Breath (2)
Breath

 部屋の中ではクラウドが頭を抱え床に倒れている。
 蒼い瞳は見開かれ両目から大粒の涙が零れている。

「おそくなった。すまない」

 膝を傅き、クラウドの肩に触れる。
 びくり、と体が一瞬震え瞳が男を捉える。
 すると嘘のように表情から恐怖が消え、とろけるような微笑みで 男の首に手を回す。
 数日前からの事だった。毎日真夜中過ぎになると発作的にセフィロスを求めるようになった。きっかけは何か解らない。
 おそらくクラウドが毎日見ている夢の変化だろうと思われる。
 点滴のみで栄養を摂っているせいだろう。ここ数日特に衰弱が激しい。
 ジェノバ細胞の影響で歳を取らないクラウドではあったが、栄養失調だけではない窶れ方だ。
 理由は分かっている。
 セフィロスの存在だけじゃない、クラウドが求めるのは。
 優しい声と包み込む腕と…抱いてくれる体。

「セフィ…セフィロス」

 愛しいものの名を呼びながら、震える指先でボタンをひとつづつ外す。
 床に横たわったままなされるがままに身体を任せる。

「俺の事好き?」

 性急にシャツをはだけさせ男の胸に指を這わせる。
 広い胸に頭を預け、上目遣いで何度も問う。

「俺の事好き?」
「…愛してるよクラウド」

 できるだけ、記憶のとおりに、似せた口調で言う。
 ここにいるのがセフィロスじゃないと解ればクラウドは本当に夢からも現実からも一番遠い世界に行ってしまいそうで…。
 首に手を回されたまま体勢を逆転させる。
 クラウドに少しでも負担がかからないように。
 細い腰に手を回し、髪を撫でながら、ゆっくりと傷つけないように組み敷く。

「セフィロス…」

 むさぼるような口付けの中、つかの間の…。


◇◆◇


   時間は悪戯にすべてを洗い流す 夢から覚めても廻り続ける。
  純潔は濁り懺悔は繰り返され 咲かずに散り行く 蕾の中へ。



 愛しいものはすべて水の奥底。眠っているような穏やかな顔。
 そこだけ時が止まってしまったような。
 買って来た花を一輪づつ水の中に投げ入れる。華は亡骸を隠すように水面に浮かび、廻る。
 廻りながら骸の沈む湖底へと沈んでゆく。
 本来なら凍っているはずの湖。半径五メートルほどを溶かして、昨日セフィロスをここに沈めた。
 動かなくなったからだは氷柱で閉ざされた洞窟の中ひっそりと眠っていたもの。

「あんなところじゃ寂しすぎるよ」

 大切な人は俺の前から消えてゆく。
 もう二度とあなた以上に大切な人なんて現われない。
 悲しくて涙が出ないほど。



  廻る廻る時間の中 洗い流される。
  夢から覚めても 廻り続ける。
  哀しくて 哀しくて。
  切なくて切なくて。
  寂しくて寂しくて。
  逢いたくて 今も…。
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