もし、君がいないと(3)
もし、君がいないと

「…でもな、セフィロス…」
「ん?」
「俺はどうなったにしても、きっとセフィロスのことを思い続ける。それは断言できる。…だけど、セフィロスは…」

 クラウドの頭を抱えるようにして強く抱きしめ直すと、思い続けてる、とクラウドの耳元でしっかりと言ってやった。
 俺にとってクラウドはなくてはならない存在だ。他の何をなくそうともクラウドがいるならいい。クラウドをなくしてしまうのが一番怖い。もし、いなくなってしまったら、死にもの狂いで探すだろう。クラウドを思い続けるだろう。この手にもう一度抱くまで。

「…ごめん、俺と同じかどうか聞きたかったんだ…」
「謝らなくていい。心配しなくても、俺はクラウドだけを思ってる…」
「…俺に何があっても…、いや、俺やセフィロスに何かあったとしても、セフィロスには、俺を思い続けて欲しい…」
「言われなくても。俺はずっとクラウドのことを思ってる。もちろん、何があっても、だ」
「…ありがとう、わがまま聞いてくれて…」

 クラウドはうー、と唸るような声を上げて、腕を掴んできので、急いでクラウドを寝かせた。酔いが本格的に回ってきたのだろう。

「ほら、もう、何も考えずに寝てしまえ」
「…うー、セフィー…」
「なんだ? 水でも飲むか…」
「いらない…。その代わり、横にいて…」

 クラウドがそろそろと伸ばして来た手をしっかり掴んでやってから、クラウドの隣で横になる。クラウドは眉間に皺を寄せていて、相当に辛いらしい。顔も少し青ざめているようだ。

「クラウド、眠れそうか?」
「…たぶん…、目をつぶってると楽…だし…」

 クラウドは大きく息を吸ったり吐いたりしている。気持ち悪いだろうから仕方ない。無茶をするからだ。

「ゆっくり眠るといい。朝までこうしていてやるから」
「…俺に…気を遣わなくて…いいよ…」
「…クラウドは俺に気を遣いすぎる。黙って寝ろ」

 クラウドを腕の中に閉じ込めるように抱きしめて、背中をさすってやる。クラウドは小さく唸り声を上げつつ、俺の名前を何度も呼んできた。うなされているのか、本当に呼びかけてきているのか判断つきかねてしばらく黙っていたが、名前を呼ぶ声は続いている。

「…ん? どうした…?」

 声をかけてやると、クラウドはごめん、と呟く。

「謝る理由がわからん。とにかく今は眠った方がいい」
「…ごめん…、俺、いつも、上手く言えなくて…」
「いいから、今は眠れ。何も考えなくていい…」

 こくん、と頷いて、クラウドはすっかり静かになった。

「おやすみ、クラウド…」

 小さく耳元で囁いて、クラウドの額にキスを落とした。



 部屋の中に朝の光が差し込んできても、クラウドは身動き一つしない。
 寝たいだけ寝た方がいいと思った俺は、起こさないようにゆっくりと体を起こして、ベッドから降りた。
 クラウドは全く気付いた様子もなく、穏やかに寝息を立てている。
 ほっとして、そのまま寝室から出て行った。階下のリビングへと降り、ソファーの定位置に座って煙草に火をつける。
 そして、昨夜のクラウドの言葉を思い出した。
 なぜ、いなくなることを考えたりするのか。
 自らクラウドの傍を離れたりすることはないと強く思っているし、何があっても離れないと誓っている。心の中で思ってることだから、口にだして伝えたりすることは確かに少ない。
 しかし、クラウドは俺の想いをわかっているような口ぶりもしていた。
 だったら、聞かなくても済んだ話ではないのだろうか。
 やっぱり、わかるものではないのだ、クラウドの気持ちなど。
 そう結論づけて、煙草をもみ消すと、ソファーに横になった。目を閉じて、クラウドのことを思ってみたが、何も思いつかなかった。

「…俺は…、一体、何をしてやればいいんだろう…」

 カタン、と音が聞こえたので、反射的に体を起こした。
BACK