深海 (7)
深海

「何を言っている。わがままに付き合うんじゃなくて、俺がそうしたいからそうするんだ。クラウドのわがままではなくて、俺のわがままだろう?」
「…俺…、困る……」
「どうして? 何が困るんだ?」

 俺がわがままを言うたびにセフィロスはそれを飲み込んでしまって、自分のわがままだと摩り替えてしまう。俺がわがままだと思っていることがなくなってしまっては、どこまでがわがままなのか分からなくなってしまう。

「…もっとわがままになっちゃうかも…」
「俺はクラウドのは自己中心的とかわがままだとは思ったりしてないからな」
「…わがままだと思うけど…」
「お前、気づいてるか?」

 セフィロスが口元を少し上げて、にやりと笑った。この笑いをする時は、セフィロスが嬉しい時か、俺をわざといじめようとしている時だ。

「…何を…?」
「クラウドがわがままだと思っていることって、大概俺が絡んでるんだぞ。今回だって、俺を側に置いておこうと思っているわけだし、つまり、俺に対する独占欲の表れ…」
「セフィロス!」

 俺は一気に全身が赤くなるのが分かった。すごい勢いで血液が体中に回っていく。
 そこまではっきり言われると、どう反応していいのかわからない。確かに俺はセフィロスが側にいないと不安でしょうがない。手の届く所にいて欲しいのは事実だ。

「そこまで思われてるってことだから、それをわがままとは思わない。俺はな。むしろうれしくてしょうがない」
「セフィロス……」

 セフィロスは大きく伸びをしてから、俺に笑いかけた。

「回収終了。不発弾だったがな。さあ、帰るぞ」

 砂浜に座り込んだままの俺にセフィロスは手を差し出してきた。その手につかまって立ち上がる。
 手をつないだまま、砂浜をゆっくり歩く。
 太陽の代わりに月が海を照らし始めた。
 ふと足を止めて、月を見上げる。

「どうした?」
「太陽と月みたいに一生出会えないっていう関係じゃなくてよかったな、って思った」
「そう、だな。でも、きっと出会ってないということはないだろう」

 セフィロスが言うと、絶対そうだ、って思えるぐらい、心強い。俺はそれだけセフィロスを信頼しているのか、依存しているのかのどちらかだろう。いや、どちらともだろうか。
 歩き出そうとするセフィロスを、引っ張って足止めした。

「何だ?」
「俺、本当にセフィロスが好きなんだ」
「それはそれは」
「本当だよ」
「俺はそれはよくわかってる。だが、こうやって何度も言ってくれるのはうれしい。だからクラウドが気の済むまでいくらでも言ってくれ」

 セフィロスはうれしそうな顔をして、こう言った。
 俺ばっかり言わされるのはちょっとしゃくだな、と思った俺は、反対に聞き返してみた。

「じゃあ、俺のことは?」
「もちろん…」

 いきなり腕を引っ張られて、前によろける。よろけた俺を抱きとめたセフィロスは、俺に噛み付くようにキスしてきた。
 あっさりと舌を絡め取られて、俺は体の力が抜けていきそうだった。
 セフィロスは俺から離れると、さっさとまた歩き始めた。その後ろを慌てて追いかける。

「俺の質問に答えてないよ…」
「さっきのが答え」
「言葉で言ってよ」
「…好きだ…」

 セフィロスに真剣に見つめられて、こんな言葉を言われてしまった。と言っても俺が言わせたようなもんなんだけど…。
 このまま死んでもいいかも……。
 いやいや、だめだ、だめだ。ここでこの幸せを捨てられない。

「俺って幸せだよ」


END
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