トレモロ (2)
トレモロ

「ほほう」

 あー、完璧嫌われたかもっ。これじゃ俺ホモじゃん!
 違うんだ、違うんだよー、そういう意味じゃなくって。
 少し呆れた顔で(呆れてるセフィロスさんもかっこいい!)セフィロスはくるりと背を向けると、すーっと一点を指差して、

「この道を降りれば寮に近い」

 えっ? てことは俺、独りで帰るの? セフィロスさんは帰らないのかなぁ? まさか野宿? 英雄は野宿も平気なのかな?
 そんなわけないか。
 でも、もうちょっと一緒にいたいなぁ。
 あ、でも俺告白しちゃってるよ、完璧そのテのやつだと思われてるかも、違うんだけどなぁ。誤解を解かなきゃぁ…。

「どうした?」

 セフィロスさんの声。低くて素敵だ。もっと聴きたい。
 俺って…。
 もじもじしてる俺の手をセフィロスさんが引っ張る。もっとごつごつした手かと思ったら案外綺麗なんだ。指もすーっと長くって形が良い。傷だらけの俺の手とは大違いだ。
 そのまま無言でずんずんと坂を下っていく。丁度神羅の寮の入り口の正面に通じる道。
 っていうか俺今セフィロスさんに触ってるんだ。幸せぇ。我が生涯に悔いなしってかんじだよ。
 寮の入り口の門を突っ切って左の建物に向かう。
 って、あれ?
 こっちはソルジャー用の寮じゃん。俺一般兵だから右側の建物なんだけど。
 勘違いしてるのかなぁ。ソルジャーだと思われてる?もしかして。

「あ、あの」

 無視。
 かっこいいけどやぁぁぁっぱり冷たい人だなぁという印象。
 でも其処がいいんだよなぁ。
 クールだ。かっくいい!
 俺、やっぱ好きだ。この人。
 廊下にいるソルジャーたちが不審な目で俺の事見てる。
 あたりまえか。何処から見ても俺「部外者」ってかんじだもん。
 やっべー、しかもセフィロスと一緒だよ。
 皆、ほとんど、この人に憧れて入隊してるんだもんな、そんな人が俺なんか連れてるんだから、そりゃ反感買うよ。

「ど どうも…」

 いつも俺等に実技の訓練を付けてくれる教官もいる。たしか2ndのはずだ。
 軽く会釈して通り過ぎる。もはや付いてきてるのではなく引っ張られてるかんじだ。

「おまえ、何か悪い事したのか?」
「いえ…、その…」

 会話もままならない内にエレベーターに乗り込む。
 セフィロスさんが押したのは17階。最上階だ。
 さすがセフィロスさん。素敵だ…。
 と、訳の解らない感動してる場合じゃないぞ。
 そもそもなんで俺はセフィロスさんと一緒にセフィロスさんの部屋へ行くんだ?
 私室だよ、プライベートルームだよ、いいのか、俺なんかがお邪魔しても。
 エレベーターが動いてる間も無言。碧の瞳は何を考えてるのかわからない。
 ポーン、と音がしてドアが開く。
 そこにはドアなど無く、だだっ広い空間があるだけだった。
 エレベーターを降りると正面は窓。広がるのはミッドガルの夜景。
 ふらふらとそちらに歩こうとした瞬間。
 ゴチン。
 派手な音をたてて俺は額をしこたまぶつけた。
 なんだこれ、入れないぞ!?

「シールドがはってあるんだ。解除しないと部屋には入れん」

 良く見ると丁度セフィロスさんの右側に四角い機械がある。真ん中に溝があって二つあるボタンは赤色に点滅している。
 セフィロスさんがコートのうちポケットからカードを出し、二枚連なったカードのうち一枚を機械の溝の部分に滑らす。
 ポーンと、エレベーターと同じ音がして目にみえない壁が無くなった気配がした。

「入れ」
「お、おじゃましまーす」

 って、言っても誰もいないわな。俺ってば馬鹿っぽい。
 中に入ると先ほど見えた夜景はホログラムだった事に気がついた。
 正面がまるまる窓にはなっているが、其処からは俺達の通ってきた森しか見えない。
 景色といえば夜空の星だけ。部屋の中をきょろきょろと見回しても、冷蔵庫とオーディオ、ベット…、と必要なもの以外は全くない。
 エロ本だらけのザックスの部屋とは大違いだな。
 ちなみに俺の部屋も殺風景だけどセフィロスさんのポスターはちゃんと貼ってあるんだ。
 おはようとおやすみも言うんだぜ!

「バスルームは左の扉だ。タオルは中にある」

 ええ! いきなりお風呂!?
 ちょっと待って、俺、心の準備が…。

「あ…あの」
「汗臭い」

 冷たく言われた一言。そうだよな。変な考え起こした俺がばかだった。
 森の中一時間近くも走ってたら、そりゃ、汗臭くもなるわ。

「いただきますぅ」

 左のドアを開け、隠れるようにすばやくドアを閉める。
 試しに自分の上着に鼻を近づけてみる。
 うっ…。
 俺、こんな匂いのままセフィロスさんの後ろ歩いてたのか。
 そりゃ風呂にも入れたくなるわ。まったく。
 ちょっと落ち込みながら服を一枚ずつ脱いでたたむ。
 丁度上のシャツを脱いだところでノックする音がした。
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