お年玉 (1)
お年玉

 大晦日。
 夕食も済んで、年越し蕎麦を食べるまでにはまだ時間があった。
 ソファーでくつろいでいるセフィロスの隣に座る。
 子供達は、部屋の隅っこの方で、社長にもらった『新春神羅すごろく』に夢中になっていたので、俺はセフィロスの肩に頭を預けた。

「どうかしたのか?」

 肩に手が回されて、抱き寄せられる。

「お正月三が日はどうする?」

 これは毎年聞いていることで、セフィロスから返ってくる答えはここ数年、変わったことがない。

『元日は家でゆっくりして、二日は初詣。三日は新年の挨拶まわり』

 これが、セフィロスの返答である。
 今年もそういう返答だろうと思いつつ、聞いてみたのだった。
 セフィロスは俺の肩に回していた腕に力をこめると、俺を両腕で抱きしめてきた。

「セフィロス…?」
「ずっと、クラウドを抱いていたい……」

 耳元で囁かれて、息が止まりそうになる。

「…なんてな」

 セフィロスはそう言うと、俺を解放してソファーから立ち上がった。

「セ、セフィ…!」
「言ってみただけだ。気にしなくていい」

 俺に軽く笑顔を見せて、セフィロスは子供達の側へ寄っていく。年越し蕎麦の前に風呂に入るぞと言って、子供達二人を連れてリビングから出て行った。
 その後姿がとても悲しそうで、俺は深くため息をついた。
 いいお父さんであるセフィロス。決していいお父さんを演じているわけではなくて、『いいお父さん』なのだ。子供達のお願い事は聞いてやるし、子供達と一緒に楽しんで遊んでいる。優先順位で言えば、子供達はセフィロスにとって一位だと言ってもいいのだろう。
 だけど、その優先順位を飛び越えた別格のところに、位置しているものがセフィロスの中にはあって、それを押さえ込んでいる日々が増えているのは事実だと思う。
 それが今一瞬、押さえ込めなくなったのかもしれない。
 セフィロスの中の別格。
 きっと、それは……。

 『俺』

 俺は携帯電話を開いて、電話をかけた。

「…あ、もしもし、ザックス? 急なお願いがあるんだ……」





 元旦。
 この日はセフィロスがいつも言うとおり、ゆったりと過ごした。朝からお酒を飲みっぱなしのセフィロスは、昼から夕方まで子供達にせがまれて、すごろくをやっていた。酔っ払っていないようだったのに、サイコロを振って、自分の思ったとおりの目を出せないセフィロスは最終的に、ビリになってしまったらしい。
 昼間にはしゃぎすぎていた子供達は夕食が済むとさっさと眠ってしまった。
 夕食が済んでもセフィロスはお酒を飲んでいて、一升瓶が面白いように空になっていく。
 気づいたらセフィロスはソファーの上で眠ってしまっていて、声をかけても起きなかった。こんなことはめったにないので、俺としては少しうれしかった。セフィロスの寝顔を見るチャンスだ。





 二日。
 朝、リビングに行くと、セフィロスはぼんやりとソファーに座っていた。
 いつの間に眠ったのか聞かれたので、大体の時間を答えた。首をかしげているので、きっとおぼろげな記憶もないのだろう。
 部屋の隅では子供達がすでにすごろくに興じている。そんなにこのすごろくは面白いのだろうか。
 子供達に声をかけようとしたら、玄関のチャイムが鳴った。
 慌てて玄関まで出て行って、お客を中に招き入れる。

「おはようさん。迎えに来たぜ。用意は出来てるか?」
「ごめん、ちょっと待ってて、ザックス。子供達、呼んでくるから」
「おう」

 リビングに戻って、子供達にコートを着せる。

「今日はザックスお兄ちゃんと一緒に初詣に行っておいで。今晩はザックスお兄ちゃんのところへお泊りだから。初めてのところじゃないから、大丈夫だな?」
「うん、大丈夫!」

 カインとクレフが声を合わせて手を上げる。

「よし、じゃあ、遊んでもらっておいで」

 二人の手を引いて、リビングから出ようとしたら、セフィロスに腕を掴まれた。
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