必需品 (2)
必需品

 湯船に頭まで使っていると、浴室の扉が開いた。

「セフィロス! 何やってんの?」
「い、いや、考え事…」

 湯船から顔を出して答えると、クラウドは苦笑した。

「…死んじゃわないようにね…」

 クラウドは一糸まとわぬ姿で(風呂に入るのだから当たり前だが)、俺の方に近寄ってきた。

「俺、先に全部済ませちゃうね」

 クラウドは少し笑うと、頭を洗い始めた。
 クラウドは頭にシャンプーをつけて、泡立てている。シャンプーの甘い香りが俺のところまで漂ってくる。湯船に浸かったままぼんやりクラウドを眺めていると、クラウドは俺の視線を感じたのか、俺の方に視線をよこした。

「何か気になる?」
「いや、別に…」
「ふーん。それならいいけど」

 クラウドは頭からシャワーを浴びて、シャンプーを洗い流している。こんなことしたらシャンプーやらお湯やらが目にしみて大変なことになってしまう。
 しかし、クラウドは平気なようで、続いて再度シャンプーをつけて泡立てている。
 その後、体を洗ったり、リンスを流したりして、クラウドは自分のことを全部済ませてしまった。
 その間にクラウドは頭からシャワーを何度となく浴びていた。慣れているのか、全然気にならない様子だったが、お湯は目に入っていなかったのだろうか。

「じゃ、セフィロスの髪の毛、洗ってあげるね」
「え?」

 にっこり笑ってこちらを見ているクラウドの言葉を一回では理解できなかった。

「だって、シャンプーハットがないと、一人で洗えないんだろ? いきなり一人で洗うのは無理だろうから、初めは俺が洗ってあげる」

 …そう言うことだったのか。だから一緒に入ると言い出したのか。
 でも、その言葉に「じゃあ、お願いします」とも言い難いのだが…。

「ほらほら、こっちに来て」

 言われるがまま、湯船の外に出て、風呂椅子に座る。

「じゃ、うつむいて。絶対目を開けたらダメだよ」

 クラウドは俺の前にしゃがんで、髪の毛をとかしはじめた。

「セフィロスの髪の毛ってさらさらだよねぇ。触ってて気持ちいいよねぇ」
「そうか?」
「そうだよ。じゃ、お湯かけるからねー」

 シャワーのお湯が頭からかけられる。目にしみないようにしっかりと目を閉じる。
 濡らされた髪の毛にシャンプーがつけられたのか、香りが漂ってくる。

「とりあえず、一回目」

と言って、クラウドはシャンプーを洗い流して、再度シャンプーをつけてきた。今度は念入りに地肌をマッサージするように、手を動かしている。

「かゆいところはございませんかー」
「…いや…」
「何か、美容師さんみたいでおもしろい」

 クラウドは何だか一人楽しそうである。俺はシャンプーやお湯がしみないように必死で耐えているというのに。

「じゃあ、流すねー」

 気合を入れて目を閉じる。シャワーの音が耳の側で響いていて、いつ目にしみるかと思ってさらに緊張してしまう。

「セフィロスー、そんなに力入れてたら、肩凝るよー」
「…そうは言われても…」
「ま、しょうがないか。気持ち悪い所とかない? なかったらリンスするね」

 俺は無言でうなずいた。クラウドは俺の髪の毛にリンスを丁寧につけている。髪の毛が長いので大変な作業であるに違いない。

「…すまん、クラウド…」

 申し訳ない気分になって、クラウドに謝った。

「どうして…?」
「いや、普通だったらこんな作業、お前にさせることもないはずなんだが…」
「気にしなくていいよ」
「しかし…」
「俺、今、幸せだから」
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