2か月で15なのにさ。
 早くソルジャーになりたいな。こんなに弱くちゃ無理か。
 あれ? 何考えてたんだっけ?
 えーっと、それからセフィロスさんと一緒に帰ってきて…。
 あ、点呼やばいなぁ 代返しててくれるかなぁ。
 まずいぞ。
 のぼせたかも…。
 視界が湯気で真っ白だよ。きもちいいなぁ……。

 ぶくぶくぶく・・・・・・



 気がつくと視界が横向きだった。
 違う、俺が寝てるんだ。寝てる? 何処で?

「セフィロスさんの部屋だぁ…」

 体に力が入らない。どうして俺、寝てるんだろ?
 気持ちいいなぁ、ふかふかだよこのベット。俺のかたいのとは大違い。
 あ、涎たれてる。口元に袖口の辺りを持っていって、はたと気付いた。
 あれ、俺、服着てるよ。
 何かタオルっぽい素材だな。長いし。バスローブかな。
 って誰がきせたんだ? 俺の服はさっき洗濯に出したはずで…。
 てことはこの服…。

「セフィロスサンのだぁ」

 喜んでる場合じゃない! 何たる不手際! 好感度大幅ダウンだよー。
 汗臭い上に鬱陶しくって、しかも人の部屋の風呂でのぼせて溺れるやつなんて最悪だぁ。
 ああ、縁が無かったね…しくしく。
 いいや、どうせ一生に一度来れるか来れないかだし。いいもんね。このままセフィロスさんと一緒に寝ちゃうもんね。

「え…? いっしょ…」

 だぁーっ、おれのばか! スケベ! 何考えてるんだよぉ…。
 そんな恐れ多くもあのセフィロスさんと一緒に寝る、寝る…寝るなんて…。

「寝たいかも」

 だめだ、俺イカレテルよ。
 でもでも、この状態真剣やばい。これはさすがに皆には言えない。
 なんせセフィロスさんってば俺等の中ではもう神様ってくらいの人だし。
 男ばっかのせいかそういう意味で好きなやつとかもいっぱい居るしさ。
 俺ばれたら殺される…。
 ああっ、でも殺されてもいい…自慢したい!
BACK