HIGH PRESSURE<曲者だらけの客> [side:C] (2)
HIGH PRESSURE<曲者だらけの客> [side:C]

※1ギル=おおよそ100円換算

「お煙草ですか?」

 視線のあたりからすると、強めの煙草だな。高いメーカーのもの。お金持ちは煙草も高いらしい。

「そう。切らしてしまってな」
「120番ですか?」

 セフィロスさんは一瞬目を見開いて、どうして、と尋ねてきた。

「その付近をご覧になっていたようだったので。その隣ですか?」
「いや、120番でいいんだが…」
「当たりですね、よかった。いくつ必要ですか?」
「2つ、いただこう」

 レジの方に入って、棚から120番の煙草を2箱取ると、バーコードを読んで、金額を伝える。
 カードで、と言われたのでカード決済に切り替える。そうだよね、現金ジャラジャラ出したりはしないか。お買い物もスマートだなぁ。
 袋はいいと言われたので、煙草とレシートを一緒に伸ばされた手に置こうとして、指先が触れてしまった。
 何故だかわからないけど、胸がキュンと痛む。

「ありがとう、クラウド。コルネオさんには気をつけろよ」
「え? 名前?」

 セフィロスさんは煙草を持った手の人差し指を俺に伸ばした。

「その大きな名札。だから、コルネオさんも名前を知ってるんだろう」

 ああ、この名札大きいよなって思ってたんだよなぁ。小さくできないかなぁ。

「名前も知られてるし、目をつけられてるから、遅くまで仕事しないようにな」

 セフィロスさんは軽く手を上げて、店から出て行く。
 あ、そうだ!

「セフィロスさん!」

 俺は慌てて店を出て、セフィロスさんの後を追った。
 足を止めて振り返ったセフィロスさんが夕日に照らされていて、息を呑む。綺麗な人って立ってるだけでも綺麗なんだな。

「…どうかしたのか?」
「…あ、えっと、あの…」
「ん?」

 ああ、こうやって柔らかく笑うこともできる人なんだなぁ。
って、感心してる場合じゃないや。

「あ、先ほどはありがとうございました!」
「ああ、コルネオさんのことか。あのままじゃもっとベタベタ触られていた可能性もあるしな」
「ええっ!」

 全身がぞわぞわして、自分の肩を自分で抱く。ちょっと想像しただけでも、ペットリする。ああ、シフト考えなくちゃ。

「まあ、気をつけることだ。安易に近づかないとか」

 近づこうとしてなくても、近づいてくるんだもん。どうしろと…。
 セフィロスさんはそんな顔をしなくてもいい、と優しく笑う。
 よっぽど俺は困った顔をしていたらしい。

「コルネオさんのことで何か問題があれば、事務所に来るといい。俺の客だから、なんとかしてやる」
「え? でも、それじゃ、またご迷惑が……」

 急に低いエンジン音が響き、俺の言葉はまるっきりかき消されてしまった。その車はコンビニの駐車場に入ってきて、俺たちの側に横付けした。白くてピカピカした高級車だ。

「セフィロスじゃないか!」

 運転席から顔を出して、セフィロスさんの名前を呼んでいるのは、金髪でオールバックの人だった。
 セフィロスさんの方は、明らかに嫌そうな顔をしてから、天を仰いだ。

「こんなところで会うとはな!」

 金髪の人はそう言いながら、車から降りてくる。白いジャケットに白いズボンでズボンは色々付いていてひらひらしている感じ。絶対にカレーうどんを食べちゃいけないお洋服だ。

「…社長、こんなところで油売っててよろしいんですか?」

 セフィロスさんは無表情でそう言った。
 …ああ、そうだ。どこかで見たと思った。

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