お年玉 (6)
お年玉

「約束って何だ?」

 セフィロスは俺の手を掴んだかと思うと、身体を起こして、俺の上に乗っかってきた

「…えーっとさ、子供達を預かってもらうのに、お返しがないのはまずいから……」
「だから、その約束の内容を聞いている」
「……貸してくれって言われた……」

 俺はセフィロスから目を反らして、自分の肩先に視線を落とした。俺を押さえつけているセフィロスの力が強くなる。

「…まさか、お前……、お前自身を……」

 心なしか動揺しているようなセフィロスの問いに答えず、俺は唇をかみ締めて、黙っていた。

「クラウド、答えろ!」
「…セフィロスを貸してくれって!」
「え?」

 恐る恐るセフィロスに視線を移すと、セフィロスは少し目を見開いて、呆然としていた。

「…俺を貸せって…?」
「…預かってやるから、セフィロスを少しの間貸せって言われた…」
「あいつは何を考えてるんだ?」
「……何かね、三日三晩ぐらい、飲んだり、遊んだりしたいみたいだよ」
「…遊ぶ…?」
「わかってるくせに。遊ぶといったら、ねぇ?」

 俺はセフィロスの胸を指先で弄った。セフィロスは弄っていた俺の手を掴んでベッドに押さえつけてきた。

「あいつ、そんなところに行って、大丈夫なのか?」
「エアリスならお見通しだから、逆に気にしなくていいのかもな」
「クラウドは?」

 セフィロスは俺の首筋に舌を這わせながら、尋ねてきた。
 どの答えを期待しているのかは、俺にはわからなかった。
 大丈夫だと言っても、大丈夫じゃないと言っても、セフィロスは自分の都合のいいように解釈して、俺を言いくるめて、きっと遊びにいくに違いないのだ。
 だから、俺はあえて強がりを言うことにした。

「大丈夫だよ、俺のことは気にしなくても」
「…よく、そういう嘘がつけるな、お前は」
「…セフィロス…」
「もし、それを真に受けて、俺が遊んできたとして、本当に大丈夫だと言い切れるのか? この俺の手が他の女を抱いていたとして、お前は納得して飲み込むことができるのか? エアリスだって、きっと大丈夫じゃないんだぞ」

 俺が思うよりセフィロスは数倍上手で、俺の気持ちなんて全部わかっちゃってて、その上で俺の気持ちを聞いてくる。

「それから、約束の内容を聞いた時に、お前、目を反らしただろ? 俺が遊びに行くのを嫌がってた証拠だな?」

 セフィロスの口元の笑いをみて、恥ずかしくなる。タネがばればれの手品を見せてしまったような気分だ。

「……全部わかってるなら、聞くことないだろ? そうだよ、セフィロスの言うとおりだよ。大丈夫なんかじゃないよ。でもさ、これは、約束なんだ。俺はこのお正月でセフィロスと二人きりだっていう幸せを味わわせてもらった。だからね、貴方を貸すという約束は守るよ、俺」
「…では、クラウドに誓っておくとしようか…」
「何を?」
「俺のこの腕はこの先、クラウド以外に誰も抱くことはない、と」

 真剣に見つめられて、こんなこと言われると、胸が締め付けられる。セフィロスは俺だけを思ってくれてるんだと、改めて実感する。
 でも、そうは言うものの、ザックスの要求は、飲んで遊ぶことだ。

「…ええっ! ちょ、ちょっと、待って。遊びに行くんだろ?」
「だから、ザックスをなだめて、遊びに行かなければ済む話」
「…セフィ……」
「今度から、自分の気持ちは正直に言え。クラウドの気持ちを聞いても俺が遊びに行くと思ったのか?」
「…俺はできれば、セフィロスのしたいようにさせてあげたい、と思ってるだけ」
「それは嬉しい申し出だが、今回は嫌だと言ってくれたほうがよかったな」

 セフィロスの笑顔を見て、涙が溢れてくる。

「……俺以外の人を抱くようなところに……行かないで……」
「承知した。安心していい…」

 セフィロスの落としてきたキスを受け止めつつ、俺はセフィロスのやさしさに感謝していた。





「ただいまー」

 子供達、二人の声が玄関ホールに響く。
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