必需品 (1)
必需品

 俺はスーパーの浴室用品売り場の前で、立ち尽くしていた。
(まさか、売っていないとは思ってもみなかった……)
 そろそろ古くなってきたので、新しいものを買おうと思っていたのに、売っていないということは古いまま使い続けるしかないということか。
 そもそも、この年になってまだ使っているということは、おかしいことらしいのだが、俺はあれがないと、どうにも困ってしまう。

「セフィロスー、何悩んでるの?」

 後ろから声をかけられて、肩を揺らしてしまった。

「びっくりしすぎだよ、セフィロスは」

 考え事している時に急に後ろから呼ばれたら、誰だって驚くと思うがな、という言葉を直接クラウドには言わなかった。

「どうやら、ここには売ってないらしい」
「ああ、あれ。このところ見ないと思うけどなぁ」
「そうか。困ったな…」
「多分、これがなくて困ってるって、成人した人だったら、セフィロスぐらいだよねぇ」

 クラウドは何だか嫌な笑いを浮かべたまま、こちらを見ている。

「…そうかもしれんな。でも、需要がある以上は供給するべきだろう」
「コストの問題じゃないの? セフィロス一人のために製造するってなかなか大変だと…、あ、そうか、そうか」

 クラウドは何かひらめいたように手を叩いている。クラウドは勝手に思いついて、勝手に喜んでいるが、俺には何の事だかさっぱりわからない。

「頼んじゃえばいいんだよねぇ。特注。セフィロスだったらそれぐらい簡単だろうし、やってもらえるんじゃない?」
「…そうだな……」

 多分、俺が言えば早急に作ってくれるだろうあてはある。だが、クラウドがことあるごとに、俺が使ってるとおかしいというものだから、わざわざ特注するのも気が乗らない。

「気が乗らない?」

 クラウドはわかってたかのように、俺に尋ねてきた。

「俺が気が乗らないのわかってて、言ってるんだろう?」
「実はね」

 クラウドはいたずらを仕掛けたような子供みたいに笑った。

「でも、もう一ついい手があるんだよ」

 だったら、それを先に言ってくれてもいいだろう、と思う。もったいぶっているのだろうか。

「何だ、それは」
「セフィロスがそれを使わなくてもいいように、特訓する!」

 俺はがっくりと肩を落とした。
 それができていれば、今頃苦労はしていないと思うのだ。

「まあ、いきなり一人では無理だろうから、最初は俺が手伝ってあげる」

 は?
 手伝うって?

「ど、どういう意味だ?」
「どういう意味も何も、そのまま」
「手伝うってつまりは……」
「そうそう、そういうこと。じゃ、帰ろう。アイスクリームが溶けちゃうよ」

 クラウドは軽く話を終わらせたが、こっちは、はあ、そうですか…と聞き流せるような内容ではなかった。
 まさか、こんな展開になろうとは思ってもみなかったぞ。



「後から行くから、先に入ってて」
「…あ、ああ…」

 結局、話の流れ上、特訓することになった。
 シャンプーや、お湯が目にしみるのが嫌だったという理由で使っていたシャンプーハットを使わずに頭を洗えるようになろうという特訓だ。
 普通は、成人男性などは使わないんだそうだ。だから、クラウドは俺が使っているのがおかしいと言っていたのだ。
 まあ、使わなくなるように越した事はないが、そうなるためにクラウドは手伝うと言う。手伝うってどういうことだ。
 手伝う内容はこの際どうでもいい(いや、よくないか)。つまりは一緒に風呂に入るということになるのだ。
 今まで一緒に風呂に入った事がないわけではないし、裸だってもう見慣れているわけで……。
 いや、見慣れてない、見慣れてない。
 俺は一人で思い切り頭を振った。傍から見てたら、きっと一人芝居しているおかしな人だと思われることだろう。
 ともかく、クラウドは一緒に風呂に入ると暗に言っていることになる。
 どうにも落ち着かない……。
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