幸福論 (3)
幸福論

 扉をゆっくり開く音がした。

「クラウド……」

 セフィロスはベッドに座って、俺の頭を撫でてきた。
 俺は何も言えなかった。ベッドに突っ伏したまま、必死に涙をぬぐった。

「どうして俺がお前に飽きると思ったんだ?」

 セフィロスは問いかけてきたが、どうしてかなんてわからない。俺がふとそう思っただけだ。

「……もし、今、飽きてないとしても……」

 俺はゆっくり身体を起こして、ベッドの上に座った。セフィロスは俺の顔を見つめている。瞳には心配の色が浮かんでいた。

「……今日、抱き合ったら、明日はもう飽きてるかもしれない……だろ……?」
「だから、どうしてそう思うんだ……?」
「……抱き合えば抱き合うほど、俺の声を聞くわけだし、感じるわけだから……。もう、俺の声だって聞き飽きてるだろうし、俺の中にだって飽きるほど入ってきたわけだから……」
「バカらしい!」

 セフィロスは俺をベッドに押し倒すと、唇を塞いできた。
 歯を食いしばる間もなく、セフィロスは舌を差し入れてきて、俺の口の中を嬲り始める。いつもよりもゆっくりと執拗に責められて、俺はくぐもった声を漏らすしかできない。
 抵抗しなくちゃ、と思うのに思うように身体は動かない。
 セフィロスの腕を掴んで逃げようとするが、俺の肩はしっかりとベッドに沈められていて、不可能だった。
 解放された俺の口からは自分でも驚くほどの甘い吐息が漏れて、セフィロスが軽く笑ったのが聞こえた。
 この口付けも俺には最後なんだとしか思えない。

「クラウド! どうして泣く?」
「……セフィ……?」
「俺は絶対飽きないと言い切れる。それでも今のお前は納得しないだろう? 今のお前は俺が抱けば抱くほど、飽きていくと思ってる。俺はお前に飽きることなどないし、お前を嫌いになることなどない。この手もこの身体もこの心もお前を欲してやまないって言うのに、それはどうすればお前に伝わるんだ?」

 俺はそっとセフィロスの頬に触れた。今までに見たことのないぐらい辛い顔をセフィロスはしていた。

「……不安だった……。怖かった……。セフィロスが俺のことを好きじゃなくなる日が来るのが……。触れ合えば触れ合うだけ、その日が早まる気がして……」
「それで、触るな、と?」
「そう……。俺を見なくなる日が来て欲しくなかった……。この目が俺を見なくなる日が、この唇が俺に触れなくなる日が、この指先が俺を狂わせなくなる日が来て欲しくなかったんだ……」
「全く、一生来ない日のことを考えてどうする」

 セフィロスは逆に俺の頬に触れてきた。指先が涙を拭ってくれている。

「ま、触るなと言った理由が俺に触れられたくないっていう理由じゃなかったのがわかったからよしとしよう。後は、欲してやまないってことを伝えるだけか?」

 そう言うと、セフィロスはいきなり俺の身体を抱え起こした。俺が声をかけるよりも早く、セフィロスはセーターを捲り上げて、勢いで脱がされてしまった。

「セフィ……!」

 という俺の抗議の声は無視されて、起こされた身体を倒されたかと思うと、セフィロスいとも簡単に俺のズボンのジッパーとボタンを外してしまった。そこからも驚くほど早い。ズボンを下着ごと脱がされて、ぽいっと床に投げられる。
 俺は一糸まとわぬ姿にあっという間にされてしまったのである。

「……セフィ……、俺……!」
「お前の言い分は聞かない。勝手に飽きると思い込まれてるんでな。飽きないっていうことの証明もしないとな」

 セフィロスは口元だけでにやっと笑った。
 それは見慣れた悪魔のような笑いだけど、背筋がぞくっとするのと同時に身体の奥が過敏に反応する。

「ふ…っ、ああっ!」

 銀髪の悪魔はおもむろに俺の乳首に舌を這わせて、舌先で弄ってくる。転がされたりなめあげられたりして、俺はすぐに高い声を上げてしまう。

「そう、その声がいい……」
「……だから、聞き…飽きて……るんじゃ……」
「飽きてないって言ってる。飽きてないんだから、ずっと聞かせてくれるよな?」

 セフィロスはそう言うと、空いてる片方の乳首を指先で弾いてきた。
 ただでさえ弱い胸を両方責められては、声を上げるのをとめられるわけがない。
 セフィロスは満足そうに喉の奥で笑うと、さらに激しく胸を弄ってきた。両方の胸を舌と指先で交互に責められる。
 それはとても長い時間に思われた。
 声を上げっぱなしで、頭を振るしかできない。

「いやぁっ、もう……、やめ……て……」

 音を立てて、セフィロスは唇を離してくれたが、その音が俺を恥ずかしくする。

「……もっとその声を聞かせてもらおう……」
「え?」

 と声を出そうとしたが、俺自身を襲った感覚に声が詰まる。
 半ば頭を持ち上げていたソレにセフィロスが触れたのだった。

「もう溢れてるな……」
「……そういうこと……言わないで……」
「事実だ。大分感じてるみたいだな……」

 当たり前だ! 俺が弱いところばっかり責めてきてたくせに。どれだけ声を上げてたと思ってるんだよ!
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