2005 クリスマス (2)
2005 クリスマス

 子供達が寝静まった後、俺はサンタの衣装に着替えると、こっそり子供達の部屋に入っていった。サンタの衣装に着替えているのは、万が一目が覚めても、サンタだと信じてくれるかもしれない、という淡い期待である。一人は信じてくれないのはわかっているから、淡い期待なのである。
 二人の枕元には大きな靴下が置かれていた。
 クラウドが事前に聞きだしていた二人が欲しがっていたものを、靴下の中に入れて、部屋を後にした。
 幸いにも二人とも目を覚ます事はなく、俺のクリスマスの任務の一つは無事に終了した。
 あと一つの任務はきっと問題なく終わるはず。





「サンタさん、お疲れ様」

 リビングに戻った俺を出迎えたのは、クラウドとローテーブルに用意された酒。

「いや。子供達が喜んでくれたらそれでいい」
「きっと、喜んでくれるよ」
「そうだといいがな」

 クラウドの横に腰を下ろして、グラスに手をかける。クラウドはそのグラスにワインを半分ぐらい注いでくれた。
 葡萄とアルコールの香りが鼻の奥を刺激する。ワインを口に少し含んだところで、クラウドが俺を見つめているのに気づいた。
 俺が首をかしげると、クラウドは嬉しそうに笑った。

「あのね、ちょっと飲みたい」

 俺は口に含んでいたワインを飲み干して、大きくため息をついた。家の中だから別に酔っ払おうが、オヤジ化しようがかまわんが、今日はクリスマスってわかってるのだろうか? めったにない二人で色々楽しむイベントの日なんだぞ。

「少しだけだぞ」

 グラスを差し出すと、クラウドはそうじゃないよ、と苦笑した。

「何のために、セフィロスが飲み干す前に言ったか分かってる?」
「…そういうことはもうちょっとわかりやすく言ってほしいものだな」
「ちょっと鈍いんだよ、セフィロスが」
「…心外だな…」

 ワインをほんの少しだけ口に含んで、クラウドの顎に手をかける。ゆっくり目を閉じたクラウドを少し上に向かせて、唇を重ねる。

「…渋い…」

 クラウドは眉間に皺をよせて、呟いた。

「赤はそういうもの」
「よく飲むねぇ、こんなの」
「この渋さがいいんだ。ワインのよさは当分わかってもらえそうにないな」
「別に知らなくても困らない」

 クラウドは俺の肩に頭を預けてきた。あれだけの量で酔いが回りだしたのだろうか? この弱さはどうしようもないな。

「セフィロス、帽子脱がないの?」
「サンタの役目が終わってないからな」
「子供達に渡したのに?」
「肝心な人に肝心なものを渡してない」
「肝心な人…?」
「そう、肝心な人。俺の一番大事な人」

 クラウドは俺の顔を覗き込んできた。クラウドの目には何か疑惑の色が浮かんでいる。俺は何を疑われているのだろうか。まさかとは思うが大事な人って別の場所にいると思われているのだろうか…。

「クラウド…?」
「大事な人って誰?」
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